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育休復帰後の女性社員がキャリアアップをあきらめる背景は?

 今月のコラム

「育休復帰後の女性社員がキャリアアップをあきらめる背景は?」
_____________________________________

女性社員が育休から復帰して仕事を続けることは特別なことではなくなりました。
しかし、復帰後に管理職にステップアップする女性社員は限られています。育休から
復帰する社員にキャリアアップを目指してもらうために、多くの会社が仕事面で様々
な配慮を行っているにも関わらず、なぜ多くの女性社員がキャリアをあきらめること
になるのか、「仕事」「育児」「本人の健康状態」の視点で整理し、考えてみたいと
思います。

【仕事】
育児休業前と同じ業務に戻った場合でも、1年程度仕事から離れることは大きな影響
があります。業務フローや業務を取り巻く状況が変化していれば、それにキャッチア
ップする必要があります。休業前に同一業務を長く行っていたとしても、仕事の”勘”
が戻ってスムーズに業務を遂行できるようになるまでに時間がかかるでしょう。
時短勤務制度は復帰後の育児との両立のために有効です。一方で、限られた時間の中
で業務を進めるためには、休業前とは異なる工夫が必要になります。さらに、子供の
体調不良があれば、急な休みをとることが続くため業務の進め方や調整に苦心するこ
とになります。

【育児】
1歳までの子供の成長発達は著しく、食事・睡眠・運動など生活の変化が大きい時期
でもあります。成長発達に伴い、育児に伴う負担も短期間のうちに変化していきます。
育休復帰後、子供にとって初めての集団生活につきものなのが、風邪や胃腸炎といっ
た感染症です。年齢が低いほど頻繁に病気にかかる頻度が高い傾向にあり、0歳児の
病欠日数は平均 19.3 日と言われています。集団生活を開始して1年は頻繁に保育園
からお迎え連絡が入り、月に数日間登園できないこともあります。病児保育や家族の
サポートをどの程度活用するかは、家庭の方針や経済事情、家族の状況によりますが、
子供の健康状態は仕事に大きな影響を及ぼします。
子育てや健康管理の悩みについては行政サービスでもサポートが得られますが、主に
平日の対応であるため、育休からの復帰後はアクセスしにくくなります。

【本人の健康状態】
出産・育児の心身へ影響は個人差が大きく、復帰時期にも関係します。休業前に短期
間での復帰を目指していても、産後の体調不良が続く場合もあります。特に注意した
いのが睡眠不足です。夜間授乳や夜泣きによる睡眠不足は、育児中の悩みとして多く
聞かれるものです。復帰後も睡眠不足が続く場合、注意力や思考力の低下から業務遂
行に影響があるかもしれません。
メンタルヘルスの変化にも注意が必要です。復帰前は夜泣きをすることがなかったと
しても、復帰に伴い新しい生活がはじまった直後は、夜泣きの再開やぐずることが増
える場合もあり、育児に伴う精神的・身体的負担感は大きくなります。

育休前は「仕事」を中心に考えられた状態から、育休からの復帰後は「仕事」「育児」
「本人の健康状態」の3つを関連させながら考えていくことになります。復帰する社
員自身が事前に復帰後の生活を想定していても、初めての経験に戸惑い、悩みながら
折り合いをつけていきます。
しかし、結果として上手くいかず、キャリアアップをあきらめていくケースが多く発
生することになります。
人事や上司は復帰前や復帰後もキャリアや業務について面談の場を持ち、本人の状況
を把握し、「仕事」の調整を行っていると思います。一方で、「育児」や「本人の健
康状態」についてはプライベートのことでもあり、踏み込んで聞くことがためらわれ
る場合もあるでしょう。また、社員もどの程度話してよいものか迷う部分でもあり、
特に「仕事」が上手くいっていないと思っている状況では、会社に要望を伝えること
をためらうことも多くあります。

結果として、不十分な情報や状況把握の中で仕事の調整を行うことになるため、
・仕事量の調整が足りず、負担が大きくなりすぎて両立をあきらめるケース
・過剰に配慮をしすぎて、会社から期待されていないと考えてあきらめてしまうケース
などが起きることになります。

こういった「ずれ」を防ぐために、人事や上司だけで対応する以外に第三者を入れる
ことも方法のひとつです。保健師や心理職などの専門職が「育児」と「本人の健康状
態」について社員の相談に対応し、それらを踏まえた本人の要望を把握することで、
会社としてより適切な対応を行うことができるようになります。
また、本人が抱えている「育児」や「本人の健康状態」に関する悩みや不安について
も、専門職がアドバイスを行うことで、心理的な負担の軽減や改善のための取組みを
サポートすることも可能です。

仕事と育児の両立は個別性が強く、またプライベートな内容や個人の価値観も関わっ
てくるため、専門職を効果的に活用しながら、支援を行っていくことが重要だと考え
ます。

                                                                                            (コラボレーター 中谷恭子)

  • 安全衛生・メンタルヘルス
  • その他

保健師
【専門領域】産業保健

総合病院にて看護師として臨床経験を経て、保健師として産業保健業務に従事。

中谷 恭子(ナカタニ キョウコ) コラボレーター

中谷 恭子
対応エリア 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県)
所在地 渋谷区

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