第132回 フリーランス新法~その4
2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が施行されました。
今回も、引き続きフリーランス新法についてみていきたいと思います。
<取引における義務と禁止行為について>
フリーランス新法では、履行すべき義務と禁止事項は、「取引の適正化」と「就業環境の整備」の2つのパートで構成されています。
発注者が、1)業務委託事業者、2)特定業務委託事業者、3)特定業務委託事業者が一定期間以上の期間業務委託する場合、のどれに該当するかにより、履行すべき義務と禁止事項は変わってきます。
業務委託事業者が業務を委託する場合
1.取引条件の明示義務
特定業務委託事業者が業務を委託する場合
1.取引条件の明示義務
2.期日における報酬支払義務
3.募集情報の的確表示義務
4.ハラスメント対策に係る体制整備義務
特定業務委託事業者が一定期間以上の期間行う業務を委託する場合
1.取引条件の明示義務
2.期日における報酬支払義務
3.発注事業者の禁止行為
4.募集情報の的確表示義務
5.育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
6.ハラスメント対策に係る体制整備義務
7.中途解除等の事前予告・理由開示義務
前回は、「2.期日における報酬支払義務」と「3.発注事業者の禁止行為」の一部について説明しました。
今回は「3.発注事業者の禁止行為」の残りの部分をみていきます。
<発注事業者の禁止行為>
フリーランスに1か月以上の業務委託をしている発注事業者には、禁止行為が定められています。
たとえフリーランスの了解を得たり、合意していたとしても、また、発注事業者に違法性の意識がなくても、これらの行為をすることは違法になります。
禁止行為は、次の7つです。このうち、1.と2.の内容は前回のコラムを参照ください。
1.受領拒否
2.報酬の減額
3.返品
4.買いたたき
5.購入・利用強制
6.不当な経済上の利益の提供要請
7.不当な給付内容の変更・やり直し
3.返 品
フリーランスに責任がないのに、フリーランスに委託した物品や情報成果物を受領後に引き取らせる行為です。例外として、不良品などがあった場合には、受領後6か月以内に限って返品することが認められます。
違反となるケースは、「イベントで販売する生花のブーケの製造を委託し、納品されたブーケをいったん受領したが、イベント終了後に売れ残ったブーケについて、不要になったことを理由として引き取らせた。」などといった場合が考えられます。
4.買いたたき
フリーランスに委託する物品等に対して、通常支払われる対価に比べ著しく低い報酬の額を定めることです。買いたたきは、発注事業者がフリーランスに業務委託し、報酬を決定する際のルールになります。報酬の額は、フリーランスとしっかり協議して定めることが重要となります。
買いたたきに該当するかどうかは、次の4つの要素を勘案して総合的に判断します。
1)報酬の額の決定に当たり、フリーランスと十分な協議が行われたかどうかなど対価の決定方法
2)差別的であるかどうかなど対価の決定内容
3)「通常支払われる対価」と当該給付に支払われる対価との乖離状況
4)当該給付に必要な原材料等の価格動向
5.購入・利用強制
フリーランスに委託した物品等の品質を維持、改善するためなどの正当な理由がないのに、発注事業者が指定する物や役務を強制して購入、利用させる行為を指します。
例えば、「スーパーから荷物の運送を委託されているフリーランスが、発注担当者からクリスマスケーキや恵方巻きの購入を要請されて購入した場合」などが考えられます。
発注事業者に強制の認識がなくても、事実上、フリーランスに購入等を余儀なくさせていると認められる場合には、購入・利用強制に該当します。
6.不当な経済上の利益の提供要請
発注事業者が自己のために、フリーランスに金銭、役務、その他の経済上の利益を提供させることによってフリーランスの利益を不当に害する行為です。名目を問わず、報酬の支払とは独立して行われる金銭の提供や、作業への労務の提供をすることが、フリーランスの直接の利益とならない場合が対象となります。
簡単に言うと、契約外の業務や成果などをフリーランスから搾取する行為です。例えば、「荷物の運送のみを委託しているにもかかわらず、委託内容には含まれていない荷積み作業を無償で行わせた。」などといったケースが考えられます。
7.不当な給付内容の変更・やり直し
フリーランスに責任がないのに、費用を負担せずに、フリーランスの給付の内容を変更させたり、フリーランスの給付を受領した後に給付をやり直させたりして、フリーランスの利益を不当に害する行為です。
例えば、「イベントで提供する料理の企画・調理を委託し、イベントが中止になったことを理由に委託を取り消し、企画や食材の準備にかかった費用を負担しなかった。」などが該当します。
発注側の都合で、発注を取り消したり、やり直しをさせる場合には、フリーランスが作業に要した費用をしっかり負担する必要があります。
今回は、発注事業者の禁止行為の続きについてみてきました。知らず知らずの内に、違反していることがないように、発注者側は関係する従業員に注意喚起することが重要です。
- 法改正対策・助成金
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- 人事考課・目標管理
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問

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