日本企業の「グローバル人材育成」の一考察①
前回のプロローグに引き続き、人事部門や事業部門としてトップの要請・経営の要請である「グローバル人材の確保・育成」にこたえられているのか?どうこたえるべきなのかを 5回のシリーズで考えていきます。
第一回
1.日本企業を取り巻く現状分析
(1)国内市場の縮小
わが国の人口については既に緩やかな減少局面へと移行しており、元総務大臣の増田寛也氏が代表を務める、日本創生会議が「地方消滅」を唱えたことで、「人口減少社会」、そして「消滅可能性自治体」の議論が大きくクローズアップされている。
人口の減少は、一般消費財に対する需要の縮小、2015 年から減少に転じると推計されている世帯数の減少は、住宅や自動車等の耐久消費財市場の縮小を意味している。
わが国の国内市場は、人口および世帯数の減少により、規模の面で今後成長を見込むことは難しい。
日本企業は、これまでその競争力の源泉であった国内市場の縮小という大きな環境変化の局面を迎えている。
そのような中で海外に市場を求めるのは当然の帰結である。
(2)新興国市場の拡大
経済の成熟化と少子・高齢化に伴う人口減少局面への移行によって、前述の通り、国内市場において過去に見られたような大幅な経済成長を今後、望むことは難しいと考えられる。
一方、米国の金融危機・欧州諸国の経済不安などいわゆる世界同時不況の影響を受けながらも、発展途上国・新興国市場は依然として急速な拡大を続けている。
特に、発展途上国・新興国市場における2009 年から2014 年にかけての市場拡大規模は目覚ましいものがあり、今後の成長地域として世界からの注目を浴びている。
特に中国・インドといったいわゆるBRIC’SやASEAN諸国などの新興国では、自動車や家電製品、高付加価値型サービスの購入層となり得る「中間所得層」市場が拡大している。日本企業にとって、これら新興国では、従来から期待されていた生産拠点としてだけではなく、マーケットとしての重要性がこれまで以上に増すと考えられる。
しかし、新興国市場を重要なターゲットと位置付けているのは日本に限ったことではなく、欧米先進諸国や韓国等も官民を挙げた活動を実施しており、さらに最近では中国もアフリカなどの新興国市場への参入を大胆かつ急激に進めつつある。
このように、世界経済・市場のグローバル化は着々と変化しながら進展してきている。
新興国市場の拡大など、日本を取り巻く世界の経済環境変化を背景に、多くの日本企業にはこれまでの、先進諸国中心の販売推進と発展途上国での生産活動から、これらの市場への積極的な進出が求められている。
(3)若者の意識の変化
こうした経済環境の変化が進む中にあって 海外で活躍できる グローバル人材の必要性が強く求められている。
そんな中、最近の新入社員のおよそ2人に1人(2016年の調査では65%)が、海外で「働きたいとは思わない」と考えていることが産業能率大学の調査結果に出ている。
その一方、「どんな国・地域でも働きたい」が過去最高になるなど、高い海外志向を持つ層も4割前後みられる。今後、グローバル化が一層進展する中で、少数派の海外志向が強い人材の争奪戦と、多数派の海外志向が弱い人材への支援強化が注目される。
海外で「働きたいとは思わない」としているとした新入社員の、働きたくない理由を見ると、「リスクが高い」、「能力に自信がない」など、海外に対する、不安が強く内向きの意識が顕著に見える。
最近 友人の主催する若い方々との交流会に参加をする機会があり、大学を一年休学してインドやフィリピンにインターンシップに出かける女性の大学生にお会いする等、海外志向の強弱が、はっきり分かれてきたと思われる。
これは、グローバル化は避けられないと考えているものの、その事実からは眼を背けて、楽しい大学生活の延長線で自分は国内に留まってやり過ごそうとする層と、グローバルな変化を積極的に将来のための機会に変えようとする意識の高い層に二極化していると考えられる。 ・・・
次回 2.日本企業の海外進出の歴史とグローバル展開の類型 へと続く
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※本稿は、株式会社 東レ経営研究所発行の雑誌「東レセンサー」2015年1-2月号に掲載した
文書を一部修正したものです。
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グローバル人材・人事全般のエキスパート!入社以来一貫して人事部門を歩み、海外拠点の人事や人材開発も経験
海外赴任に関するお悩みごと、日本人の国際化と異文化理解、海外安全・リスク対応等グローバル人材関連の支援活動はおまかせください。
長年にわたる日本国内外での人事・教育部門責任者の経験を活かして、企業向けグローバル人関連の支援活動をいたします。
中村 好伸(ナカムラ ヨシノブ) リロ・パナソニック エクセルインターナショナル(株)顧問
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