新人時代入社時研修を甘く見ていた育成担当者の経験談の活かし方
最近、新人や若手を指導するお立場の複数の方から「何度注意をしても改善されない」というご相談をいただきました。その際「ハラスメントが気になって厳しく言えない」、「権利を主張される」という言葉もきかれ、指導の難しさを感じられているご様子もうかがえました。
指導において正解はありませんが、多くの対応例を知っていることで、試すことはできます。そこで今回は、上司や先輩のミスや失敗経験を効果的に活用する「デメリットを伝える」対応についてご紹介します。
新入社員研修を担当していると、毎年、「こういうことも伝えないといけないのかぁ…」というケースが種々あります。
例えば、
・遅刻(何度伝えても改善がされない)
・休憩時間が終わってもなかなか戻ってこない
・勝手に離席する
・研修中にぼんやりしている(聞いていない)
・提出物を出さない(いつも遅れる)
・飲料の捨て方(ペットボトル、缶)が雑
・ゴミの出し方のルールを守ってくれない
・最寄り駅~会社までの道中で、広がって、大声で話をしている
・最寄り駅でだらしなく座り込んでいる(近隣の人にはどこの会社の社員かわかる)
・社外研修の電車での移動時に乗り遅れる
・宿泊施設ではしゃぐ
・宿泊施設で個別のデリバリーサービスなどを許可なく利用する
このようなケースにどのように対応されているでしょうか。
「ああしてはいけない」「こうしてはいけない」という伝え方もありますが、それをやると、「注意されないように」「叱られないように」という意識が強くなり、主体性が損なわれ、受け身になりやすくなります。
そのことから、「しないように」というメッセージは、できるだけ最小限にしたいところ。
よって、最初の段階で「こういう理由で、こうしてください」という伝え方をしておくのが必要ですが、それだけで済まない場合の対応も必要です。
そのような時に有効なのが、上司や先輩のミスや失敗経験を伝える、という方法です。
新人時代 新入社員研修を甘く見ていた人材育成担当者のケース
この方法を効果的に使った人材育成ご担当者様のケースがあるのでご紹介します。
その方は、新入社員研修を甘く見ていて、入社時研修のほとんどを聞いていなかったというエピソードを次のように新入社員に伝えていました。
「皆にこれから受講してもらうプログラムは、講義形式が多くて、入社して環境が変わった疲れも出やすい時期なので、聞くのがつらいかもしれません。でも、これをしっかり聞いておかないと後が大変なので、なぜ大変か、私の失敗経験を紹介します。
私が新入社員の時、正直、学校の授業の延長線上で研修を受けていたので、ボーっとして聞いてました。なので、全然聞いてなかったんです。その後配属されたんですが、上司や先輩から「研修で教わったでしょ」って何度も言われました。なので、すごく恥ずかしかったですが「実は、研修、ちゃんと聞いてませんでした。申し訳ありません」と言って謝って、最初から教えていただきました。
新人研修がそんなに大事だってわかってなかった自分がすごく恥ずかしかったですし、何より、忙しい上司や先輩の時間をたくさん使わせてしまったので、本当に申し訳なかったです。
なのでそんな経験をしている自分だからこそ、研修担当になった今は、皆さんに「配属先で役立つから集中して聞いておいて!」と伝えたいと思いましたし、また、講義が続くとキツイのもわかるので、手を動かしてメモをたくさんとって、そして、「毎回1つ質問しよう!」ぐらいの気持ちで参加してほしいと思ってます。
ちゃんと聞いておけば、配属先で叱られなくて済むし、何より、仕事が早く覚えられるので楽しいと思います。」
この話を伝えた後から、新入社員の受講姿勢や質問の質に変化がありました。
経験談が効果的である理由は、それぞれが自ら主体的に判断できるような情報を得ることにより、「そうしよう(または、そうしたほうがよさそう)」とい気持ちになることです。
問題行動があるときとは
問題行動があるときというのは、「その時のことしか見えていない」ことが多いのではないでしょうか。そこで、「それをしたら(または、それを続けると)どういうデメリットがあるのか」という、判断につながる情報を提供することで、本人が「その先を見て判断できるようにしていく」ということが必要になります。
その先を見て判断できるようになる情報として、上司や先輩のミスや失敗経験などは、イメージしやすく取り入れやすいと言えるでしょう。そのため、ミスや失敗経験を伝えることは指導において有効と言われています。
これから新入社員を受け入れ、育成する過程では、育成する側が想定していない問題行動等を取る人が現れる可能性がありますが、その時は、「その問題行動がどういうミスや失敗につながる可能性があるのか」ということを考えさせていくというアプローチもできるかもしれません。
新入社員を育成する人材育成のご担当者様、OJTのご担当者様の一助となれば幸いです。
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