第97回 雇用保険の料率変更
新型コロナウイルスの感染拡大による雇用調整助成金の支給額の急増により、雇用保険の財政がひっ迫したため、雇用保険の料率が引き上げられることになりました。
令和4年度の雇用保険料率は、これまでの年度と違って、年度の途中で保険料率が変わります。令和4年4月1日~9月30日までの雇用保険料率については、事業主負担分のみが引き上げになり、労働者負担分は令和3年度と変更はありません。令和4年10月1日~令和5年3月31日までの保険料率については、上半期の料率から、労働者・事業主負担ともに、さらに2/1000引き上げられます。
今回は、令和4年度の雇用保険料率について説明したいと思います。
【令和4年度の雇用保険料率について】
雇用保険は、労使折半の「失業等給付」と「育児休業給付」、全額事業主負担の「雇用保険二事業」により保険料率が決められています。
このうち、令和4年4月1日から「雇用保険二事業」の料率が、令和4年10月1日から「失業等給付」の料率が引き上げられます。(育児休業給付は変更なし)
したがって、給与計算で従業員それぞれから控除する労働者負担分は、令和4年4月1日~令和4年9月30日までは令和3年度と同様で、令和4年10月1日~令和5年3月31日までが引き上げられることになります。
一般の事業の場合の労働者負担分は、令和4年4月1日~9月30日までが3/1000、令和4年10月1日~令和5年3月31日までが5/1000になります。
・令和4年4月1日~令和4年9月30日
ーーーーーーーーーーーーーー労働者負担率ーー事業主負担率ーー雇用保険料率
一般の事業ーーーーーーーーー3/1000ーーーーー6.5/1000ーーーー9.5/1000
農林水産・清酒製造の事業ーー4/1000ーーーーー7.5/1000ーーーー11.5/1000
建設の事業ーーーーーーーーー4/1000ーーーーー8.5/1000ーーーー12.5/1000
・令和4年10月1日~令和5年3月31日
ーーーーーーーーーーーーーー労働者負担率ーー事業主負担率ーー雇用保険料率
一般の事業ーーーーーーーーー5/1000ーーーーーー8.5/1000ーーー13.5/1000
農林水産・清酒製造の事業ーー6/1000ーーーーーー9.5/1000ーーー15.5/1000
建設の事業ーーーーーーーーー6/1000ーーーーー10.5/1000ーーーー16.5/1000
【雇用保険料控除の変更時期について】
雇用保険の計算は、実際に支給される給与金額に雇用保険料率を乗じて雇用保険料を決定するため、社会保険の徴収事務に比べてミスの発生率は高くありません。しかし、雇用保険料率の変更時に関しては注意が必要になります。
雇用保険料率が改定されるといつの分の給与から雇用保険料を改定しなければならないのでしょうか?意外に知識が曖昧な方が多く、給与計算を間違えてしまっているケースが見受けられます。
料率の改定があることをきちんと把握していたとしても、「10月に保険料率が改定されたから10月に支払われる給与から保険料率を変更した」ような場合は、賃金の締切日によっては誤っていることがあります。雇用保険料の徴収は、賃金の支払日で判断するのではなく、締切日で判断するのが正しい徴収方法です。
つまり、支払日が同じ10月であっても、賃金締切日が9月30日以前であれば9月の保険料率、10月1日以降の賃金締切日であれば10月の保険料率で計算するということです。
(例1) 当月締 当月払いの場合
締日:10月20日 支払日:10月31日 → 10月の料率(新料率)で計算
(例2) 当月締 翌月払いの場合
締日:9月30日 支払日:10月25日 → 9月の料率(従前)で計算
このように、あくまでも賃金締日を基準にして計算するルールになっています。くり返しになりますが、間違いが多いのは賃金支払日で判断している場合です。
この賃金締切日を基準にする考え方は、労働保険料の申告と同じです。雇用保険料の徴収をズレて行ってしまうと、労働保険料の申告も誤ってしまう可能性があるので、注意が必要です。
【労働保険料の申告について】
例年6月から7月にかけて行う令和4年度の年度更新では、令和4年度の概算保険料と令和3年度の確定保険料を申告・納付することになります。
令和4年度の概算保険料(雇用保険分)については、令和4年4月1日から令和4年9月30日までの概算保険料額と、令和4年10月1日から令和5年3月31日までの概算保険料額を賃金集計表などで計算を行い、その合計額を令和4年度の概算保険料(雇用保険分)として申告・納付する予定となっています。
今回は、雇用保険料率の変更について紹介をしました。令和4年度は、年度の途中で雇用保険料率が変わるイレギュラーな年度です。賃金の締切日と料率の変更のタイミングが正しいか、再度確認をしてみてください。
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経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
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