面接だけで候補者の特性やカルチャーマッチを見極めることは容易ではありません。こうした課題に対し、候補者の同僚やクライアントなどによる第三者評価である「リファレンスチェック」を導入し、採用におけるマッチングの精度を向上させているのがエン株式会社です。
リファレンスチェックとは、第三者の視点を通じて候補者の行動特性や働き方を把握し、採用判断の精度と再現性を高める手法です。同社はリファレンスチェックで得たデータを、選考だけでなく入社後の配置や育成にも活用しています。エン株式会社 人財戦略室 中途採用グループの高橋さんと湯浅さん、同社にリファレンスチェックのサービス「backcheck」を提供しているback check株式会社の小野山さんに、リファレンスチェックの有効な活用方法についてお話をうかがいました。

- 高橋 広樹さん
- エン株式会社 人財戦略室 中途採用グループマネージャー
2017年エン株式会社に中途入社。エン転職の法人営業として、さまざまな業界の企業を担当し、採用の支援を行う。その後、自社の中途採用リクルーターとして主に営業職の採用に携わりながら、チームマネジメントに従事。現在は中途採用責任者として、営業職・エンジニア職・バックオフィス職などの幅広い採用を行っている。

- 湯浅 良光さん
- エン株式会社 人財戦略室 中途採用グループ
株式会社ニトリの都内大型店舗責任者を経て2022年、エン株式会社に入社。エン転職の法人営業としてマネジメントを経験後、人財戦略室へ異動。現在はミドル・バックオフィス領域の採用責任者を務める。

- 小野山 伸和さん
- back check株式会社 営業本部 シニアマネージャー
第三者からの評価が、入社後の活躍における確信につながる
現在担当されているお仕事についてお聞かせいただけますか。
高橋:私はエンの「人財戦略室 中途採用グループ」に所属しています。具体的には、営業職やエンジニア職、バックオフィス職などの中途採用における戦略の立案から、社員の育成を担う人事企画部門と連携したオンボーディングに関するところまで、幅広く携わっています。「採用して終わり」ではなく、入社した社員が活躍できるようにサポートするのが私の役割です。
湯浅:私も同じく「人財戦略室 中途採用グループ」に所属し、ミドル・バックオフィス領域の中途採用を担当しています。具体的には、候補者との面接や面談、リファレンスチェックの運用業務を担っています。
エンではなぜ、リファレンスチェックを導入することになったのでしょうか。
高橋:第三者からの評価があればより候補者を多面的にとらえる採用ができると考え、リファレンスチェックを導入しました。エンでは採用におけるフィッティングの精度向上を絶えず追求してきました。これまでも、あらかじめ質問項目を定めて面接に臨む「構造化面接」や自社で開発した適性テストなど、幅広い手法を取り入れてきたのです。さまざまな手法を模索する中で、面接や適性テストだけでなく、リファレンスチェックを使うことでさらに多くの情報が得られると考えました。

リファレンスチェックの導入にあたって、歩留まりへの影響はありましたか。
湯浅:運用を開始してみると、そうした影響はほとんどありませんでした。リファレンスチェックを辞退する候補者は、数十人に一人いるかいないか、という程度です。
リファレンスチェックを実施する旨を求人票に明記し、面接の早い段階から口頭でも伝えるようにしています。重要なのは、リファレンスチェックを「欠点を探す」ためではなく、「採用のミスフィットを防ぎ、相互理解を深めるためのプロセス」だと候補者に伝えることです。目的を共有することで、多くの候補者にスムーズに受け入れてもらうことができています。
また、「選考スピード」への影響も不安要素の一つでしたが、リファレンスチェック導入前後で大きな変化はありませんでした。最終面接の日程調整と並行して回答を依頼しており、平均1週間で回答を回収しています。
推薦者の選定については、何か制約を設けていますか。
湯浅:上司や同僚、クライアントなど「一緒に働いたことがある方」の中から最低一人以上に依頼するようにお願いしています。回答者は現職の方でなくても問題ありません。候補者が回答者を柔軟に選べるようにすることで、依頼時の心理的な負担を軽減できるようにしています。
質問項目の設計で工夫されている点はありますか。
高橋:欠点を探すような質問をすることはなく、候補者の「ビジネスパーソンとしての強み」や「どのような環境でどのような仕事をしていたのか」「どういったカルチャーの中で成果を出していたのか」といった内容をヒアリングしています。その上で、エンのカルチャーと候補者の相性を見極めています。質問内容は全職種で統一していますが、役職者を採用する場合は標準の質問に「マネジメントスタイル」に関する項目を1問追加しています。
採用する上で重視されている質問項目があれば教えてください。
湯浅:「もう一度、この人と一緒に働きたいと思うか」という質問です。この問いには、スキルや人間性といったビジネスパーソンとしての総合的な評価が凝縮されていると考えています。
リファレンスチェックの結果に「懸念点」が含まれていた場合はどう対応していますか。
湯浅:ネガティブな記述があったとしてもその時点で選考終了とはせず、最終面接でその背景を確認するようにしています。
以前、ある候補者に対して「決められた範囲の仕事しかしない」という指摘がありました。そこで、リファレンスチェックの具体的な内容には触れないよう配慮しつつ、候補者に働き方についてヒアリングをしました。すると、候補者は海外から業務委託として仕事をしており、時差や契約上の制約から決められた仕事以外をすることが困難だったのです。
このように、ネガティブな評価の背景を明らかにすることで、フィードバックの解釈が変わることがあります。重要なのは、断片的な情報で判断せずに「自社で活躍・定着できるか」をフラットに見極めることです。判断に迷う場合は「こうした懸念があるが、許容や育成は可能か」を現場の責任者に共有し、判断を仰ぐこともあります。
リファレンスチェックは、単体で合否を決めるものではなく、あくまで「面接の補完材料」です。例えば、面接だけでは60点程度の評価だった候補者が、リファレンスによって100点に近い評価になることがあります。面接という「点」だけでなく、過去の事実や第三者の評価を含めた「線」で候補者を捉えることが、精度の高い採用につながると考えています。

ミドル・バックオフィス領域における中途採用の早期離職が「ゼロ」に
リファレンスチェックの導入後、採用の質にはどのような変化がありましたか。
湯浅:私の担当するミドル・バックオフィス領域では、リファレンスチェックを導入してからの2年間では「1年以内の早期離職」は発生していません。マッチングの精度が格段に上がったことを実感しています。
高橋:以前よりも採用に自信を持てるようになりました。採用はどうしても主観に左右されがちです。客観的なデータが加わることで、自信を持って「この方を採用したい」と思えるようになったのは大きな変化ですね。また、社員からは、「自分のことを深く理解した上で内定を出してもらえたので、安心して入社することができた」という声をもらうことがあります。
リファレンスチェックで得たデータを、採用以外の場面でどのように活用していますか。
高橋:社員の育成を担当している人事企画部門や現場の責任者に内容を共有して、配属先の決定や日々のコミュニケーション、オンボーディングの参考にしてもらっています。リファレンスチェックで得たデータを採用担当者以外に直接見せることはできないのですが、個人情報の取り扱いに細心の注意を払いながら「こうした環境で成果を出しやすい」「こうしたコミュニケーションを好んでいる」といったアドバイスを伝えるようにしています。
入社後に共に仕事をする現場のマネジャーにとっては、非常に有用な情報ですね。
高橋:その通りです。全く情報がない状態でマネジメントをするよりも、あらかじめ相手の「人となり」を把握できていた方が、円滑にコミュニケーションを取ることができます。例えば、「裁量を与えられたときに最も力を発揮する」というデータがあれば、任せる仕事の量や内容も変わってきますよね。そうした情報が入社後の活躍に直結すると感じています。
ネガティブな評価も「活躍のヒント」に
小野山さんがカスタマーサクセスとして携わっているリファレンスチェックのサービス「backcheck」は、どのようなサービスなのでしょうか。
小野山:「backcheck」は、リファレンスチェックを通して企業で活躍できる人材を見極めるサービスです。候補者のスキルや行動特性だけでなく、経歴詐称やSNSでの不適切発言をはじめとするコンプライアンス上のリスクがないかなど、多角的な情報を得ることができます。客観的なデータに基づいた見極めを行うことで採用後のミスマッチを未然に防ぎ、入社直後から候補者が力を発揮できる環境づくりを支援。回答者が「なりすまし」ではないかを検知する仕組みも搭載しています。また、「backcheck」のカスタマーサクセスは、選考プロセスやリファレンスチェックに関する候補者とのコミュニケーション方法を企業と伴走しながら考えています。
小野山さんが企業のリファレンスチェックをサポートするときに大切にしていることを教えてください。
小野山:企業へのサポートとして重要視していることは主に二つあります。
一つ目は、情報の背景を徹底的に深掘りすることです。例えば、回答者からの評価が「仕事のパフォーマンスが芳しくない」という結果であっても、その要因が候補者の能力ではなく現職の環境にある可能性も考えられます。バイアスにとらわれることなく、企業のカルチャーや任せる役割に照らし合わせて、妥当性の高い意思決定ができるようサポートしています。
具体的な事例を挙げると、リファレンスチェックで「勤怠に問題がある」と評価されたソフトウェアエンジニアの候補者がいました。しかし、転職先の企業はフルリモート・フルフレックスかつアウトプット至上主義の環境。「技術力が高く、成果でコミットしてくれるなら問題ない」と判断し、懸念点を許容して採用に至りました。
二つ目は、リファレンスチェックを単なる情報の確認で終わらせず、有効活用することです。「backcheck」では、リファレンスチェックの結果と入社後のパフォーマンスを突合・分析することで、その企業で活躍する人材とそうでない人材の傾向を可視化しています。リファレンスチェックは、単なる選考補助ではなく、採用判断を振り返り、改善していくためのデータ基盤にもなり得ます。
例えば、ある大手日系企業は、挑戦心の強い「イノベーション人材」を採用要件として挙げていたのですが、リファレンスチェックを経て入社した社員のデータを確認したところ、「イノベーション人材」として採用された社員の離職率が高いことが判明しました。データを基に職場環境や採用要件に関してアドバイスすることで、採用支援に留まらず組織課題の解決に貢献したいと考えています。
また、回答者の負担を軽減し、スピーディーに回答してもらうため「backcheck」のUI/UXを随時改修しています。

リファレンスチェックとは、「誠実な人が報われる」採用の形
最後に、リファレンスチェックの導入を検討している人事パーソンへメッセージをお願いします。
高橋:面接の時間だけで候補者を見極めることは不可能です。「見極められなかった自分たちの力不足だ」と責めるのではなく、単純に「判断材料が不足していただけだ」と考えてみてはいかがでしょうか。リファレンスチェックという客観的な情報を取り入れることは、人事の判断に自信を与え、現場の信頼を勝ち取ることにもつながります。
湯浅:リファレンスチェックは、候補者と企業のフィッティングを最大化させるためのプロセスであると考えています。転職は人生の大きな転機。候補者が「ここでなら活躍できる」という納得感を持てるよう、ぜひ実施を検討してほしいですね。
小野山:リファレンスチェックの本質は、単なる事実確認ではありません。目の前の仕事へ真摯(しんし)に向き合うことが、巡り巡って自分のキャリアを助けてくれる。そんな仕組みが当たり前になれば、働く人の意識もおのずと変わるはずです。リファレンスチェックを通じて、「誠実な人が報われる社会」を人事の皆さまと共に築いていきたいと思っています。

back check(バックチェック)は、「自社にフィットした活躍人材を、安心して採用する」ためのオンライン完結型リファレンス/コンプライアンスチェックサービスです。リファレンスチェックでは、過去に候補者と共に働いたことがある上司・同僚からの評価を取得。面接だけでは把握しにくい「働きぶり」や「カルチャーフィット」などの定性情報を確認できます。コンプライアンスチェックでは、公的公開情報・Web情報・個別調査から、候補者の申告内容の整合性や、潜在的なリスクの有無を客観的に確認可能です。候補者の人物像をより深く、多角的に知ることで、採用におけるミスマッチを防ぎます。
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