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メンタルヘルス不調を早期発見するための体制づくり

1. 今月のコラム
「メンタルヘルス不調を早期発見するための体制づくり
~ラインケアから早期発見するために必要なこと~」
_____________________________________

メンタルヘルス不調が重症化すると回復に時間がかかり、本人、周囲や職場の人への
負担は大きくなります。
それらを防ぐためにも早期発見/早期対応の取り組みは重要です。

企業においてメンタルヘルス不調の社員を早期発見するためには(1)健康診断、(2)スト
レスチェック、(3)長時間労働の把握、(4)ラインケアを活用する方法があります。

(1)健康診断は年1回と機会とタイミングが限定されていることや身体症状のチェックが
メインになるためメンタルヘルス不調の早期発見は難しいかもしれません。
(2)ストレスチェックも年1回と(1)と同様に機会は少なく、かつ高ストレス者となっても
本人が面談を希望しない場合は具体的な状態はわからず上司や人事に繋がりにくいた
め早期発見に至りにくいです。
(3)長時間労働は毎月確認する機会があるため定期的に把握可能ですが(2)と同じく本人
が面談等を受けなければ状態はわかりません。
(1)~(3)の3つは注意して観察する必要がある社員を絞り込むという観点では有効ですが、
その頻度や得られる情報量から早期発見としては効果が見込みにくいです。

では、(4)ラインケアはどうでしょうか。
日常の仕事場面の状態を観察できるので頻度や社員の状態に関して得られる情報量が多
いということから早期発見に最も有効といえます。ただ、ラインケアを実際にやってみ
るとわからないことばかりで苦労している上司は多いのではないでしょうか。

ラインケアがメンタルヘルス不調の早期発見として効果的に機能していないことには理
由があります。それは「早期発見」に加えて「早期対応」まで上司に求めているという
点です。

休職する社員の中には病状がかなり悪化するまで勤務していたケースがあります。
「現場で気づかなかったのか?」と思うかもしれませんが、実は上司は気づいていた/
知っていて早期からフォローといった対応もしていた、ということをたびたび聞きます。
例えば、部下のパフォーマンスが悪く上司が面談したところ「業務が辛いしストレスに
なっている、体調も悪い」とのことで、ストレス軽減のために現場で業務負荷を下げた
がなかなか改善しない。
それでもできる限りの負担軽減を続けて長い間部署で抱えていたが最後は出勤できなく
なり休職に至った。周囲の人や上司自身が部下の分の業務を担うことになり、部署全体
も余裕がなくなっていった」
…上司は熱心にラインケアをしていたと思います。しかし、その対応があまり効果的で
ないためにかえって上司の負担と心理的な疲弊が増えたことが伺えます。

このケースのように「パフォーマンスが悪い状態」の社員がいたときに、その原因はい
くつか考えられます。能力やスキルの問題、プライベートの問題の影響、メンタルヘル
ス不調や他の病気の影響…、仮説がいくつか出てくるため上司だけで判断することはと
ても大変です。また、原因によって対応方法も変わってくるため、専門的な知識が必要
になります。
最初に社員と面談して「早期発見」したときに、その場ですぐに「早期対応」(業務負
荷を下げる)を決めるのではなく「専門家に繋げる」ということをすると専門家のアド
バイスを受けて原因を特定し、効果的な対応方法を選択できます。


ラインケアを早期発見として機能させるためには「早期発見/早期対応」と一括りにせず
に、「早期発見」の部分にフォーカスして取り組んでもらうことがポイントになります。
「早期対応」については上司各々の判断や対応力に任せるだけでなく、専門家を活用し
て上司が「適切な対応」ができるためにサポートできる仕組みを作ることが望ましいと
言えるでしょう。

(コラボレーター 長尾文子)

  • 安全衛生・メンタルヘルス
  • その他

公認心理師/臨床心理士
【専門領域】産業精神保健、認知行動療法、臨床行動分析、復職訓練、ストレスマネジメント

大学院修了後、精神科、カウンセリングオフィス、大学病院にて心理検査、認知行動療法を主とした心理面接、集団認知行動療法に従事する。その後、精神保健福祉センターのディケアで生活支援や就労・復職支援に携わる。復職訓練、社内カウンセリングに従事。

長尾 文子(ナガオ アヤコ) コラボレーター

長尾 文子
対応エリア 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県)
所在地 渋谷区

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