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【前編】健康経営とは?戦略的に推進するための事例とヒント

健康経営とは、従業員の健康保持や増進を経営課題として捉え、マネジメントすることです。従業員のエンゲージメントや生産性を高める取り組みは企業価値の向上に繋がります。

一方で、長時間労働による労働環境の悪化や従業員の体調不良は、企業活動における機会の損失等、経営上の大きなリスクになることも。

社会情勢が変化する中でも事業を持続的に発展させるために、企業はどのような取り組みをするべきなのか。本記事では、「健康経営」という観点から前後編で解説します。

_____________________

前編目次
ー健康経営とは
・健康経営を実施する目的
ー健康経営に対する国の取り組み状況
ー企業が健康経営を推進するメリット

 

後編
ー企業における健康経営の取り組み事例
ー健康経営を推進する時に重要な3つのポイント

_____________________

 

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康保持や増進を経営課題として捉え、企業が戦略的にマネジメントすることを指します。
企業で取り組みを実施することは従業員のエンゲージメントや生産性の向上が期待され、企業価値の向上へ繋げることが可能です。

 

健康経営を実施する目的

1.企業の社会的責任(CSR)において健康経営が必要

日本社会では、労働人口が加速度的に減少しています。企業や社会に求められるのは、そのような中でも従業員が健康で高いパフォーマンスを発揮し、継続的にスキルアップをしながら働き続けることです。

そのため、株主や市場からは投資先として、求職者からはブラック企業でない就職先として、「健康経営の実施度合い」が企業を選定するための競争要因になっています。

また、「健康経営の実施度合い」が客観的にわかるよう、行政も各種の認定制度を設けています。

2.人的資本としての健康経営

古くから企業の業績を客観的に評価する指標としては財務指標が利用されていますが、財務指標には企業に蓄積されたノウハウ、従業員のスキルや価値が反映されていません。そのため、真の企業価値を把握するために非財務指標、いわゆるESG投資が必要とされ、その一部として人的資本が注目されています(※図2参照)

古くから企業の業績を客観的に評価する指標と
ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことです。事業の社会的意義、成長の持続性等優れた企業特性を持つかを投資家から判断されます。

非財務情報としての人的資本開示についての詳細は割愛しますが、経済産業省の「非財務情報の開示指針研究会」の第3回会合(2021年9月1日)に開示項目の例として示された項目には『身体的健康』『精神的健康』が含まれています。

この開示項目例からも、企業として健康経営に取り組む必要があることがわかるでしょう。

 

健康経営に対する国の取り組み状況

経済産業省では、2015年より各企業の健康経営に対する取り組みの状況と変化を分析するために「健康経営度調査(*)」を実施しています。健康経営度調査は、回答した企業自身が今後の取り組み方針を検討できることに加え、結果を元にした認定制度にも活用されている調査です。
*経済産業省:健康経営度調査について

認定制度では企業の取り組みや実績を客観的に示すことができ、上場企業を対象にした「健康経営銘柄」と中小企業を対象とする「健康経営優良法人認定制度」が用意されています。(※図3参照)

また、認定を受ける際の部門は大企業・中小企業で分かれており、大企業の上位500の企業には「ホワイト500」、中小企業の上位500の企業には「ブライト500」として認定を受けられます。

このように各企業での活用に繋がる「健康経営度調査」ですが、2021年度から、より発展的なヒアリングを実施するために企業が提出する健康経営調査票が変更されました。ポイントは下記の3点です。

 

1.各企業の健康経営に関する情報開示を促進

健康経営調査票の変更に伴い、健康経営施策に関して健診受診率、喫煙率、高ストレス者率等、定量的なデータの情報開示が求められるようになりました。

特に、健康経営優良法人のホワイト500に認定された企業は、健康経営の実践状況を分析した評価結果(フィードバックシート)の開示が必須要件とされています。
※参考:経済産業省:健康・医療新産業協議会 第4回健康投投資WB

 

2.業務パフォーマンスの評価・分析

業務パフォーマンスの指標として「エンゲージメントの向上」「プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムの低下(※)」が実際に起きているか、また測定の有無や測定手法を調査票に記載することが求められるようになりました。

指標を測定することにより、企業は従業員のパフォーマンスや経営にどのようなメリットを与えているのかを分析し、今後のアクションに繋げることが可能です(※※)。

(※)プレゼンティーイズムは『疾病就業』とも呼ばれ、会社に出社しているものの、健康上の問題で労働に支障をきたし業務パフォーマンスが低下している状態です。プレゼンティーイズムの状態にある従業員は、欠勤するほどは症状が重くないため、自身の生産性低下に気づいていないことがあります。
また、より深刻な「健康問題により欠勤状況が繰り返される状態」はアブセンティーイズムと呼ばれます。プレゼンティーイズムの状態にある従業員よりも欠勤状況やストレスチェックの結果から把握しやすいですが、パフォーマンスを発揮する機会が減るため、機会損失の影響も大きいです。
(※※)測定の有無や測定手法が求められているのは、エンゲージメントやプレゼンティーイズム・アブセンティーズムに関して国際的な、あるいは日本で一般的な測定手法が確立されていないためです。

 

3.スコープの拡大

健康経営の動きを自社だけでなく外部に対してもスコープを広げ、促進しているかどうかが問われるようになりました。

取引先に対して健康経営のノウハウ提供や共同実施等を行っているか、提供する商品やサービスを通じて社会全体の健康に寄与しているかを調査します。これにより、企業がESGのうちの環境(Environment)・社会(Social)に対しても社会的な責任(CSR)を果たすように促すほか、経済産業省としてもその事例を広めることを狙いとしています。
※参考:経済産業省 第4回 健康投資ワーキンググループ(2021年12月)「資料2 事務局説明資料1」

 

企業が健康経営を推進するメリット

では、健康経営に関する取り組みを企業が推進することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは4つのメリットをご紹介します。

1.従業員のエンゲージメントの向上

従業員の健康維持や改善の取り組みを企業全体で支援をすることを宣言し、具体的な施策を推進すると、従業員本人やその家族からの感謝を得られ、エンゲージメントの向上に繋がります。

2.   従業員のパフォーマンス低下を防止

変化が頻繁に起こる現代では、その変化自体が従業員個人のストレスの元となり、メンタルヘルスに問題が発生しやすい状況です。たとえば、在宅勤務/リモートワークにおける作業環境や通信環境の変化によるストレスから、「勤務しているものの本来のパフォーマンスを発揮できない」状態になってしまうことがあります。
そのため、企業は従業員のパフォーマンス低下に対して、防止・改善に取り組むことが求められています。

3.企業ブランディングと採用・定着の強化

健康経営に対する取り組みを自社サイトに掲載することで、職場環境に関する理解度を高め、他社との差別化を図ることが可能です。また、「労働安全衛生を重視し、健康経営を推進している企業に所属できている」状況は、従業員の会社に対する好意度やエンゲージメントを向上に繋がり、従業員の定着に繋がります。

 

4.業績や株価の向上

これまでに記載した「エンゲージメントの向上」「パフォーマンス低下の防止」「企業ブランディングと採用・定着の強化」は従業員や組織の継続的な成長と成果に繋がります。この結果として、企業全体としての業績や株価の向上が期待できるでしょう。

________

つづく後編では、実際の取り組み事例をご紹介します。

  • モチベーション・組織活性化
  • 法改正対策・助成金
  • 労務・賃金
  • 福利厚生
  • キャリア開発

WHI総研

入社後、通勤手当や寮社宅等福利厚生を専門に大手法人の制度コンサルやシステム導入を担当。子会社の人事給与BPOベンダーにて、複数顧客に対し人事関連業務のBPRを実施。顧客教育部門であるWorks Business Collegeを経て現職。

眞柴 亮(マシバ リョウ) 株式会社Works Human Intelligence /  WHI総研

眞柴 亮
対応エリア 全国
所在地 港区

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