1on1の現場から:不平・不満ばかりの部下への対応は?

1on1という言葉がまだ市民権を得ていなかった8年前。1on1導入の必要性を説きながら多くの企業のコンサルティングに携わってきました。
現在、大手企業では当たり前のように1on1が実施され、1on1の研修や、運用の専用システムも世の中にでてくるようになりました。
中小~万単位の大企業まで、多くの企業での1on1導入を支援してきた経験から、実際に現場で1on1を実施する上長、される側のメンバー、導入・定着化を担当する推進者の方たちが感じている疑問・課題について、お答えしたいと思います。
弊社の導入・定着化支援の考え方は、アジャイルHR代表の松丘啓司の1on1における考え方を基本としています。詳細は「1on1マネジメント」をぜひ手に取ってみてください。
Q.1on1で不平・不満ばかりいうメンバーにはどのように対処したらいいのでしょうか?
上長対象の1on1研修を実施すると、「部下が文句や不満ばかりを言ってくるので、どうしたらいいか?」という質問がでてくることがあります。
他人のネガティブな言葉や感情を、ダイレクトに受け止めて、解決を求められることは、仕事の一環とはいえ、人によってはストレスに感じることもあるでしょう。
一人ひとりの話に耳を傾けることは、とても大切なことですが、一方で、メンバーの話を全て聞いて、その1つ1つを解決する必要は全くありません。むしろ、それはあまり意味のないことです。
その理由としては、その人にとっての「不平」や「不満」の原因になっていることは、必ずしも組織にとって課題とは限らないからです。また、場合によっては、本人が「原因」だと考えていることが、本当にその原因とは限らないからです。
例えば、1on1の場でメンバーが、「チームリーダーが仕事の進捗の確認ばかりしてくるので、一緒に仕事をするとストレスがたまる。チームを変えてほしい」という話をしたとします。
あなたは上長として、どんな反応をしますか?
恐らく状況をもう少し詳しく聞いた後に、「こんな風に仕事をしてみてはどうか?」というアドバイスをしたり、「リーダーと自分が一度話をしてみようか?」と提案したり、「リーダーは悪気はなくて、仕事をしっかりやりたいという思いからの行動なのではないか?」とフォローしたりする人が多いのではないでしょうか。
もしくは、すぐにその事実関係を確認して、リーダーとも話をして、行動の改善を指導して、それでも改善しなければチームの変更を検討する・・・というアクションを取ろうとする人も中にはいるかもしれません。
このように、もしメンバーが、上長の皆さんに、仕事や人間関係や職場環境に関する、不満・不平(と上長が感じる話)を話してきた時、「あー、何を聞かされるんだろう」と少し憂鬱な気持ちになる人がほとんどだと思います。
でも、上長の皆さんにとって、「不平・不満」と感じるその話は、実は本人にとっては、自身が気持ちよく働くための重要な悩みであることを理解しましょう。その不平・不満の裏には、「こうしたい」「こうであって欲しい」という、メンバーなりの熱い思いが隠されているのです。
中には解決をすることを望んでいるわけではなく、自分の現状を上司に知ってほしい、聞いてもらえればそれでいい、というメンバーもいます。
そのため、まずはメンバーの思いを一旦受け止めることが必要です。時にはネガティブな発言や、乱暴に感じるような言葉を使うこともあるかもしれません。それでも、そのメンバーの中に溜まっている、複雑な気持ちを一度解放してあげることは必ず必要です。
その上で、少し冷静に話ができるようになったタイミングで、「~さんは、どういう状態で仕事ができたら、好ましいと思う?」と問いかけてあげてください。
不平・不満に対する原因や解決策を聞いてしまうと、他責になりがちで、先ほどの例でいれば、「リーダーの○○さんが原因」「~が嫌だ」「すぐにチームを変えてほしい」というように、自分が今見えている範囲の話にしかならないことが多くあります。
そのため、最終的にどんな状態に「自分」がなっていたいのか?を対話を重ねながら一緒に紐解いていってあげると、その人が不平・不満の裏で願っていた、本当の思いが見えてくることがあります。
メンバーは「リーダーが嫌いだから異動したい」のではなく、自分のペースで仕事をしたい、自分を信頼して任せて欲しい、という思いを強く持っていたのかもしません。もしくは進捗確認がしょっちゅう必要な仕組みや、担当への仕事の振り分け方を変えたいと願っていたのかもしれません。
上長と一緒に冷静に紐解いていくことで、本人も、「自分が本当に求めていたことはこれだったのか」と気づくきっかけにもなります。
本当に求めていることが、本人にも上長にも理解ができたのであれば、それに向かってやるべきことの選択肢も広がり、本人も「他者」をどうにかして解決することだけに意識を向けずに、考えられるようになっているはずです。
「あの人は、不平・不満ばかりだな」と感じるメンバーとの1on1を実施する際は、まずはその気持ちを受け止める。その上で、それは決して不平・不満ではなく、「~であって欲しい」という気持ちの裏返しであることを理解し、一緒に紐解いていくことを、ぜひ心がけてみてください。
このコラムを書いたプロフェッショナル
井上弘絵
株式会社アジャイルHR マネジャー
支援が完了しても、お客様が自走できるように、「伴走型支援」を心がけています。対話を通じて、お客様の「軸」や「大切にしたいこと」を理解し、目指したい姿を共に実現します。

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得意分野 | 経営戦略・経営管理、モチベーション・組織活性化、キャリア開発、チームビルディング、コミュニケーション |
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対応エリア | 全国 |
所在地 | 港区 |
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