独立して働くプロフェッショナル向けの世界11か国

柔軟な働き方としての自営業へのシフトは、今もなお加速し続けています。世界銀行のデータによると、世界の労働人口の約47%がフリーランスや独立請負業者(IC)で構成されています。場所にとらわれない働き方、世界中の顧客へのアクセス、柔軟なスケジュールなどを背景に、多くの人々が従来型の雇用形態よりも自律性を選ぶようになっています。
しかし、自営業を支える環境は国ごとに大きく異なります。規制、税制、デジタルインフラ、ビジネスのしやすさといった要素は国によって大きな差があり、とくに国際的に活動するフリーランスやコンサルタント、請負業者にとって、その違いは大きな意味を持ちます。
コンサルティング事業を立ち上げる場合でも、フリーランスとしてのキャリアを築く場合でも、これから紹介する11カ国は独立した専門職が活躍するための強固な基盤を提供しています。
ドイツ
ドイツは、自営業者にとって特に専門スキルを要する分野において、明確で整備された法制度が整っています。
- Freiberufler(フライベルフラー)ビザにより、資格を持つ専門職はフリーランスとして活動することが可能です。
- 労働法・税法のもと、自営業者に対して強力な保護が用意されています。
- 安定した経済基盤とEU市場へのアクセスが魅力です。
- 高い生活水準、信頼できる医療制度、世界的に評価の高い公共インフラを享受できます。
- ドイツ語の知識は有益ですが、大都市を中心に英語も広く通用します。
なお、ビザや税務登録の要件について十分に理解しておくことが重要です。ドイツはコンプライアンスを非常に重視しています。
アイルランド
アイルランドは、デジタルノマドやEU圏内の起業家にとって人気の高い選択肢です。
- 法人化した専門職に対しては12.5%という低い法人税率が適用されます。
- 個人事業主にとってはシンプルな税務登録制度が整っています。
- テクノロジー、金融、クリエイティブ分野のサービス需要が高く、市場機会に恵まれています。
- 英語圏でありながら欧州市場との強いつながりを持っています。
- ダブリン、コーク、ゴールウェイを中心に、コワーキングやスタートアップのエコシステムが急速に成長しています。
リモートワーカーにとっては、支援的なコミュニティや利用しやすい政府プログラムが整っており、働きやすい環境が整備されています。
ニュージーランド
ニュージーランドは、自営業への道筋が比較的スムーズであると同時に、質の高い生活環境を提供しています。
- 事業登録は迅速かつ低コストで行うことができます。
- フリーランスは個人事業主として活動することも、会社として法人化することも可能です。
- 進歩的な税制が整っていますが、控除がなければ税率は比較的高くなる場合があります。
- 親しみやすい文化、充実した医療制度、安全な社会環境が魅力です。
- ワークライフバランスを重視する人や、アウトドア志向のライフスタイルに理想的です。
ただし、すべての居住許可が自営業をサポートしているわけではないため、ビザの条件には注意が必要です。
キプロス
キプロスは、独立した専門職や国際的な起業家にとって、注目を集めつつある拠点です。
- 国際的に低水準の法人税率は2.5%から12.5%の範囲で設定されています。
- ヨーロッパ・アジア・アフリカをつなぐ戦略的な立地に位置しています。
- 多言語に対応できる高度な人材と、強い起業文化を有しています。
- 非居住者として税務上の優遇を受ける場合、配当や利息が免税となる制度があります。
- EU加盟国であるため、単一市場へのアクセスが可能です。
ただし、独立請負業者や彼らを活用する企業にとってコンプライアンスが重要です。雇用区分の誤りは、恒久的施設とみなされるリスクや追徴課税につながる可能性があります。
ポーランド
ポーランドは、フリーランスやリモート起業家にとって注目すべき拠点として存在感を高めています。
- 自営業者に適用される定額課税制度があり、社会保険料の負担も比較的軽いのが特徴です。
- 電子居住(e-Residency)プログラムは現在検討中ですが、まだ導入には至っていません。
- テクノロジー分野やゲーム産業が強く成長しています。
- ワルシャワ、クラクフ、ヴロツワフではコワーキング拠点が拡大しています。
- 生活コストが比較的安価でありながら、EU市場へのアクセスも可能です。
税制や労働法の遵守に関しては環境が改善されつつありますが、複雑さを踏まえ、現地の専門家のサポートを得ることが依然として推奨されます。
カナダ
カナダは、自営業者にとって包括的で安定した制度環境が整っている国です。
- フリーランスは個人事業主としての登録、または法人化を容易に行うことができます。
- 連邦および州レベルで、新規ビジネスを支援するプログラムが利用可能です。
- 医療、教育、金融サービスが幅広くアクセス可能です。
- トロント、バンクーバー、カルガリー、モントリオールといった主要都市には豊富な顧客基盤があります。
- 自営業者やスタートアップ向けに明確な移住制度のルートが用意されています。
税制は州ごとに異なるため、それぞれのルールを常に確認しておく必要があります。
オランダ
オランダは、独立請負業者(IC)を支援する明確なルールと、活気ある国際的な人材を有しています。
- 自営業者は zzp’ers(zelfstandige zonder personeel) として登録できます。
- 非英語圏の国として世界でもトップクラスの英語対応力があります。
- イノベーションに寛容な経済と、充実した公共サービスが整っています。
- デジタルインフラが整っており、リモートワークもサポートされています。
- 新規起業者向けの所得税優遇制度が適用される場合があります。
独立請負業者(IC)の分類に関する規制は変化しつつあるため、現地のコンプライアンス専門家からの助言が重要です。
オーストラリア
オーストラリアは、自営業者に対する保護が手厚く、独立請負業者(IC)向けの制度も整備された国です。
- Australian Business Number(ABN)の登録は簡単かつ無料で行えます。
- Personal Services Income(PSI)規則により、フリーランスの税金の扱いに影響があります。
- 経済は安定しており、コンサルティングやITサービスの需要が高いです。
- 生活の質は高いものの、主要都市では生活費が高めです。
- ビザ規則は厳格で、長期滞在やビジネス活動を計画する場合は、事前に適格性を確認する必要があります。
オーストラリア税務局(ATO)はIC契約の取り扱いを厳しく監視しており、誤った分類は重大な結果を招く可能性があります。
シンガポール
シンガポールは、東南アジアにおける戦略的なビジネス拠点であり、フリーランス業務を行う上でも効率的な環境を提供しています。
- ビジネス登録手続きは迅速かつ透明性が高いです。
- 自営業者向けの税制は明確です。
- 魅力的な法人税率と低い個人所得税率が設定されています。
- 優れた通信インフラ、公共インフラ、法的保護が整っています。
- 金融、テクノロジー、クリエイティブ分野でフリーランスの活動が盛んです。
高度に規制された国であるため、税務や事業登録法規を遵守することが不可欠です。
アラブ首長国連邦(UAE)
UAEは近年、自営業者向けの新しい就労ルートを整備しています。
- 個人所得税はなく、法人税も低い定率が適用されます。
- ドバイを含む複数の首長国では、フリーランスやリモートワーカー向けのビザが利用可能です。
- マーケティング、IT、デザイン、コンサルティングなどの分野で需要が拡大しています。
- 強力な銀行・デジタルインフラが整備されています。
- 多文化環境で、世界中のクライアントへのアクセスも容易です。
事業設立は複雑で、各首長国ごとにルールやゾーンが異なるため、専門家のサポートを受けることが強く推奨されます。
エストニア
エストニアは、自営業者向けのデジタルファーストサービスで世界をリードしています。
- E-Residency(電子居住権) により、遠隔でビジネスの登録や運営が可能です。
- 法人税は配当された利益にのみ課税されるため、再投資に適した制度です。
- 規制は透明で、官僚手続きも少なくスムーズです。
- デジタルノマド、コンサルタント、マイクロ起業家に理想的な環境です。
- EU加盟国であるため、ヨーロッパ市場へのフルアクセスが可能です。
銀行口座管理や税務申告は慎重に行う必要があり、特にエストニア国外に拠点を置く場合は注意が必要です。
独立請負業者(IC)にとって優れた国とは?
独立請負業者にとって最適な国には、いくつか共通の特徴があります。
- 透明な税制:フリーランスは、予測可能で分かりやすい税制が整っている国で働くことが重要です。
- デジタルインフラ:高速インターネットやオンライン行政サービスの整備により、業務効率が向上します。
- 法的保護:ICは誤った雇用区分や不当なペナルティを避けるため、法律上の保護が整った国を選ぶ必要があります。
- 明確なビザ制度:国によっては、自営業者向けのビザ制度が充実している場合があります。
- コミュニティと生活コスト:強力なネットワークや生活コストの手ごろな都市があることも働きやすさに直結します。
独立して働くことは自由を意味しますが、ルールから免除されるわけではありません。ICとして活動する場合も、現地の法規制やコンプライアンスを理解することが不可欠です。
自営業の拡大と規制の強化
フリーランスの働き方は着実に広がっています。独立請負業者(IC)にとっては、柔軟性や新たな機会が増える一方で、責任も大きくなります。
企業にとっては、専門性の高い人材や世界規模でのリーチを活用できるメリットがありますが、その一方でコンプライアンスの重要性も高まっています。
各国政府は労働者の分類に注目しており、多くの国で法律上の重要な課題となっています。規制当局は、従業員や契約者が適正に扱われ、正しく課税されることを求めています。
そのため、ミスは単なる書類上の問題にとどまりません。例えば:
- 罰金や追徴課税
- 無効または強制力のない契約
- 予期せぬ給与関連の負担
- 恒久的施設(PE)リスク
- 信用や評判へのダメージ
自営業者の場合、自分の雇用分類や登録、税務手続きを働く国の規則に従って正しく行う責任があります。企業側であれば、ICを正しく、かつコンプライアンスを守って活用する責任があります。そうでなければ、将来的に法的責任を負う可能性があります。
どちらの立場であっても、コンプライアンスの負担は現実的で増加傾向にあります。
企業向け
新しい国でICを活用する場合、慣れない法律や税務環境に直面することが多くあります。AORは現地の仲介者として、企業が次のことをスムーズに行えるよう支援します。
- 現地の規制に沿った契約者の審査・入社手続き
- 労働者の雇用分類や恒久的施設(PE)リスクなど、コンプライアンスリスクの評価
- 各国の労働法に準拠した契約書の作成
- 現地通貨での請求・支払いの管理、税務要件への対応
- 法規制の変更に迅速に対応、各国の専門知識が社内になくても運用可能
- プロジェクト成果に集中でき、運用やコンプライアンスの詳細はAORが裏で対応
IC(独立請負業者)向け
国をまたいだコンサルティングでは、税務、支払スケジュール、法的保護などに不確実性が生じることがあります。AORは次のようにサポートします。
- 契約条件の明確化、書類チェック、現地登録支援による入社手続きの効率化
- 適切な雇用分類を保証し、従業員として再分類されるリスクを軽減
- 請求・迅速な支払いを契約者の希望通貨でサポート
- 税務・書類・コンプライアンスに関する問い合わせの窓口を提供
- 法的な明確性を保ちながら、作業の自律性を維持
独立請負業者(IC)の自信はコンプライアンスから生まれる
AORはICと企業の間の橋渡しとして機能し、双方が安心して働ける環境を提供します。これにより、義務は確実に果たされ、リスクは最小化され、業務は円滑に進みます。
一見、柔軟でリスクの低い契約のように見えても、ほんの小さなミスが大きな問題に発展することがあります。例えば、
- 雇用分類が誤ったフリーランサー
- 現地のビジネスルールを反映していない契約書
- 慣れない国でのコンプライアンス要件の見落とし
こうした小さな不備が、監査、追徴課税、さらには恒久的施設(PE)リスクに直結する可能性があります。
ICにとってもリスクは同様に現実的です。明確な法的地位なしで業務を行うと、支払いが遅れたり、クライアントの信頼を損ねたり、国際的に働く能力自体を危うくする場合があります。
だからこそ、現地のAORパートナーは欠かせません。グローバルチームの拡大や、国際的なフリーランスビジネスの構築においても、AORパートナーがいれば運用面と法的な詳細が確実に管理されます。現地ルールの理解、雇用分類管理、契約者の自由と完全なコンプライアンスの橋渡しを行います。
国際的な働き方において、コンプライアンスは任意ではありません。基盤を正しく構築することから始まります。そしてその強固な基盤を作ることを、AORパートナーはサポートします。
本コラムで提供する内容は、一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言と見なすべきものではありません。今後規制が変更されることがあり、情報が古くなる可能性があります。GoGlobalおよびその関連会社は、本コラムに含まれる情報に基づいて取った行動または取らなかった行動に対する責任は負いかねます。
このコラムを書いたプロフェッショナル
沖室 晃平
GoGlobal株式会社 代表取締役
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得意分野 | 人材採用、グローバル |
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