第10回 年末調整の後の諸手続き
ようやく賞与計算や年末調整の清算も終わり、担当者は一息ついている頃だと思います。しかし、もうひとふんばり、年末調整の後にもまだ行うことがあります。
年末調整は、毎月徴収していた源泉所得税を清算することですが、もうひとつ大切な目的があります。それは、1年間の個人の所得を確定することです。1年間の所得は、住民税の算定の根拠になりますし、医療費控除や住宅ローン控除など年末調整では清算できなかった人が確定申告を行うときにも、年末調整の計算結果が必要になります。そのため、会社は年末調整で算出した数字をもとに「給与所得の源泉徴収票」と「給与支払報告書」を作成しなければなりません。
<給与所得の源泉徴収票の作成>
源泉徴収票は、2枚作成することになっています。そのうち1枚は従業員に配布します。医療費控除や住宅ローン控除を行う場合は、これをもとにそれぞれが確定申告をすることになります。また、1年間の所得の証明になるものなので、賃貸物件を借りる場合などにも必要になることがあります。各人で大切に保管してもらうようにしましょう。
もう1枚は、以下の要件に当てはまる方の分だけを作成して、「法定調書合計表」に添付して1月31日までに税務署に提出する必要があります。
年末調整をした人
①法人の役員(相談役、顧問などを含む)およびその年中に役員であった方で、年末調整をしたその年分の給与などの金額が150万円を超える人
②弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、弁理士等で、年末調整をしたその年分の給与などの金額が250万円を超える人
③上記①および②以外の人で、年末調整をしたその年分の給与等の金額が500万円を超える人
年末調整をしなかった人
④「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した人で、退職などにより年末調整をしなかったその年分の給与などの金額が250万円を超える人(役員の場合には、50万円を超える人)
⑤「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した人で、主たる給与の額が2000万円を超えるため、年末調整をしなかった人
⑤「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しない人(乙欄もしくは丙欄適用者など)で、その年分の給与などの金額が50万円を超える人
通常の従業員であれば、支払金額、平たく言えば年収が、在職者は500万円以上、退職者は250万円以上の場合に税務署へ源泉徴収票を提出することになります。なお、中途入社の場合は、年末調整で加算した前職分の支払金額との合計になりますので、注意が必要です。
<給与支払報告書の作成>
給与支払報告書も2枚作成することになっています。
年末調整をした翌年の1月1日(今回であれば平成27年1月1日)現在の、各従業員の住所地のある市区町村に1月31日までに送付しなければなりません。
源泉徴収票と異なり、退職者で支払金額が30万円以下の方の分を除き、すべての従業員の給与支払報告書を提出します。
市区町村に送付するときは、ばらばらに送るのではなく、同じ市区町村の従業員ごとにまとめて、給与支払報告書総括表をつけて送ります。
<マイナンバー制度について>
ところで、平成28年1月よりマイナンバー制度が開始されます。
この制度が開始されると、会社は従業員やその扶養家族の個人番号を取得し、給与所得の源泉徴収票に記載して、行政機関に提出することになります。また、証券会社や保険会社が作成する支払調書、あるいは原稿料の支払調書などにもマイナンバーを記載する必要があります。
従業員から個人番号を取得するタイミングですが、今のところ、個人番号を記載した法定調書などを行政機関などに提出するときまでに取得すれば良いようです。
そのため、必ずしも平成28年1月のマイナンバーの利用開始に合わせて従業員の個人番号を取得する必要はありません。従業員に対する給与であれば、平成28年1月の給与支払いから適用され、平成29年1月末までに提出する源泉徴収票からマイナンバーを記載すれば良いことになります。
ただし、たとえば平成27年中に退職しても、締め日の関係で平成28年になってから給与の支払いがある場合は、マイナンバーを記載した源泉徴収票を作成することになりそうです。そのため、早い会社では、平成27年12月以降の退職者については、退職時までに個人番号を確認しておかなければなりません。
今回は年末調整後の手続きと、導入後の事務手続きの煩雑化が懸念されるマイナンバー制度についても少しふれました。
マイナンバー制度は、詳細がまだ見えていない部分も多いのですが、平成28年1月に開始されることはすでに決定しています。導入当初は従業員と扶養家族全員の個人番号を取得しなければならず、担当者には相当の負荷がかかることになりそうです。間際になって混乱することのないように、年末調整がひと段落した今のうちから情報収集を始めたほうが良いでしょう。
これまで3回にわたり、年末調整の流れを説明してきました。年末調整の事務作業の軽減やマイナンバー制度の実施を見越して、人事給与アウトソーシング(ペイロールアウトソーシング)S-PAYCIALの導入や税理士・社会保険労務士などの専門家へのアウトソーシングの活用を今から検討してみてはいかがでしょうか。
- 法改正対策・助成金
- 労務・賃金
- 福利厚生
- 人事考課・目標管理
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。
川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
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