若手社員の育成に悩む管理職の皆さんへ
若手社員の育成に悩む管理職の皆さんへ
―チャレンジに後ろ向きな若手社員の思考や行動を上司が変えられるのか?-
若手社員の育成は多くの企業において課題とされ、頭を悩ませている管理職や人事担当者から相談を受ける機会が増えています。
今回のメルマガでは、マインドセット*に焦点を当て、チャレンジに後ろ向きな(=固定的マインドセット)若手社員が、
チャレンジに前向きに取り組み、失敗も糧にすることができる(=成長的マインドセット)ようになるのか、
そこに近づけるためにはどのようなアプローチが有効か、について述べていきたいと思います。
若手社員が成長的マインドセットに基づいて行動するようになるには、まず自分自身が今どういうマインドセットであるのかを知り、
その上で成長的マインドセットを身につけていく必要性を理解するのが重要です。
しかしながら、固定的マインドセットである社員は、マインドセット研修等で必要性を理解し、
職場に戻って“さぁ、成長的マインドセットを取り入れていこう”と自ら行動を変えることを試みるも、自力ではうまくいかないことが多く、
“やっぱりできない”と早々に諦めてしまうケースが少なくないようです。
固定的マインドセットである社員に成長的マインドセットに基づいた思考や行動を定着させるには、
一度きりの研修に参加する、または本を読んで知識を得るだけでは不十分であり、
実践を通して上司や専門家等が継続的にサポートすることが不可欠です。
例えば、チャレンジに消極的で失敗を必要以上に恐れがちなAさん(=固定的マインドセット)が、
成長的マインドセットについての研修を受け、「自分も怖がってばかりいないで、少しずつチャレンジしてみよう」と考え、
上司のBさんにその旨を伝えました。BさんはそんなAさんの気持ちの変化を嬉しく思い、 “スモールステップ”な課題を与えました。
Aさんも「やってみます」と言っていたのですが、Aさんはなかなか取り掛かる様子がありません。
さて、Aさんの行動を良い方向に変化させたい(ここでは、まず課題に取り掛かってもらいたい)と思った場合、
BさんはAさんにどうアプローチするとよいでしょうか。
よくあるのは、Bさんがこらえきれず、「なんでやらないの?(やれないの?)」と理由を尋ねますが、
Aさんは恐縮して「すいません、やります」と言うばかりでどんどん時間が経っていく、というものです。
上司は“こんなことも出来ないのか”と失望したり、“本当にやる気があるのか?”と怒りや疑念が湧いてきたりして、
Aさんに対してネガティブな感情を抱くようにもなってしまいます。
そこで、ちょっと声のかけ方を変えて「やろうと思うと、どんなこと(考え・イメージ)が頭に浮かぶ?何かネックになっていることがあれば一緒に考えるよ」等、
1、取り掛かる上で障害となっているものが何かについて探索的に尋ねる、また、2、上司も一緒に考えることを伝える、の2つを取り入れた指導を勧めています。
すると、上司が“スモール”と思っていたことが、その社員には高いハードルに感じられていたり、一人で完璧に遂行できないとダメだと必要以上に気負っていたり、など、
つまずきのポイントが分かり、少なくとも「じゃあこうしてみよう」というアクションにつなげられることが多いようです。
また、これを繰り返すことで、Aさん自身もあまり気づいていなかった自分自身の“考え方のクセ”が分かり、
(「分からないことがあるのは自分がダメだからだ」「失敗するくらいなら全くやらない方がマシ」等)、具体的な対処ができるように変わってきます。
さらには、職場や上司がこうしたプロセスに付き合ってくれると分かると、
社員が職場で安心感を持てるようになり、自発的な相談やチャレンジにもつながりやすくなると考えます。
自らに翻って考えてみると、別の行動を取り入れる方が好ましいと思っていても、これまでしみついた思考や行動パターンを新たなものに変えるのは難しいものです。
ですが、それに付き合ってくれる“伴走者”がいて頑張れたという経験をした方も多いとのではないでしょうか。
職場の上司では対応が難しい場合には、心理職等の専門家の手を借りてもよいでしょう。本メルマガが若手社員の成長をサポートする一助になれば幸いです。
*詳しくはメルマガVol.134を参照。
成長的マインドセットはチャレンジに前向きで今後も成長が期待できるが、
固定的マインドセットは失敗を恐れチャレンジに後ろ向きで、将来的な成長が見込みにくい、と言われている。
(コラボレーター 笠作 鮎美)
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公認心理師/臨床心理士/産業カウンセラー
【専門領域】人事支援、復職支援、働く人のメンタルヘルス
総合病院とEAP企業にて働く人のメンタルヘルス問題に従事したのち、現在は企業人事を支援する立場から、社員のメンタルヘルス不調や問題行動に対して、コンサルテーションや支援を行っている。
笠作 鮎美(カササク アユミ) コラボレーター
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