採用難度が高まる今、求められる採用戦略
労働人口の減少、未来の予測が難しいVUCA時代の到来、生成AI活用などのデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展、企業を取り巻く環境が複雑化している昨今——。優秀な人材の採用競争は激化し、多くの企業が人材戦略の構築と見直しを迫られています。
今回は、このように採用難度が高まる今、求められる「採用戦略」をテーマとしたコラムを3回に分けてお届けします。この第1回では、採用競争が激化する背景や、企業を取り巻く課題を取り上げます。
採用環境の変化と企業に求められる対応
コロナ禍によって一時的に低下した大学卒新卒採用の求人倍率は、2024卒以降上がり続け、各社が求める採用数を満たすことすら難しい環境にあります。背景には、少子高齢化による労働力人口の減少があり、今後も大学卒業者数の増加が見込めず、採用難度は依然として高いままです。
加えて、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省合意のもと、インターンシップが類型化されました。これにより、企業はインターンシップを単なる採用手段として活用するのではなく、学生が職業観やキャリア感を育む「教育的な機会」として位置づけなおすことが求められています。
さらに、企業が人材に求める条件も変化しています。DXの進展や事業構造の転換期にある企業は、「例年通りの枠組みでの優秀な人材の採用」ではなく、DXを担うことができる人材や、新事業を推進できる人材といった、新たな基準に対応できる人材の獲得が急務となっています。このような変化に伴い、キャリア採用市場でも求人倍率は上がり続けており、優秀な人材を巡る採用競争はますます激しさを増しています。
このような環境下において、企業は人材獲得の在り方・戦略を根本的に見直す必要があります。社外からの採用に頼るだけでなく、既存社員の再配置や、新たなスキルの習得を支援するリスキリングの推進といった、内部施策の活用も、戦略上重要です。これらを組み合わせた包括的な人材戦略が、企業の持続的な成長を左右する重要な鍵となります。
採用戦略の設計が難しい理由
厳しい採用環境に直面しながらも、将来を見据えた採用戦略を十分に描けていないのが多くの企業の実情です。
特に新卒採用においては、○年に入社予定の内定者対応、○+1年の入社者に向けた選考、○+2年を見据えたインターンシップ施策が同時並行で進行するため、直近の採用活動を振り返る間もなく、次の年度の採用活動が始まってしまいます。このようなサイクルでは、採用戦略を練る時間的余裕を確保すること自体が難しいです。
また、インターンシップ企画運営から母集団形成、選考、内定者フォローまでの各施策を、担当者や部門ごとに分担しているケースも多く、個別の施策単位での改善にとどまっている企業も少なくありません。この方法も間違いではないものの、全体を俯瞰した戦略的な設計には繋がりにくい状況です。採用活動全体を見渡し、優先すべき課題にリソースを集中させる視点が無ければ、採用戦略の立案は形骸化し、ひいては事業の競争力低下や組織の不安定化といったリスクにも繋がりかねません。
このように、採用市場の競争が激化し、社内のリソースも限られるなかで、いかに採用活動を最適化・進化させていくのか。それこそが、採用戦略を描くことの本質的な意味です。そして、その戦略をかたちにするためには、市場や求職者の変化を捉える「外部視点」と自社の強みや課題を見極める「内部視点」の双方をバランスよく取り入れることが重要だといえるでしょう。
 
    まとめ
採用市場の競争が一段と厳しくなっている現在、これまでのように施策ごとに振り返りや改善を行うだけではなく、採用活動全体を俯瞰し、重要な課題に優先順位をつけたうえで、戦略的に取り組みを再設計することが求められています。
次回は、採用戦略の「外部視点」に着目し、特に「採用ブランディング」や「ターゲット人材の惹きつけ」にフォーカスして解説します。自社に合った人材を惹きつけるために、どのような考えで採用戦略を描くべきなのか、そのヒントを「外部視点」の観点からご紹介します。
このコラムを書いたプロフェッショナル
			
			
				 
			
				
					
						
							馬越 かおる						
						
						
							技術開発統括部 コンサルティング部 シニアコンサルタント						
					
					1998年、株式会社人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業、人事制度・組織開発コンサルタントを経て、採用領域事業の経営企画・統括、商品プロジェクトリーダーを経験。採用・新人若手領域のコンサルティング業務に従事。
				
			
			
 
			
						
							馬越 かおる						
						
						
							技術開発統括部 コンサルティング部 シニアコンサルタント						
					
1998年、株式会社人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業、人事制度・組織開発コンサルタントを経て、採用領域事業の経営企画・統括、商品プロジェクトリーダーを経験。採用・新人若手領域のコンサルティング業務に従事。
1998年、株式会社人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業、人事制度・組織開発コンサルタントを経て、採用領域事業の経営企画・統括、商品プロジェクトリーダーを経験。採用・新人若手領域のコンサルティング業務に従事。
| 得意分野 | 経営戦略・経営管理、モチベーション・組織活性化、人材採用、人事考課・目標管理、キャリア開発 | 
|---|---|
| 対応エリア | 全国 | 
| 所在地 | 大阪市 | 
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