強みから始める、これからのリーダー育成
「リーダーシップ開発」と聞いて、あなたはどんなことを思い浮かべるでしょうか?マネジメントスキルの研修や1on1のやり方、フィードバックの練習など、さまざまな取り組みが思い当たるかもしれません。確かにそれらは今でも大切な要素です。ただ最近では、「強みに基づくリーダー育成」という新しい視点が注目されています。
Gallup社の調査によると、「自分の強みを日々の仕事で活かしている」と感じている社員は、そうでない人と比べて仕事の満足度が6倍高く、離職率も大きく下がるという結果が出ています。つまり、リーダー自身が自分の強みを理解し、それを活かして人やチームと関わることが、組織全体の活力や成果にも直結するということです。
これまでのリーダー育成は、どちらかというと「足りないところを補う」ことに重点が置かれがちでした。たとえば「もっと論理的になれ」「はっきり指示を出せ」といったように、理想のリーダー像に近づけるために、不得意な部分をどう克服するかというアプローチです。しかし今のビジネス環境は、変化が激しく先の見通しが難しい、いわゆるVUCAの時代。そんな中で必要なのは、「何でもできる完璧なリーダー」ではなく、「自分の強みを活かし、他者と協働できるリーダー」ではないでしょうか。
このような考え方を後押しするのが、ストレングスファインダー(R)というツールです。これは、自分の思考・感情・行動の傾向を「資質」として可視化し、何が自分の得意なスタイルなのかを理解する手助けをしてくれます。リーダー候補や管理職が、自分の「らしさ」を見つけていく支援として、多くの企業でも導入が進んでいます。
ある製造業の企業での事例です。昇進して課長になったばかりのAさんは、自信をなくしていました。「前に出て強く指示を出さなければならないのに、自分にはできない」「リーダー失格かもしれない」と感じていたのです。そんなAさんがストレングスファインダーのワークショップに参加したところ、上位の資質には「共感性」「調和性」「責任感」が並んでいました。講師からは「丁寧に信頼関係を築く力こそ、今のチームに必要なリーダーシップです」と伝えられ、自分らしいスタイルを肯定できるようになりました。それ以降、Aさんは1on1で部下とじっくり向き合うスタイルへと転換。半年後には部下のエンゲージメントスコアが大きく改善し、チームの業績にも良い影響が見られたそうです。
このように、強みに基づくリーダー育成を実践していくにはいくつかの工夫が必要です。まず大切なのは、リーダー自身が自分の強みを知ること。そのうえで、「リーダーはこうあるべき」といった固定観念を見直し、多様なリーダー像を受け入れる文化をつくることが欠かせません。そして、リーダー自身だけでなく、チームメンバー一人ひとりの資質にも目を向けていくことが、より良いチームづくりにつながります。
今、求められているのは「リーダーらしい人」ではなく、「自分らしく力を発揮するリーダー」です。自分の強みを理解し、それを起点にチームと関わっていくことは、リーダーにとっての成長にもなりますし、チームにとってもプラスに働きます。「できないことを直す」より、「できることを活かす」視点でのリーダー育成は、これからの組織にとって大きな武器になるはずです。

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ストレングスファインダーで変革を促す~対話と多様性を重視し、個々の強みを活かすことで組織全体の成長をサポート~
前職では半導体製造技術者として勤務しながらコーチングやアサーション研修の社内講師も務める。独立後、ストレングスファインダーを活用したチームビルディングやリーダーシップ研修を中心に提供。ストレングスファインダーのプロファイリングに定評がある。
知識茂雄(チシキシゲオ) ガイアモーレ株式会社提携講師(株式会社ハート・ラボ・ジャパン)

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