海外進出に最適な拠点形態は?駐在員事務所・支店・子会社の違い

海外で事業を拡大しようと考えると、必ず直面する大きな疑問があります。駐在員事務所、支店、子会社のどれを設立すべきかという問題です。
それぞれにメリット、注意点、コストの違いがあります。誤った選択により資金を無駄にし、リスクを抱え、成長の第一歩を遅らせることになります。しかし正しく選べば、新市場への参入をより速く、賢く、安全に進めることができます。
海外進出における拠点形態の重要性
海外での事業展開では、拠点形態の選び方がビジネスの可能性、制約、コストに直結します。具体的には以下の点に影響します。
- 責任範囲や税務リスク
- 収益の発生可否
- 採用や給与支払いの方法
- 市場投入のスピード
- 事業撤退の柔軟性
言い換えれば、海外ビジネスの土台を作る作業です。軽すぎると成長に耐えられず、重すぎるとコストや複雑さに溺れてしまいます。
■ 駐在員事務所
【概要】
・商業活動を行わない
・収益や契約、販売は不可
・市場調査、ブランド認知向上、連絡窓口に注力
【利点】
・安価で設立が速い(4~6週間)
・市場テストに最適
・年間コストが低い(2,000~8,000 USD)
【注意点】
・収益活動はできない
・親会社が責任を負う
・成功しても柔軟性に限界がある
【利用シーン】
・少額投資で需要を試す
・製品リサーチを実施
・ブランド認知を構築
まとめ
足を水につけるだけのイメージ。泳ぐことは不可
■ 支店
【概要】
・親会社の延長として運営
・現地で収益を上げ、契約締結や従業員雇用が可能
・責任は親会社が負う
【利点】
・迅速に参入可能(約6週間)
・設立コストが比較的低い(年間5,000~15,000 USD)
・収益を上げることが可能
【注意点】
・親会社がすべての責任を負う
・現地慣習への適応力が低い
・「現地色が薄い」と見られる可能性がある
【利用シーン】
・新しい法人を設立せずに収益を得る
・中程度のリスクで市場反応をテスト
・短期~中期プロジェクト
まとめ
迅速な市場参入。だがリスクも伴う
■ 子会社
【概要】
・独立した法人格を持つ
・独自の経営、税務、責任を負う
・親会社が過半数の株式を保有することが一般的
【利点】
・強固な責任保護
・現地で独立運営、信用力が高い
・長期的な成長に最適
【注意点】
・設立が複雑で費用がかかる(2~8週間+銀行口座開設に1~3か月)
・コンプライアンスコストが高い(15,000~50,000 USD+継続費用)
・撤退手続きが難しい
【利用シーン】
・長期的な市場展開を本気で行う
・完全な保護と柔軟性が必要
・採用と事業規模拡大
まとめ
コストはかかるが、成長の最強の土台
コスト、スケジュール、主な制限
拠点形態を選んだら、それに伴う費用、設立期間、制約事項を理解することが重要です。以下の表は、海外進出を計画する際の概要を示しています。
■ 駐在員事務所
設立期間:約4週間
年間費用(USD):2,000~8,000
主な制約:収益活動は不可
■ 支店
設立期間:約6週間
年間費用(USD):5,000~15,000
主な制約:親会社が全責任を負う
■ 子会社
設立期間:2~8週間(法人設立)+1~3か月(銀行口座開設)
年間費用(USD):15,000~50,000+継続的なコンプライアンス費用
主な制約:撤退手続きが複雑、コンプライアンス負担が大きい
※金額や期間は国や業種、書類の準備状況によって変動する場合があります。
ケース別:どの拠点形態が最適か?
ビジネスの目的によって、適した拠点形態は異なります。下表は、代表的なケースと最適な法人形態を示しています。
ケース「テック企業の急速な拡大」
最適な拠点形態:子会社
理由:急速な採用、長期的成長、責任保護、スケーラビリティをサポート
ケース「消費財の市場調査」
最適な拠点形態:駐在員事務所
理由:市場需要を迅速・低コスト・法令順守でテスト可能。後でアップグレードも可能
ケース「企業買収戦略」
最適な拠点形態:子会社
理由:資産、契約、責任を保持する法的独立性を提供
拠点設立の診断チャート
下記の「拠点設立診断チャート」で、進出計画の選択を可視化しています。自身の状況に合わせて、最適な拠点形態を見つけるのに役立ててください。

見落としがちな「隠れコスト」
設立費用や年間維持費だけでなく、次のようなコストにも注意が必要です。
- 一部の国で義務付けられている現地ディレクターの報酬
- 給与・福利厚生の法令遵守対応
- 税務アドバイザリー費用
- 撤退コスト(実は設立よりも撤退のほうが高額になることも)
- 銀行手数料や資本金要件
これらを予算に入れ忘れると、想定外の出費で計画が大きく狂う可能性があります。
賢いグローバル展開のための確かな基盤づくり
海外進出は大きな決断であり、どの形態で拠点を設立するかは、今後のすべてのステップに影響を与える重要な判断です。
駐在員事務所は、比較的負担を抑えて市場を調査・検証するのに最適です。支店は、迅速な市場参入と収益化を可能にしますが、本社がすべての責任を負う必要があります。
一方、現地法人は、長期的な保護や独立性、信用力を提供しますが、設立には時間とリソースが求められます。
それぞれに利点とトレードオフがあり、最適な選択肢は事業目標、運営規模、そしてリスク許容度によって異なります。重要なのは、コスト・法令遵守・法的リスクをしっかりと見極め、自社の戦略に合った形態を選ぶことです。
慎重に選択すれば、ビジネスは「生き残る」だけでなく、「成長し続ける」ことができます。
本コラムで提供する内容は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言と見なすべきものではありません。今後規制が変更されることがあり、情報が古くなる可能性があります。GoGlobalおよびその関連会社は、本コラムに含まれる情報に基づいて取った行動または取らなかった行動に対する責任は負いかねます。
このコラムを書いたプロフェッショナル
沖室 晃平
GoGlobal株式会社 代表取締役
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得意分野 | 人材採用、グローバル |
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対応エリア | 全国 |
所在地 | 渋谷区 |
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