第64回 介護保険料を徴収するタイミング
給与計算の業務を行う上で、もっともミスを起こしやすいのは、やはり社会保険料等の天引きに関することです。これは、従業員の年齢等の理由によって徴収するかしないかが決定される仕組みになっているためです。
今回から数回にわたり、社会保険や雇用保険の徴収のタイミングについて説明していきたいと思います。初回は、その中でも特にミスが起きやすい「介護保険料」についてです。
<介護保険の被保険者の種類>
介護保険の被保険者は、65 歳以上の方(第1号被保険者)と、40 歳から64 歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)に分けられます。第1号被保険者は、要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。
一方、第2号被保険者は、加齢に伴う疾病(特定疾病)が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。給与から介護保険料の控除を行う従業員は、第2号被保険者(40歳から64歳まで)となります。
<給与・賞与から介護保険料の控除が始まるタイミング>
介護保険料は「満40歳に達したとき」より徴収が始まります。法律的には、「満40歳に達したとき」とは40歳の誕生日の前日のことをいいます。「誕生日の前日が属する月」から介護保険の第2号被保険者となり、介護保険料が徴収されます。
誕生日の前日で判断するので、誕生日が1日の方と、2日以降の方で徴収の方法が変わってきます。具体例をあげて説明していきます。
6月2日で40歳を迎える場合
誕生日の前日は6月1日のため、誕生日の前日が属する月である「6月分」より介護保険料が徴収されます。
6月1日で40歳を迎える場合
誕生日の前日は、5月31日のため、誕生日の前日が属する月である「5月分」より介護保険料が徴収されます。
賞与の場合
賞与の支払われた月により判断します。例えば、5月25日に賞与が支払われる場合、5月分の保険料と考えます。そのため、6月1日に40歳の誕生日を迎える方は、誕生日前であっても介護保険料を徴収しなければなりません。
<給与・賞与から介護保険料の控除を止めるタイミング>
介護保険料は「満65歳に達したとき」より徴収されなくなります。先ほど説明したように、「満65歳に達したとき」とは、65歳の誕生日の前日になります。この誕生日の前日が属する月から、介護保険料は徴収されなくなります。
ただし、65歳以降は保険料が給与から天引きされなくなくなるだけで、各自が居住している市区町村から直接個別に介護保険料が徴収されます。
6月2日で65歳を迎える場合
誕生日前日は6月1日のため、誕生日の前日が属する月である「6月分」より介護保険料が徴収されなくなります。
6月1日で65歳を迎える場合
誕生日の前日は、5月31日のため、誕生日の前日が属する月である「5月分」より介護保険料が徴収されなくなります。
賞与の場合
「控除が始まるタイミング」で説明した通り、賞与の支払われた月により判断します。例えば、5月25日に賞与が支払われる場合、5月分の保険料と考えます。そのため、6月1日に65歳の誕生日を迎える方は、まだ65歳になっていなくても介護保険料の徴収は不要です。
このように、1日が誕生日の方と、それ以外の日が誕生日の方で、介護保険料の徴収を開始したり、反対に徴収を止める月が異なります。一般的には、40歳になったから徴収を始めて、65歳になったら徴収を止めると理解していれば良いのですが、「1日」生まれの方だけは誕生日の前日が基準になるので注意が必要です。
特に賞与の支給に際しては、その前後で40歳または65歳になる方、中でも1日生まれの方がいないかは確認したほうが良いでしょう。
なお、健康保険組合に加入している会社の場合は、扶養家族に40歳以上65歳未満の方(特定被保険者)がいると本人の年齢に関係なく、介護保険料の徴収の対象にしているケースがあります。これは、特定被保険者に対する介護保険料を徴収することについて、厚生労働大臣の認可を受けている健康保険組合に限ったイレギュラーなケースです。この場合でも、年齢の考え方は今回説明した通りです。ただし、会社は扶養家族の年齢も管理しておかないと徴収誤りにつながってしまいますので、ご注意ください。
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経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
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