人の成長を支援する人の心構え
春。新しい年度がスタートし、間もなくゴールデンウィーク。新入社員の方々はどのようなお気持ちで出社し、働き、そして家路についていらっしゃることでしょう。期待と不安と緊張が入り混じり、フワフワドキドキする毎日かもしれません。
私は、新社会人らしき方々を街で見かけるたびに拳を握りしめ(ファイトです!)思わず声をかけそうになります。
そして、自分にもあった新人の頃が懐かしく思い出されます。
早く結果を出したくて、焦って、視野が狭くなって、ミスもたくさんしました。
覚えることがいっぱいで「なんでこんなに大変な仕事を選んだのだろう」後悔したこともありました。
物事を器用に身につけていく同期たちが天才に見えました。
このように頼りないスタートを切った私ですが、その後12年務めることができたのは、習得に時間がかかるのろまな亀を気にかけ、根気よく付き合ってくれたトレーナー役の先輩のおかげだったと感謝しています。
貢献のリレー
会社のなかにたったひとりでも支えとなってくれる先輩がいる。どれほど心強いことでしょう。
よりよい仕事をするための装備を十分に携えていない新人にとって、直に接する機会の多い先輩との関りは、仕事に取り組む姿勢や働く意欲に大きな影響がありそうです。
組織の成果は動機づけされた知識労働者の協働と貢献のリレーによって生み出されるからです。
皆さまの組織では貢献のバトンのパスは上手く運ばれていますでしょうか。
新人さんはのびのび働いていますでしょうか。
彼ら、彼女らは、困った表情をしていませんか? 助けを求めていませんか?
誰に何をどう聞いたらいいのかわからない環境が続くと居場所を見失いかねません。口を閉ざし、心を閉ざした人は、バトンを受け取ることも渡すこともできなくなり、貢献のリレーはそこで止まります。
組織は人を変える。否応なしに変える。成長させもすれば、いじけさせたりもする。人格を形成させもすれば、破壊したりもする。P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』164ページ
成長を支援する人の心構え
ここからは、ゴールデンウィーク前後は、教える側も教わる側も心の疲れが出やすい時期。
心の余裕を取り戻すためにも、メンバーの成長を支援する際の心構えを、マネジメントの父ドラッカー教授の言葉をもとに職場の状況と照らして確認したいと思います。
(1)不得意なことで何かを行わせてはならない
(2)近視眼的に育ててはならない
(3)エリート扱いをしてはならない
『非営利組織の経営』165ページ
(1)不得意なことで何かを行わせてはならない
ドラッカー教授のマネジメントの大原則は「強みを生かす」です。
強みもあれば弱みもある生身の人間同士が、互いのできることとできないことを組み合わせることで、一人では果たせないことを成しとげられるのが組織の醍醐味といえるでしょう。大事なのは一人ひとりのできることを組織の成果に結びつけることです。
但し、新入社員時期の不得意なことは、経験不足なだけのことも多く、伸びしろととらえることができるでしょう。
むしろ、自身や上司の不得意なことを開示し、新入社員の強みで補完できることがないか、新入社員側に投げかけてみるのも一考です。
(2)近視眼的に育ててはならない
仕事だけができる人をつくることが育成のゴールでしょうか。
確かに、仕事は人生のなかで多くの時間を費やすことですが、人生のすべてではありません。
当たり前ですが、その人の人生はその人のもの。ひとつの仕事ができないからといって人格が否定されるなどあってはならないことです。成長の速度は一人ひとり異なります。経験を積みながら歩みを進めていけるよう見守る姿勢が求められます。
(3)エリート扱いをしてはならない
若い頃「優秀」と評価され将来を有望視される人たちの将来は、約束された通りのものだという保証はどこにあるのでしょう。
真の実力が蓄えられる前に必要以上に持ちあげられることは、場合によっては、進む方向を見誤るきっかけを与えることになりかねません。関わり方を間違えて人をつぶすことのないようにしたいものです。
育てる側も育てられている
さて、もう一度、新人時代の私の話に戻らせてください。
ある日、お客様からお礼状が届きました。先輩にご報告するととても喜んでくれました。
「入社したばかりの頃は自信がなさそうで、すぐに辞めちゃうかもしれないと思っていたあなたが、お客様から喜ばれる仕事ができる人になったことが本当に嬉しい。あなたが一人前になったことで、私もやっと一人前になれた気がするわ」
バーテル:思うように仕事ができない、何か不都合が起こるという人は、自分の尊厳や価値を実感するところまでは、なかなかいけないものです。しかし彼らが仕事ができないということは、この私が私の仕事をできなかったということなのです。そして、彼らが立派にできたということは、私が立派に仕事をできたということなのです。
ドラッカー:人が行うべきことを行えるようにすることほど大事なことはありません。それがリーダーについての唯一の定義ですね。『非営利組織の経営』189ページ
春から初夏へ。期待と不安と緊張で胸がいっぱいになっているのは、新人さんだけじゃないかもしれません。
見守り、サポートをする立場の先輩たちにとっても手探りの毎日でしょうか。
双方にとって「あなたとともにこの会社で働けてよかった」と思える日々でありますことを願ってやみません。(ファイトです!)
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現代の組織運営のコンセプトの8割を体系化し「マネジメントの父」と言われるピーター・F・ドラッカー教授。Well-Being経営に関心が集まりあらゆるものが多様化する今こそマネジメントの原理原則が活きると確信しサポートに役立ててまいります。
瀬川 智美子(セガワ トミコ) 研修コーディネーター(実践するマネジメント読書会(R)認定ファシリテーター)
対応エリア | 全国 |
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所在地 | 横浜市中区 |
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