人事評価の結果をどこまでオープンにすべきか
人事評価制度改定のコンサルティングをする際に、社員の方にヒアリングをすると、不満の声として挙がるのは「自分がどういう評価になったのかが分からない」「どういう理由で評価が低かったのかが分からない」という内容です。
人事評価制度を運用していても、評価結果やその根拠を明らかにしないと、被評価者はその制度に対し不信感を抱きます。
その不信感がモチベーションの低下を招き、中長期的な事業運営に支障をきたすことになります。
そのため、人事評価制度を適正に運用するためには、人事評価の結果とその根拠をきちんと本人にフィードバックすることが重要です。
人事評価の結果をオープンにすると、かえって結果への不満を抱かせるから、良くないのではないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。
結果をオープンにすることでかえって不満を抱かせるような事態になったとすれば、それは人事評価の仕組み自体に問題があるか、評価者の評価スキルに問題があるかのどちらかです。
それは、結果をオープンして初めて分かることです。問題が明らかになれば、それを改善すればいいだけなのです。
重要なのは、人事評価の結果とその根拠をオープンにして、問題点を改善することで、より社員の納得性の高い人事評価制度を作り上げていくことです。
人事評価の結果とその根拠をオープンにするといっても、どの範囲の情報までオープンにするかについて、いくつかのレベルがあります。
レベルが低い順から並べてみます。
<レベル1>
人事評価の結果を本人に知らせない。
<レベル2>
人事評価の結果のみを本人に知らせるが、その根拠は知らせない。
<レベル3>
人事評価の結果と根拠を口頭で知らせるが、最終結果が記載された人事評価シート自体は本人に見せない。
<レベル4>
人事評価の結果と根拠を、最終結果が記載された人事評価シートを見せながら知らせる。
<レベル5>
最終結果が記載された人事評価シートを本人に見せながら知らせるだけでなく、全社員の人事評価シートを公開して、他人の人事評価結果も見られるようにする。
レベル2以下だと、社員の多くは人事評価制度に対する不信感を抱きます。
レベル3だと、不信感を抱く社員の割合が1~2割くらいまで減ります(あくまで私のこれまでのコンサルティングの経験からの主観ですが)。
レベル4までいくと、人事評価制度の運用方法に対する不信感はほとんどなくなります。この段階で不満の声が挙がってくる場合、その内容は、人事評価制度自体の不備や、評価者のスキル不足に起因するものです。これは、今後のレベルアップにつながる前向きなものです。
人事評価制度を適切に運用するためには、一般的にレベル4の段階にしておくべきといわれています。
ただ、私は、できればレベル5が望ましいと思っています。
レベル5は完全オープンです。個人情報保護の問題があるので、社員の同意は得る必要がありますが、これをやると、人事評価に対して不信感を抱く社員が、裏でコソコソ不平不満を言うという状態をなくすことができます。
仮に他人の分も含めて評価結果やその根拠に不満がある場合は、評価者または人事担当者にそれを問い合わせし、それを受けた評価者が再度検討する仕組みを用意すれば、ある意味で評価結果は、全員が納得した状態に近くなります。
こういう取り組みをすると、単に人事評価の面だけでなく、さまざまなことで風通しの良い社風ができてきます。
一方で、レベル5の運用をしている企業はあまりないため、社員にとっても抵抗があるはずです。
現在の人事評価制度に不満がある社員も、レベル5のメリットは想像できないと思います。電子書籍は、おそらく数年後には便利さが消費者にかなり認知されると思いますが、今は「紙の書籍で十分だよ」と思う人が多いのと同じです。
ですからレベル5の運用をするためには、経営者の確固たる思いと、それをトップダウンで推進する力がないとできません。
しかし、それを実行し、「当社はオープンな社風をつくるために本気で取り組んでいます。そのため、人事評価結果も完全公開しています」といえば、それに賛同する人が集まります。経営者としてのその姿勢に賛同するお客様が集まります。
一度検討してみてはいかがでしょうか。
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