メンタル休職者復職時の産業医活用のコツ①
メンタル休職者の復職手続きの際、企業の人事担当者から
「復職させることへの不安を感じても、主治医から復職可の診断書が提出されていると
産業医は主治医の診断に従ってしまう」
という話をよく耳にします。
産業医が主治医の判断を拠り所にしてしまう背景には、
産業医が精神科の専門でないということや、
当該社員の治療に一定期間関わっている主治医の判断を覆しにくいという事情があるようです。
中には通過儀礼的な面談になるので産業医面談を実施しない企業もあるようですが、
おすすめできません。
復職後に何らかの健康障害が発生した場合、会社の復職判断の責任が問われる可能性もあるため、
再発リスクの高いメンタルの疾病について特に傷病休職をした社員に対して
復職前の産業医面談を実施することは、リスクマネジメントの観点からとても重要になります。
復職時に産業医面談を実施する目的は、
① 当該社員が従前の業務に耐えられる健康状態にあるかどうかを判断すること
(これを判断するのに十分な情報が収集できない場合は、
本人の同意を得て主治医に医療情報依頼書を提示することもあります)
② 復職可と判断する場合に必要な安全配慮について職場にアドバイスすること
という大きく2つの目的があります。
ここで問題となるのは①の復職判断になります。
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」によれば、
「主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を
判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの
判断とは限りません」と書かれており、
続けて「このため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、
産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要です。」
と明記されています。
つまり、産業医は、主治医とは独立した立場で、職場の状況に従い判断することの重要性が
述べられています。もし産業医が以上の基本前提を認識していない場合は、この前提理解を
まず共有していくことが大切になります。
次回のコラムでは、メンタル休職者復職時の産業医の判断を行う上で、
重要な手がかりについてお伝えします。
- 安全衛生・メンタルヘルス
- その他
公認心理師/臨床心理士/精神保健福祉士/社会福祉士/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント
2009年度日本うつ病学会奨励賞受賞
精神科クリニック、障害者職業総合センター等で集団精神療法、デイケア、就労支援の他、スクールカウンセラー、千葉県医療技術大学校非常勤講師、千葉県庁健康管理室相談員を歴任。その後、EAP事業会社にて復職支援を中心にメンタルヘルス対策支援に従事。
中田 貴晃(ナカダ ヨシアキ) エグゼクティブコラボレータ―
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