再考 労働時間
週40時間労働
現在の労働時間は原則週40時間と定められています。
これは1993年に段階的な措置をへて導入をされました。ヨーロッパなど諸外国が週40時間労働であるということを受けて48時間から40時間へ短縮をされました。
この当時私は20代でしたが、この40時間完全導入のニュースを聞き、暗澹たる思いとともに怒りすら感じました。日本は“人”以外の資源のない国です。他の先進国が40時間であるから、先進国の仲間入りをするという機運のもと導入される…これは他国に比べて足かせになる、また相当生産性を高くしなければ他国には勝てない構造です。
そもそもこの週40時間ではなく週48時間に戻したとしたら、GDPは2割上がるかもしれません。そして近年では残業時間の規制も極めて強くなってきました。労働時間は少ないほうがいいと考えている人が大半です。しかし今一度この労働時間に対して考えてみる必要があるのではないでしょうか。
生産性の向上
日本は週40時間にしたのちに約30年が経過しています。その間労働時間が減った分、生産性で勝負せざるを得ない状況になりました。
これを強く認識している企業経営者はどの程度いたか疑問です。この40時間になったときこそ、生産性元年ではなかったのでしょうか。しかもちょうどバブル崩壊後のリストラブームであり、10人でやっていた仕事を8人でやらなければならないような状況です。この時も各社は確かに生産性の向上を検討しました。
しかし企業業績が壊滅的な状況の中で新たなシステム投資などができなかったため、業務の削減か残業でカバーするという手を打たざるをえませんでした。
その後もこのような消極的な経営が続き、多くの企業特に中小企業に至っては、極めて生産性の悪い業務遂行をしています。それと同時に優れたビジネスモデルを構築するような天才型のビジネスマンがなかなか出現しませんでした。
これは長年の一律で総合主義的な教育にも大きな原因があると思われます。また企業もこのようなイノベーターを育成する教育などは行っていませんでした。
近年やっと生産性の議論が活発になり始めました。日本が再生するには徹底した生産性の向上と多くのイノベーターの出現が必須ではないでしょうか。短期的に本気で取り組まなければ日本の再生はありえなくなります。企業の最も重要なKPIとして生産性指標をあげても良いような状況です。
今後の労働時間
現在は多様性の時代です。しかしながらこの労働時間は一律管理です。
労働者といってもきわめて健康で長時間働ける人もいれば、逆に基礎体力がなく短い時間しか働けない人もいるでしょう。このような体力による差もありますし、また本人の志向もあります。たくさんの技術や知識を学ぶために長時間労働したい人もいるでしょう。逆に本当に体力が少なくてできる限り少ない労働が望ましいと考えている人もいるかもしれません。
このように体力と指向がこれだけバリエーションがあるのに、なぜか労働時間は一律です。労働時間は健康診断、体力測定と産業医との面談などで個人ごとに決定するという方法が、今の時代に合っているのではないでしょうか。
40時間が日本にとって望ましいかという時間数の問題とともに、多様な個人を一律の労働時間に当てはめることが合理的かを考えなければなりません。
これは企業内で完結する話ではありませんが、体力、志向性が少ない社員は労働時間を短くすることはできます。本当は健康でもっと働きたい、もっと経験したいという志向のある社員が、生産性高く、長い時間働くことが企業にとっては望ましいでしょう。これはすでに法律の問題ですが、本当に日本の労働時間は今のままの時間今のままの運用でよいかを再考するべきでしょう。
*YouTube番組DigDeep人事 「再考労働時間」を参考に執筆
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林明文(ハヤシアキブミ) 合同会社HRMテクノロジー 代表

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