2015年のリリース以降、今では就職を希望する学生の3分の1が利用するまでに成長した、リブセンスの「就活会議」。企業別の就活レポートは、学生から見た企業のリアルな姿や採用の様子がわかると、就活生の人気を集めています。さらに「就活会議」では、この5月にインターンシップの優良企業を表彰する、「学生が本当に行ってよかったINTERNSHIP AWARD2018」を開催。学生の声を100%反映した審査により選ばれたインターンシップには、どのような特徴があるのでしょうか。リブセンスで「就活会議」のユニット責任者を務める福島健二さんに、インターンシップの最新トレンドや学生が求めるインターンシップのあり方について、お話をうかがいました。
- 福島 健二さん
- 株式会社リブセンス 就活会議ユニット ユニット責任者
1982年 東京都大田区生まれ。株式会社リブセンス 就活会議ユニットユニットリーダー。2004年に法政大学を卒業後、国内外にECを展開するベンチャー企業に就職。その後、総合人材系サービスを運営する企業の人材紹介事業部において部長を務め、株式会社リブセンスに入社。新規プロダクトの立ち上げ、転職クチコミサイト転職会議の事業責任者を経て、現在に至る。
インターンシップは採用活動の常識に 早期化の傾向も
今年、「学生が本当に行ってよかったINTERNSHIP AWARD2018」を初開催されたそうですが、リブセンスでは就職活動を行う学生に向けて、「就活会議」というウェブサービスも展開していますね。
「就活会議」はひと言で説明すると、就活生のための企業クチコミサイトです。企業ごとにページが存在し、学生は選考方法、エントリーシートや説明会の内容、企業の印象などの情報を投稿することができます。サイトを閲覧する学生は、自身の就活に関する情報を随時入力することで、それらの情報に加え、姉妹サイトの「転職会議」から転載している企業の文化や給与などの情報を知ることができる、という仕組みです。
「就活会議」は2015年に開始したサービスですが、登録者の数は今春就職した2018年卒の学生で約15万人を越えており、全国の学生の約3分の1が登録した計算になります。また、これまでにクチコミ情報が掲載された企業は、およそ15万5000社に上ります。登録には学校から支給されるメールアドレスが必要で、投稿内容は目視による審査を経て掲載されているので、なりすましによる投稿なども起こりづらく、情報の信用度は高いといえます。
また、サイトには「インターン体験記」というインターン情報をまとめたカテゴリがあります。エントリーした理由や選考方法、プログラム内容に加え、参加後の感想や企業・業界に対する印象の変化、インターンシップ参加による本選考の優位性など多くの項目が設けられています。レポート内容もかなり詳しく、細かいところでは、発表会に参加した社員の肩書や報酬の有無まで入力してもらっています。ここまでの情報を簡単に得られるサービスは他にないこともあり、学生からの評判も上々です。
「就活会議」の投稿から、近年のインターンシップにはどのような傾向があるとわかりますか。
インターンシップを実施する企業は、この5~6年で20倍以上に増え、今や15000社以上にのぼるといわれています。大手企業やベンチャーだけのものではなくなりました。また、就職を希望する学生の7割以上が何かしらインターンシップに参加するともいわれています。複数回参加することも珍しくありません。インターンシップは、選考や会社説明会と同様に、採用活動の一環として欠かせないものになりつつあります。
特にここ1、2年は、インターンシップの開催が早期化している傾向があります。優秀な学生ほど低学年のうちから就職を意識し、積極的にいくつものインターンシップに参加しています。一方、企業もできるだけ早い段階で優秀な学生を確保したいので、従来よりも開催時期を早めています。以前は採用開始直前の冬場に行うことが多かったのですが、夏に前倒しになり、最近では春に行う企業も現れ始めています。採用は売り手市場が続いているので、ある意味では自然な流れともいえます。
選考では学生の声を100%反映
こうした市場の変化が、「学生が本当に行ってよかったINTERNSHIP AWARD2018」の開催にもつながっているのでしょうか。
そうですね。開催の背景は大きく二つあります。一つ目は、インターンシップそのものの普及を促進したいという思いです。私たちは、インターンシップが企業や学生にとって有益な機会になると捉えています。やはりwebサイトの求人情報や企業説明会だけでは、表面的な理解しかできないケースが多い。企業の魅力が伝わらずに機会を逃したり、入社後のミスマッチが生じたりする大きな理由は、企業を選ぶ判断材料が圧倒的に不足していることではないでしょうか。企業や仕事を体験して、理解を深めることができるインターンシップはとても意味のある取り組みです。普及が進んでいるとはいえ、インターンシップを実施していない企業はまだまだたくさんあるので、導入を促していきたいと考えています。
二つ目は、インターンシップの質の向上です。現在のインターンシップ市場は、玉石混交と言ってもよいでしょう。学生の満足度が高く、優秀な人材の獲得にもつながるインターンシップを提供できている企業がある一方で、企業説明会とほとんど変わらないものがあるのも事実です。中身の薄いインターンシップでは、企業や仕事の理解が深まりません。学生の心象も損なうので、結局、誰の得にもならないわけです。だからこそ、「インターンシップアワード」を通じて優良事例を紹介し、基準を作ることで全体の底上げを図っていきたい。学生から支持されるインターンシップとはどういうものなのか、「熱心な企業はここまでやっているんだ」ということを伝えていけたらと思っています。
「インターンシップアワード」の選考方法を教えてください。
審査対象となったのは、「就活会議」に体験記が投稿された、2017年のサマーインターンシップです。およそ600件の体験記がありました。「インターン体験記」には、自由回答の項目とは別に、「業界理解」「メンターのコミット」「自己成長」など、観点別に5点満点で評価する項目があります。「インターンシップアワード」では総合評価も含めた六つの部門で、スコアの高い企業上位5社を選定しています。
公募制ではないのですね。
はい。学生から見た客観的な評価による審査を追求した結果、スコアを利用した方法になりました。ちなみに自由回答の内容は、一切審査に反映されていません。というのも、書かれている内容を見て良し悪しを判断するとどうしても主観が入りますし、我々が審査したとなると、それは学生の評価ではなくなります。そのため定量的に評価できる項目に絞り、あくまでもフェアな審査を徹底しました。
どのようなインターンシップが、高い評価を得たのでしょうか。
全体的な傾向として、企業のリアリティーが感じられるもの、また学生のワークをサポートするなど、メンター社員の本気度の高さが感じられるものは、スコアが高くなる傾向がありました。
印象的な事例はありますか。
業界理解部門で1位を獲得した、村田製作所様は非常に興味深かったですね。インターンシップ参加者はオフィスで、社員と同じ仕事を体験します。内容は事業部主体で決めていて、人事部が募集をかけると100ほどのプログラムが集まるそうです。期間は原則2週間で、参加してほしい学生像や募集枠も事業部で考えます。プロクラム数も、事業部の主体性も驚くべき水準ですよね。学生を受け入れることを「フレッシュな感性がとても参考になる!」とポジティブに、そして対等に受け止めていることも印象的でした。
少し話はズレますが、特にBtoBの事業を行っている企業は、どんな仕事をしているのか、商品やサービスの魅力は何かなど、学生になかなか伝えきれないとうかがいます。インターンシップは実際の仕事を学生に体験してもらう中で、間違いなく、それらを伝える良い機会になると思います。
メンターの関わり方については、いかがですか。
メンターのコミットメント部門でトップに輝いた、コンビニ決済システムなどを手掛けるネットプロテクションズ様では、社員がインターンシップに参加することを評価する仕組みが確立されていました。同社には業務時間の20%を、担当業務以外のワーキンググループ活動に充てるという制度があります。ワーキンググループには新卒採用のグループもあり、若手社員を中心に人気を集めています。
現在在籍する若手社員の多くが学生時代にインターンシップに参加しており、ネットプロテクションズ様での経験が、「人生を変える大きなきっかけとなった」と感じていらっしゃいました。そのため、メンターの立場になってもインターンシップを自分事としてとらえ、学生に対して全力でコミュニケーションをとったり、プログラムの改善にも積極的に意見を出したりしています。ある種、インターンシップのエコシステムのようなものが機能していて、質が向上しているわけです。そうなると、「あそこのインターンシップはいいよ」と評判になり、優秀な人材が集まるようになります。
学生に企業の“ありのままの姿”を届ける「就活会議」
インターンシップの充実が、学生の志望度にも影響しそうですね。
そうですね。「就活会議」全体では、およそ6割の学生がインターンシップに参加した企業の志望度が高まったと答えています。インターンシップの実施は、企業に対する興味や関心を引き出すのに有効だといえそうです。ただし企業別にみると、ほぼ全員の志望度が上がっている企業もあれば、参加者の3割程度にとどまっている企業もあります。
例えば、インターンシップに参加をした社員のやる気や疲弊度を、学生は表情や言動から判断しています。またホームページでは「自由闊達」と謳っておきながら、社員に話を聞くと若いうちは裁量権があまりないと言っていたなど、イメージと事実のネガティブなギャップは当然ながら志望度は下げます。全力で取り組みつつも、過度に飾り立てず“ありのままの姿”で臨むことが大切だと思います。
“ありのままの姿”といえば、「就活会議」の企業向けサービスでは学生に向けて自社の特徴をわかりやすく伝えることができますね。
はい。サービスを利用した企業は、「就活会議」の企業ページにキャッチコピーやロゴの画像を入れられるほか、「事業内容」「自社の強み・弱み」「向いている人・向いていない人」などのテキスト情報を載せることができます。サービスを利用していない企業に比べて、情報やビジュアルが充実しています。またインターンシップの選考会や企業説明会などのイベント告知機能もあり、学生は「就活会議」から直接エントリーできるので、豊富な情報で自社に関心を持ってくれた学生のエントリーを逃しません。採用したい人材像が明確な場合は属性に応じてターゲットを絞り込み、ダイレクトメールを送ることも可能です。
一般的な就活サイトにはない、独自の機能はありますか。
他社の採用戦略や状況を調べることができるデータベースを開放しています。これは他サービスにはない独自機能だと思います。例えば、競合にあたる企業の選考方法や選考状況、エントリーした学生の傾向などを調べることができ、データに基づいて自社の採用戦略を練り直すことが可能です。
このDBやDMなど、さまざまな機能をご利用になれますが、料金はあくまで完全成果報酬制です。「就活会議」を通じてエントリーした学生が内定承諾をした時点で初めて、費用が発生します。コストとリスクを抑えながら、効率的に採用活動を行うことができます。
また「就活会議」は、応募後の歩留まり改善にも効果的です。学生の思考は選考が進むにつれ、「受かる」から「選ぶ」に変化します。「就活会議」は姉妹サイトの「転職会議」のクチコミも転載しています。「転職会議」のクチコミは、企業に対する従業員や元従業員の本音の評価なので、学生にとっては企業を選ぶ重要な情報源です。つまり、「就活会議」に自社の強みや共に働きたい人材像、事業内容を記載しておくことで、最適なタイミングで学生の動機付けを行うことが可能です。
企業と学生のベストマッチを実現するために
初期投資が不要にもかかわらず、充実していますね。
ありがとうございます。現実問題として、学生たちはどのような企業が自分に合うのか、どうすればそうした企業が見つかるのか分からずにいます。その証拠に、「就職したい企業人気ランキング」などでは、誰もが知っている企業ばかりがズラリと並びますよね。よく分かっていないから、とりあえず大手に、あるいはBtoC企業にエントリーが集中するのです。そしてよく分からないまま就職活動を続け、ようやく「自分のやりたいこと」を純粋に考えられるようになった頃には募集が終了。時すでに遅し、といった状況に陥ってしまう。仮に就職活動を順調に進められたとしても、入社してすぐに違和感をおぼえて早期離職してしまうというケースも少なくありません。
私たちは、そうした状況を少しでも解消したいと考えています。「就活会議」を通じて、働いてみなければ分からないようなことも含めて情報にして届けたいし、学生が規模や知名度にとらわれずに、自分に合った企業を発掘できるようになってほしい。そのため、採用広報にかけられるコストが限られている企業でも利用できるように、入口のハードルが高くならないよう設計しています。
学生が、自分に合った企業を発掘できるような仕掛けはありますか。
この4月から、学生向けに「就活生と企業の『マッチ度』判定機能」を追加しました。「就活会議」で収集した学生の志向性や選考データと、「転職会議」に寄せられた従業員や元従業員による企業のクチコミデータを分析し、社風マッチ度と選考難易度を判定できるものです。さらに分析結果から、学生とマッチ度の高い企業のレコメンド機能も設けています。レコメンド企業の中には、おそらく学生が思いもしなかったところや、初めて耳にするようなところもあるでしょう。そこから新たな出会いが生まれ、納得感のある就活につながることを期待しています。
学生たちは最初に就職した企業で、人生初めての社会人生活を迎えます。働き方や仕事に対する価値観が培われる大切な時期ですから、できることならポジティブな経験を重ねてほしい。本人のキャリアにとって最高のスタートがきれるよう、「就活会議」は企業と学生をサポートし続けていきたいと考えています。
株式会社リブセンスは、「あたりまえを、発明しよう。」をコーポレートビジョンに掲げ、求人領域、不動産領域など多様なサービスを展開。新しい“あたりまえ”の発明を通じて、より多くのお客様に、そして広く社会に必要とされる企業を目指しています。