厚生年金の支給年齢引き上げよりも踏み込んだ年金制度改革が必要
厚生労働省が、厚生年金の支給開始年齢の引き上げ等について議論をスタートしました。
現行の厚生年金(2階部分)の支給開始年齢は、段階的に65歳まで引き上げることとなっており、男性で1953年生まれの者から、女性で1958年生まれの者から61歳となります。
これに対し、今回提示された支給開始年齢の見直し案では、68歳までの引き上げを念頭に次の3パターンが示されています。
(1)厚生年金の引き上げスケジュールを現行の「3年に1歳ずつ」から「2年に1歳ずつ」に前倒しする
(2)厚生年金について、現在の65歳への引き上げスケジュールの後、さらに同じペースで68歳まで引き上げ。併せて基礎年金についても68歳まで引き上げる
(3)(1)で前倒しを行ったうえで、さらに同じペースで68歳まで引き上げる
ニュース等では、「年金を払うのが馬鹿らしくなる」と大反対の声が多いのですが、公的年金制度のことを、自分が将来受給するために保険料を積み立てているのだと誤解をされている方が多いためではないかと思います。
公的年金は世代間扶養、つまり、自分の親に仕送りをするのと同じで、現役世代はリタイア世代の見知らぬ誰かに「保険料」という仕送りをしているということです。
だから、保険料を納めることと、自分が年金をもらうことは切り離して考えるべきなのです。
現役世代が支払う保険料は、自分が将来年金を受給するために積み立てているのではなく、自分達を育ててくれたリタイア世代に対する仕送りだと考えれば、気持ちよく保険料を納められると思います。
一方で、自分達が将来年金を受給する際には、その頃の現役世代に「保険料」という仕送りをしてもらうことになります。そこで考えるべきなのは、少子高齢化の影響でおそらく少なくなっているはずの現役世代に、できるだけ負担をかけないようにするということです。
そう考えると、公的年金制度の支給年齢引き上げは、当然やらなければならないことだと思います。
むしろ、支給開始を68歳に引き上げるくらいでは、全然足りないと思います。
なぜなら、その頃にはさらに平均寿命が上がってリタイア世代(年金受給世代)の割合が今と同じように高くなり、現役世代の負担の重さが問題となることが予想されるからです。
できれば、
(1)老齢年金自体を廃止。生活保障については、現在の生活保護制度の拡充により対応(将来リタイアしたい人は現役時代から民間の積立型個人年金等に加入)
(2)公的年金制度(障害年金、遺族年金のみ)を国民年金に一本化
(3)年金制度を保険方式から税方式(消費税などの間接税として徴収)に変更し、財源を確実に徴収くらい踏み込んだ改革に向けた議論を進めてほしいくらいです。
同時に、規制緩和と法人税率軽減(引き替えに所得税率や消費税率アップ)による国内でのビジネス機会の創出とそれによる労働ニーズの拡大、定年年齢の規制撤廃も必須です。
以前にも書きましたが、「健康な人はいつまでも生き生きと働くことができ、様々な理由で働けなくなった場合は生活の保障が確保されている社会」が将来の日本の理想像だと考えています。
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