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[プロフェッショナルコラム]

第85回 有給休暇と残業手当

2019年4月から、年間5日間の年次有給休暇の取得が義務付けられました。有給休暇に注目が集まったこともあり、有給休暇を取得した際の割増残業手当の支払方法について問い合わせをいただくことがあります。

今回は、有給休暇と割増残業手当の関係について解説をしていきたいと思います。

 

<年次有給休暇について>

有給休暇は、社員のリフレッシュを目的とした制度です。これは、法律で労働者に与えられた権利であり、会社は毎年、有給休暇を付与する義務があります。

年次有給休暇が付与される従業員は、次の2つの要件を満たす方です。

1) 入社してから6ヵ月以上経過していること

2) 全労働日の8割以上出勤していること

上の条件を両方満たしていれば、社員と比べて週の出勤日数が少なかったり、1日の勤務時間が短いパート・アルバイト従業員に対しても有給休暇を付与する義務があります。

 

年次有給休暇は、勤務日数に応じて与えられます。週の所定労働日数が5日以上の場合、雇い入れられた日から6ヵ月勤務して全労働日の8割以上出勤していれば10日の有給休暇が与えられます。次に、そこから1年ごとに11日、12日と与えられる日数が増えていきます。

これに対して、週4日以下の勤務で、週の所定労働時間が30時間未満のアルバイトやパート従業員に対しては、週の所定労働日数に応じた有給休暇が与えられます。具体的な日数については、以下の表を参照ください。

 

週5日以上の社員、または週30時間以上のアルバイトの有給休暇の付与日数

勤続勤務日数/付与日数:6ヵ月/10日
勤続勤務日数/付与日数:1年6ヵ月/11日
勤続勤務日数/付与日数:2年6ヵ月/12日
勤続勤務日数/付与日数:3年6ヵ月/14日
勤続勤務日数/付与日数:4年6ヵ月/16日
勤続勤務日数/付与日数:5年6ヵ月/18日
勤続勤務日数/付与日数:6年6ヵ月以上/20日

週4日以下のアルバイトの有給休暇の付与日数

週労働日数/1年の所定労働日数(6ヶ月):4日/169日~216日(7日)
週労働日数/1年の所定労働日数(1年6ヶ月):4日/169日~216日(8日)
週労働日数/1年の所定労働日数(2年6ヶ月):4日/169日~216日(9日)
週労働日数/1年の所定労働日数(3年6ヶ月):4日/169日~216日(10日)
週労働日数/1年の所定労働日数(4年6ヶ月):4日/169日~216日(12日)
週労働日数/1年の所定労働日数(5年6ヶ月):4日/169日~216日(13日)
週労働日数/1年の所定労働日数(6年6ヶ月):4日/169日~216日(15日)

週労働日数/1年の所定労働日数(6ヶ月):3日/121日~168日(5日)
週労働日数/1年の所定労働日数(1年6ヶ月):3日/121日~168日(6日)
週労働日数/1年の所定労働日数(2年6ヶ月):3日/121日~168日(6日)
週労働日数/1年の所定労働日数(3年6ヶ月):3日/121日~168日(8日)
週労働日数/1年の所定労働日数(4年6ヶ月):3日/121日~168日(9日)
週労働日数/1年の所定労働日数(5年6ヶ月):3日/121日~168日(10日)
週労働日数/1年の所定労働日数(6年6ヶ月):3日/121日~168日(11日)

週労働日数/1年の所定労働日数(6ヶ月):2日/73日~120日(3日)
週労働日数/1年の所定労働日数(1年6ヶ月):2日/73日~120日(4日)
週労働日数/1年の所定労働日数(2年6ヶ月):2日/73日~120日(4日)
週労働日数/1年の所定労働日数(3年6ヶ月):2日/73日~120日(5日)
週労働日数/1年の所定労働日数(4年6ヶ月):2日/73日~120日(6日)
週労働日数/1年の所定労働日数(5年6ヶ月):2日/73日~120日(6日)
週労働日数/1年の所定労働日数(6年6ヶ月):2日/73日~120日(7日)

週労働日数/1年の所定労働日数(6ヶ月):1日/48日~72日(3日)
週労働日数/1年の所定労働日数(1年6ヶ月):1日/48日~72日(1日)
週労働日数/1年の所定労働日数(2年6ヶ月):1日/48日~72日(2日)
週労働日数/1年の所定労働日数(3年6ヶ月):1日/48日~72日(2日)
週労働日数/1年の所定労働日数(4年6ヶ月):1日/48日~72日(3日)
週労働日数/1年の所定労働日数(5年6ヶ月):1日/48日~72日(3日)
週労働日数/1年の所定労働日数(6年6ヶ月):1日/48日~72日(3日)

 

<割増賃金率について>

次に、残業等を行った場合の割増賃金率についてみていきます。労働基準法上定められている労働時間は、1日8時間、1週40時間です。この労働時間を超えた場合には割増賃金を支払う必要があります。

割増賃金率については、以下のように定められています。

 

1) 時間外労働・・・2割5分以上(1ヵ月について60時間を超える場合は5割以上)

2) 休日労働・・・・3割5分以上

3) 法定労働時間内の深夜労働・・・2割5分以上

4) 時間外労働が深夜に及んだ場合・・・5割以上(1ヵ月について60時間を超える場合は7割5分以上)

5) 休日労働が深夜に及んだ場合・・・6割以上

    *中小企業は、(    )内は2023年4月より適用

 

<有給休暇を取得した際の割増賃金の考え方について>

時間単位や半日単位の有給休暇を取得した日は、有給休暇を取得した時間を除いて、実際の労働時間により割増賃金の対象になるかを考えます。もちろん、全日有給休暇を取得した日も同様です。

 

以下の条件で、具体的な事例をみていきましょう。

1) 月曜日から金曜日が勤務日

2) 1日の労働時間は9時~18時(休憩12時~13時)の実働8時間

3) 所定休日は土曜日、法定休日は日曜日

4) 時給1,000円

 

先ほど説明したとおり、労働時間が1日8時間、1週40時間を超えると2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。今回の場合だと、その時間の単価は1,250円となります。

月曜日から金曜日まで通常とおり勤務したうえで土曜日に8時間の休日出勤をした場合は、土曜日の勤務は割増賃金を含めた時給1,250円で計算します。

しかし、その週の月曜日に有給休暇を取得している場合は、その週の実際の労働時間は40時間以内なので、土曜日が休日出勤であったとしても割増賃金の支払い義務は生じません。したがって、実労働時間に時給1,000円を乗じた額(8,000円)を支払えば労基法上は問題ありません。

 

次に、時間単位や半日単位の有給休暇を取得した場合です。たとえば、ある日に午前中3時間の有給を取得し、その日の夜9時まで3時間残業をしたとします。この場合、有給休暇を取得した時間を除くと、実際の労働時間は8時間になります。したがって、残業の3時間は割増賃金の支払い義務はありません。

結果的に、この日は有給3時間+実際の労働時間(残業も含め)8時間に時給を乗じた11,000円を支払えばよいことになります。

 

 

冒頭でも記載しましたが、有給休暇は社員の方のリフレッシュを目的とした制度です。本来は、有給休暇を取得したことが理由で、別の日に残業をしたり、休日出勤をするのでは本末転倒です。できるだけこのようなことが起きないように、業務のマネジメントを行っていくことが大切です。

コラム執筆者
川島孝一
人事給与(ペイロール)アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。

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