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人事として「やっぱりトラブルになったか…」を未然に防ぐ方法

♦♦人事責任者として「やっぱりトラブルになったか…」を未然に防ぐ方法♦♦
 

人事の責任者として「なんとなく危ないな…」と感じているケースは多々あっても、
トラブルを未然に防ぐのは容易なことではありません。

以下の事例で考えてみましょう。

 

*************************************************************

「はぁ、またか…」

メールチェックをしていた部下がため息をついた。

「どうした?大丈夫か?」

人事部長であるあなたは心配して声をかける。
部下は疲れ切った声で「…Aさんからです…」とだけ答えた。

Aさんというのは、入社7年目の男性社員だ。

学生時代は部活に打ち込み、エネルギーに溢れる人材。入社面接時には「御社で世界
を変えるような仕事がしたい」という熱のこもった言葉が印象的であった。
本人の希望もあり、配属先は営業とした。

入社後1年は大きな問題もなく過ぎた。
しかし配属後1年が経過する頃から現場との折り合いが悪くなっていった。

現場からは「やる気に波がありミスが多い」「自分から仕事を引き受けるが中途半端
な状態で放り出す」「たびたび周囲とトラブルを起こす」といった話が聞こえてきた。

Aさんは獲得できそうな案件があるときは残業も厭わず、がむしゃらに仕事に打ち込
むのだが、一旦仕事が落ち着くと遅刻や欠勤といった勤怠不良が多く見られる傾向に
あった。

また周囲とコミュニケーショントラブルに陥ることも多く、事務員のミスに激昂し相
手に土下座を迫ったこともあった。その際、上司がきつく注意したところ、Aさんは
翌日無断欠勤。会社からの連絡にも一切応答しなくなってしまった。
止むを得ず人事がAさんに連絡したところ、本人は酷く落ち込んだ様子で「自分はも
う会社にいるべきではない」と話していた。

本来であれば勤怠不良を理由に休職を勧めるところだが、Aさんは現場の貴重な戦力
であること、また上記のようなコミュニケーショントラブルになる可能性があること、
などの理由で現場はAさんとの話し合いに及び腰であった。

先ほどのメール内容も「上司が私の企画した案を採用しない。自分の企画は素晴らし
く、採用しないのは上司が無能だからだ」という訴えだったらしい。

Aさんの対応には部下も疲弊している様子。あなたとしては「現状で大きなトラブル
にまで発展していないし、なかなか介入が難しい」というのが本音だった。


それから数週間後。

あなたは営業部長とともに、急に社長から呼び出された。

社長は手に一通の手紙を示しながら、「取引先の社長から『御社の社員からこういう
手紙が届いた』と渡された。差出人は営業のAさん。手紙の中身は『自分の優れた案
を上司が採用しないことが、御社にとってどれだけ不利益をもたらしているか』とい
ったものだ。一体どういう社員教育をしているんだ!」と怒りをあらわにしていた。

*************************************************************

 

この事例では、ほとんどの方がAさんに対して「なんとなく危ないな…」とは感じるも
のの、実際に有効な介入が実施できるかというと、なかなか難しいのではないでしょ
うか。

 

この事例を専門家の視点で読み解いていきましょう。

Aさんの入社面接時の『「御社で世界を変えるような仕事がしたい」という熱のこもっ
た言葉』からは、所謂やる気に満ちた人物像をイメージされる方が多いかもしれません。

しかし、この“スケールは大きいが具体性がない”発言は、少々引っかかる最初のポイ
ントでもあります。

1年後の現場からは『やる気に波がありミスが多い』といった意見が出てきたり、勤怠
不良が発生していたりと、やる気に大きな波がある様子が見えてきます。

さらに、『事務員に土下座を迫った』、『人事宛てに苦情のメールを送り付ける』とい
ったエピソードからは、感情の制御が難しく、衝動性が高いことが読み取れます。

では、この「やる気に大きな波がある」、「感情の制御が難しく、衝動性が高い」とい
った傾向は何が原因なのでしょうか。

もちろん「本人の性格」という可能性もありますが、専門家であればまず病気による可
能性を検討します。そして、本人と実際に面談を実施することで、これらの原因を推定
し、適切な介入を実施していくことになります(病気の可能性が高いのであれば、適切
な治療に繋げるなど)。

もし身近に相談できる専門家がいたとすると、どのタイミングで相談するのが望ましい
でしょうか。

もちろん早いタイミングであればあるほど望ましいのは間違いないのですが、“現場か
ら複数回トラブルの話が聞こえてくる”ようであれば、その時点で一度相談するのが望
ましいと言えます。
どんなに遅くても『事務員に土下座を迫った』というエピソードがあった時点では何ら
かの介入が必須であったと言えるでしょう。

「複数回にわたるトラブル」と「(その行動が)他者に直接干渉している」の2点を満
たしている場合には、早急に専門家に相談することで致命的なトラブルを未然に防ぐ可
能性が高まります。

より理想的には、定期的に専門家を交えた意見交換を行える仕組みが構築できると、こ
ういった問題をリアルタイムで共有し、リスクを最小化することができるものと考えら
れます。

(シニアコラボレーター 島倉 大)

  • 安全衛生・メンタルヘルス
  • その他

公認心理師/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント/二級FP技能士
【専門領域】産業精神保健、認知行動療法、ストレスマネジメント

臨床心理専攻。専門学校で学生の心理及びキャリア相談を担当。EAP事業会社にて、カウンセリング部長として企業のメンタルヘルス全般をサポート。約2000件の従業員への臨床に携わる。外資系会社から商社、組合・公務員団体等多岐にわたる研修を実施。

島倉 大(シマクラ ダイ) エグゼクティブコラボレータ―

島倉 大
対応エリア 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県)
所在地 渋谷区

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