ツイートする

『日本の人事部』HRクラブ 開催レポート

【第20回テーマ】

社員の「キャリア開発」のために人材育成部門として何をすべきか?
~博報堂のミドル向け「世代別キャリア開発支援プログラム」を事例に~

2012年11月22日(木)に、第20回『日本の人事部』HRクラブを開催いたしました。 今回のゲストは、株式会社博報堂 人材開発戦略室(HAKUHODO UNIV.)キャリア開発部部長 佐藤祐之氏と、同マネジメントプランニングディレクター/臨床心理士の田村寿浩氏。前半の講演では、同社の「世代別キャリア開発支援プログラム」の導入の経緯や、実際の取り組み状況についてご説明いただきました。後半は参加者からの質問コーナーのほか、数名ずつのグループに分かれたディスカッションを実施。今回も、活発な意見交換が行われました。本レポートでは、当日の模様をダイジェスト形式でご紹介いたします。

HRクラブ PhotoHRクラブ PhotoHRクラブ Photo


【第20回 開催概要】

■ テーマ
社員の「キャリア開発」のために人材育成部門として何をすべきか? ~博報堂のミドル向け「世代別キャリア開発支援プログラム」を事例に~
■ 開催日時
2012年11月22日(木) 18:30~20:30
■ ゲストスピーカー
株式会社博報堂 人材開発戦略室(HAKUHODO UNIV.)キャリア開発部部長 佐藤祐之氏
同マネジメントプランニングディレクター/臨床心理士 田村寿浩氏

<佐藤祐之氏(さとう・ゆうし) プロフィール>
1985年入社。営業部門を経て、2004年に人事局人材開発部に異動。『HAKUHODO UNIV.』の設立準備業務に携わる。2005年。人材開発戦略室の設立とともに同室に異動、「HAKUHODO UNIV.」において主に若手層の能力開発施策の企画・運営業務を担当。2008年から同室キャリ ア開発部に所属、職員のキャリア自律支援業務を担当。2011年同部部長。GCDF-Japan キャリアカウンセラー。

<田村寿浩氏(たむら・としひろ) プロフィール>
1992年入社。営業部門を経て、2002年よりナレッジ開発部門へ異動。研究職として、生活者心理の調査技法開発や、ワークショップを中心とした共創ナ レッジの開発を担当。平行してコンサルティング局に所属し、ファシリテーターとして、得意先企業の事業開発、インナーを含むブランディング業務に従事。 2009年から現職にて、社員の自律的キャリア形成支援の施策開発・運営と研修ファシリテーションを主務としている。

クリエイティブな人材の育成を目的とする「HAKUHODO UNIV.」

講演は、「HAKUHODO UNIV.」がスタートした経緯の説明から始まりました。広告業界を取り巻く環境は、デジタル化やネットの普及などの影響によって、大きく変化。「今後は、会社全体としてクリエイティブになっていかなければならない」との経営方針が当時の社長から示され、クリエイティブな人材を育成していくことを目的として、2005年4月に企業内大学「HAKUHODO UNIV.」を設立したそうです。運営組織は「人材開発戦略室」で、現在の学長は同社代表取締役社長の戸田裕一氏。独立した部門として、人材開発を行っていると言います。

「HAKUHODO UNIV.」では“構想力を持った人間を作っていく”ことを目標に掲げているそうです。そのためには、(1)発見(課題を見つける、アイデアを生み出す力を伸ばす)、(2)設計(発見した課題を解決する仕組みを考える)、(3)共創(チームとして仕事をしていく)、(4)実現(世の中や得意先、自社がすべてハッピーになるような仕事をする)という四つの要素が必要とのこと。変化を恐れず、状況を変えていくマインドが必要だと言います。

HRクラブ Photo そういった人材を育成していくためには、人材育成体系が重要です。同社では、20代は「基礎を学ぶ時期」であるとして、現場でのOJTを重視。30代からは「プロフェッショナルとして自分の力をどう確立していくか」をテーマとし、社員が挑戦していく意識を形成するための支援を行っています。“育てあう風土を耕し続ける人材育成の運動体づくり”が運営の原則にあると言います。

このような思いの下、人材は「資源」ではなく、「価値の高い資産」であるという考えから、人材開発戦略室の中に「キャリア開発部」を設立。社員自らがスキルとコンピテンシーを吟味しながら成長し、会社に貢献していく「自律性」を促すために、「キャリアデザインプログラム」を実施しているそうです。

具体的には、「意識啓発と気づきの機会の提供」「節目における選択の仕組み」「継続的な支援インフラの整備」を目的として、「多段階キャリア選択制度」「世代別キャリア開発支援プログラム」「キャリアウェブマガジン」「個別キャリア相談」「階層別研修」などを行っています。

博報堂オリジナルの「世代別キャリア開発支援プログラム」とは

講演では、この中から「世代別キャリア開発支援プログラム」について詳しく解説。世代ごとのキャリア自律が極めて重要だとの考えから、20歳代を対象とした「多段階キャリア選択制度」以外に、「32歳」「42歳」「54歳」を節目とし、その年齢になった社員のキャリア開発支援を行っているそうです。「32歳」は「プロフェッショナルとしての勝負能力の確立に向け、チャレンジする意識形成のため」、「42歳」は「個人の働きがいと強み(専門性)を活かしたキャリア選択機会、その意志決定のため」、「54歳」は「65歳雇用延長に向け、ワークライフに関する当面のゴール設定のため」とのことでした。

なぜ、30台以降のキャリア研修が必要なのかと言うと、広告業も市場・競争環境に変化があり、従来のキャリアモデルが通用しないため、30~40代の社員には、自律的なキャリア形成の支援が急務であると判断したからだそうです。

HRクラブ Photoこのプログラムは同社のオリジナルですが、同じ人は一人としていないという社風があり、ある意味「自意識」の高い社員が多いことなどから、個の特性、尊厳、物語が十分に反映できることを目的として開発したと言います。

例えば、32歳を対象としたプログラムでは、ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツ社が実践している「シリアスプレイ」を活用。投影道具としてレゴブロックを用いて内省することで、自分自身の譲れない思いを見定め、プロとして成し遂げたいと思う仕事を具体的に宣言、その仕事を成し遂げるための具体的なアクションプランを描いていきます。

42歳を対象としたプログラムは、これまでのキャリアを振り返り、理想と現実に納得感を得ながら、多様なキャリアの可能性に気づき、チャレンジしていくという、前向きな行動を促すために実施。具体的には、ワークショップで、自分がやりたい、できそうだと思うことを複数あげていき、それを基に未来の年表を作成。自分の身近な人に向けて決意表明の手紙を書き、実際に投函するそうです。

こういった研修を経験することで、参加者は、改めて自分自身を見つめ直すことができるとのこと。プログラムを経験した参加者からは「思わぬ自分の姿が見えた」「明日への希望がわいてきた」「いい仲間ができた」などの声が聞かれるそうです。

スピーカー両氏は「イノベーションは、個人の自己変革から」と考えていると言います。個人が自律的に自分のキャリアを考え、変革の種を手にすると、主体的に会社に働きかけるようになり、そこからイノベーションが生まれると言うのです。そのためにも、社員の自律的キャリア形成支援が必要であり、支援する側としては「全人的な個人をしっかりと見ていくこと」「個人の思いを企業活動の中にしっかりと結びつけること」が重要であるとの言葉で、講演は締めくくられました。

この後は、数組のグループに分かれ、ディスカッションを実施。短時間での開催となりましたが、情報やノウハウの共有が行われました。今回も幅広い業種、キャリアの方々が参加されましたが、他の企業の人事担当者の方と、悩みや課題、そのための対策などをシェアできたことは、大きなプラスとなったようです。皆さん、満足げな表情で会場を後にされていました。

【参加者の声】

≪講演の感想≫

  • とても丁寧に説明してくださり、感謝しています。お話をうかがいながら、アセスメントのあり方などを考えていました。(中外製薬株式会社/山本秀一様)
  • 自我的キャリア形成は、まさに弊社でも課題なのでテーマのフィット感が高かったです。(情報サービス・インターネット関連/人材開発担当)
  • 自社開発ということで、大変興味深くお話を聞くことができました。また、実際のプログラムの写真を拝見することができたので、イメージがわきました。博報堂さんの考え方、思いが大変よく伝わってきました。(旅行・ホテル/人材開発・キャリアデザイン担当)
  • 弊社の現状とはあまりに違うので、すぐにはできませんが、一つの方向性として大変勉強になりました。(コンサルタント・シンクタンク/人材開発担当)
  • 会社の規模が違うので100%導入できないかもしれませんが、目指す形として、とても参考になるプログラムでした。できるだけ適用していきたいと思います。(商社/人事企画、採用、人材開発担当)
  • オリジナルなものを創ろうとする強い意志を感じられるプログラムで、大変勉強になりました。(HRビジネス/人材開発・キャリアデザイン担当)

≪ディスカッションの感想≫

  • キャリア開発は個人の価値観や信条にも関わる部分なので、人事としてどこまで関与すべきか迷っていましたが、40代になってからでは遅く、基盤が大切だと再認識できました。(水ing株式会社/草薙義弘様)
  • 大変参考になりました。自律キャリアは重要だと感じました。(中外製薬株式会社/尾畠寛之様)
  • 他社の状況を聞くことができて、とても良かった。会社が異なっても、同じような課題があることを知ることができました。(商社/人事企画、採用、人材開発担当)
  • 非常に有意義でしたが、もう少し時間が欲しかった。(マスコミ関連/人事企画・制度構築、人材開発・キャリアデザイン担当)

【第21回『日本の人事部』HRクラブ 開催のご案内】

第21回は、2013年1月25日(金)18:30から、ゲストにサッポロビール株式会社 人事総務部 人事グループリーダー兼ダイバーシティ推進グループリーダー 福原 真弓氏 をお迎えして開催する予定です。テーマは『個々の強みを最大限に活かし、社員誰もがいきいきと働ける職場へ ~サッポロビール人事部の「社員と対話し、社員同士の対話を促す」取り組みとは~』。参加ご希望の方は、下記から開催概要をご確認の上、お申込みください。皆さまのご参加をお待ちしております!