行動から見る心理学 その2
前回は心理学と行動との関連について、述べてきました。
今回は、「行動」とは何か?の内容を少し抜粋してご紹介します。
通常、行動とは客観的に観察可能なものであると考えられますが、行動主義の
中でも行動分析学と呼ばれる学問では、行動を以下のように定義しています。
◆「行動」とは死人にできないすべてのことである。
この定義に従うと、我々が通常考えている行動とはかなり違った景色が見えて
きます。
例えば、「他人に迷惑をかけない」というのは死人にもできることですので行動
とは言えません。逆に、「他人の気持ちを想像する」というのは客観的に観察
することは不可能ですが、死人には決してできないことですので行動であると
言えます。
これだけでは単なる言葉遊びのようですが、この定義には非常に大きな意味が
あります。
行動主義の最終的な目的は、行動のコントロールにあります。コントロールする
ためには対象の行動を特定する必要があります。
そのためには「行動」というものの定義が大変重要になってきます。
人間はその脳の性質上「●●をしない」という行動よりも、「●●をする」と
いう行動のほうがはるかに制御しやすいのです。
(例)赤くてサイレンを鳴らして走る消防車を『連想しないでください』という
行動は実現させるのがほぼ不可能ですが、『連想してください』という行動は
容易です。
この考え方は業務でも同様に重要です。
例えば、復職者に対して「無理をしないように」という指示内容では行動を制御
するのは困難です。しかし「必ず18時までには退社するように」という指示内容
に言い換えることで実現可能性はずっと高まります。
行動を制御するためには、まず「行動」の定義を理解し、ものごとをこのような
視点で捉えるということが重要です。
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臨床心理専攻。専門学校で学生の心理及びキャリア相談を担当。EAP事業会社にて、カウンセリング部長として企業のメンタルヘルス全般をサポート。約2000件の従業員への臨床に携わる。外資系会社から商社、組合・公務員団体等多岐にわたる研修を実施。
島倉 大(シマクラ ダイ) エグゼクティブコラボレータ―
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