企業支援の視点から考える、精神障がい者の定着支援の試み①
平成29年8月27日、一般社団法人 日本産業カウンセリング学会の主催する「日本産業
カウンセリング学会 第22回大会」が開催され、弊社の諏訪裕子、中田貴晃、廣川進が
「企業支援の視点から考える、精神障がい者の定着支援の試み-産業領域における心
理士の役割-」というテーマで、実践発表を行いました。コラムでは、今回と次回の
2回にわたり、その発表内容を簡単にご紹介いたします。
「障害者の雇用の促進等に関する法律(通称、障害者雇用促進法)」の改正により、
平成30 年4月より、障害者の法定雇用率が現行の2%から2.2%(平成32年度末までに
2.3%)に引き上げられることが決定され、企業の障がい者雇用状況は、この数年で
変革していくことが予想されます。
また、厚生労働省が平成28年2月に公表した「事業場における治療と職業生活の両立
支援のためのガイドライン」においては、両立支援の留意事項として、メンタルヘル
ス面への配慮が挙げられています。労働者のメンタルヘルス不調等の状態を把握し、
治療の継続や就業に影響があると考えられる場合には、産業保健スタッフ等と連携す
るなどして、適切な配慮を行うことが望ましいとあります。
しかしながら、企業における現状と課題としては、治療と職業生活の両立支援の取組
状況は事業場によって様々であり、支援方法や産業保健スタッフ・医療機関との連携
について悩む、企業の担当者も少なくありません。
今後、企業における障がい者雇用では、精神障がい者の就労が増えていき、且つ、障が
いや疾病に対する状態の把握、治療と職業生活の両立支援を目指すことが企業に求めら
れるため、今回の発表では、当社において実施した精神障がい者の職場定着支援プログ
ラムの事例から、企業支援の工夫について報告し、今後の精神障がい者の雇用支援にお
ける課題と心理士の役割について考察を行いました。
障がい者雇用では、「身体の機能障害」「精神疾患」「心身の不調」等が複数混在して
いることにより、職場のパフォーマンス低下の要因となる障がいや疾病を特定させるこ
とが困難な事例があります。
加えて、パフォーマンス不良が、元来の知的発達水準や性格傾向の影響をどのぐらい受
けているのか判断することが難しく、現場管理職・人事・産業保健スタッフ・主治医等、
関係者の共通認識を持つことに難航する場合があります。
複数の要因が混在するケース、関係者間で共通認識が持ちにくいケースでは、対応の方
向性(職場環境を調整する、医療受診を促す、業務指導を行う等)が決められず、事態
が悪化し、離職する可能性も高まります。
次回のコラムでは、職場定着支援における企業支援の工夫についてご紹介いたします。
【参考文献】
厚生労働省「事業所における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」2016
- 安全衛生・メンタルヘルス
- 人材採用
- マネジメント
- その他
公認心理師/臨床心理士/シニア産業カウンセラー
【専門領域】障がい者雇用の企業支援、精神障がい者の採用・定着・育成支援
精神科・心療内科クリニックにて、医師との協働で会社員のメンタルヘルス相談等に関与。EAP事業会社にて企業のメンタルヘルス支援に従事。現在は、企業の人事部門に対する障がい者雇用のコンサルテーション、精神障がい者の現場管理職・本人支援を実施。
諏訪 裕子(スワ ユウコ) シニアコラボレータ―
対応エリア | 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県) |
---|---|
所在地 | 渋谷区 |