【第13回テーマ】
アステラスにおけるグローバル人材育成施策について
【第13回テーマ】
アステラスにおけるグローバル人材育成施策について
2011年9月16日(金)に、第13回『日本の人事部』HRクラブを開催いたしました。
今回のゲストは、アステラス総合教育研究所株式会社 代表取締役社長の阪本秀造氏。第1部の講演では、アステラス製薬のグローバル人材育成に関する取り組みについて、人材育成体系や施策などの面から解説していただきました。続く第2部では、阪本氏と参加者によるディスカッションを実施。今回も活発な議論、意見交換が行われ、大変充実した勉強会となりました。
本レポートでは、当日の「HRクラブ」の模様をダイジェスト形式でご紹介いたします。
【第13回 開催概要】
- ■ テーマ
- アステラスにおけるグローバル人材育成施策について
- ■ 開催日時
- 2011年9月16日(金) 18:30~20:30
- ■ ゲストスピーカー
- アステラス総合教育研究所株式会社 代表取締役社長
阪本秀造氏
<阪本秀造氏 プロフィール>(さかもと しゅうぞう)1980年旧山之内製薬(現アステラス製薬)入社後、6年間営業一線経験後、研究開発部門にて約3年間中期計画(要員、予算)を担当し、その後人事部門において組織・制度を6年間、評価・異動を5年間担当し、2001年より人材開発部門にて全社研修を担当(主に階層別、国際化(語学))、2005年合併によるアステラス発足と同時に同社。2009年から現職。
※アステラス総合教育研究所株式会社は、アステラス製薬グループの人材育成を担うグループ会社です。
グローバル企業として発展していくための「人材育成」
講演ではまず、アステラス製薬の概要から説明していただきました。2005年4月に、山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して誕生した同社。旧社名を残さず、「アステラス」という社名とした時点で、グローバル製薬企業として発展していくためのスタートラインに立ちました。その経営理念は、「先端・信頼の医薬で世界の人々の健康に貢献」を実現するというもの。2006年には、中期目標として「Vision2015」を策定。2015年に実現を目指す企業像とそのための指針・戦略を定め、急激な環境変化に対応するために、グローバル化を加速させているところです。
同社が目指すビジネスモデルは、「グローバル・カテゴリー・リーダー」。治療ニーズがありながら十分に満たされていない分野に挑戦し、同社の持てる強みをさらに強化し、フォーカスしたカテゴ リーで付加価値の高い製品を提供し、そのカテゴリーでのリーダーとしての存在を確立するものです。2015年には少なくとも三つ以上の専門領域で強みを発揮できるであろう、と阪本氏はいいます。
その原動力となる人材の育成は、当然ながら重要課題の一つ。同社では、「高い成果を発揮し続ける能力・意欲のある人材に最高水準の能力開発支援を行う」「自己責任を基本とする各人の意思・適正に応じたキャリア形成機会を提供する」という人事ポリシーと、「人材成長の機会提供を含む全ての従業員へ人材成長を支援するための最適なプログラム、教育環境を提供することにより、組織目標の実現に貢献する」「『アステラスにいると成長できる』を実感できるプログラムを提供する」という人材開発ポリシーを具現化するため、アステラス ビジネス スクールをスタート。従来の階層別が中心だった研修を、メリハリのある選択型研修へと変えていきました。
「グローバルリーダー」をどのように定義し、いかに育成していくのか
現在、同社では「Vision2015」を実現するために、「グローバル化対応能力の拡大」「リーダーシップの強化」を大きな課題として掲げているそうです。
また、現在は日本(アジアを含む)、北米、欧州の各拠点で独自の人材育成を行っていますが、グローバルリーダーの育成については、最終的には拠点にかかわらず、内容、人選、期間、開催場所などを統合した共通の研修プログラムを企画・実施していくとのこと。そのために、さまざまな施策を講じているそうです。
それらの施策と合わせながら、やはり日本では「英語によるコミュニケーション能力の向上」が重要課題だといいます。グローバルビジネスにおいて「積極性」と「発信力」を発揮できること、また、「異文化理解」とともにその「対応力」を身につけること、また、「異文化コミュニケーション」に自信をつけることが重要だそうです。
それらを前提とした上で、同社のグローバルリーダーに求められるのは、「変革を牽引する人間力」と「経営知識」。講演の最後は、それらを実現するために行っているプログラムについて、詳しく解説していただきました。
以上で、1時間におよぶ講演は終了。同社の人材育成に関する考え方や具体的な施策について、大変わかりやすく、体系的にお話しいただき、参加された方々も多くの情報やノウハウを得ることができたようでした。
参加者は「グローバル人材育成」をどう考えているのか
続く第2部では、「HRクラブ」事務局がファシリテーターとなり、阪本氏と参加者によるディスカッションを実施しました。これまでの「HRクラブ」では、複数のグループに分かれてディスカッションを行ってきましたが、今回は初の試みとして、参加者全員でのディスカッションを実施。大変活発な意見交換が行われました。
(以下、ディスカッションの中での発言から一部抜粋)
「グローバル人材の育成に関しては、まず、企業としてのグローバル展開の方針をきちんと定義することが重要だ。『どの国で、どの商品を、どのくらい販売するのか』といったことを、しっかりと決めなければならない。その上で、必要な人材をどうすればいいのかを考えるべきだ」
「海外展開において、どの人材を海外に派遣するかというのは大きな問題だ。部長クラスなど、企業の経営を担うキーマンがどんどん出ていけると良いのだが、そうすると国内の業務への影響などが懸念される。結局は、国内で人材が育っていないということであり、グローバル人材の育成は急務だと思う」
「優秀な人材でも、いざ海外に赴任するとその力を発揮できず、心が折れてしまうことがよくある。英語力、ビジネス能力も大事だが、いい意味で自己主張する能力も重要だろう。まずは出張ベースで、海外で仕事をしてもらい、その状況を確認したりするといいだろう。また、本人だけでなく、一緒に海外に行くことになる、家族のメンタル面に関しても、気を配る必要があるだろう」
以上で、2時間に渡る「HRクラブ」は終了。少人数による、たいへん密度の濃い勉強会となり、参加された方々の満足度は大変高かったようです。今後も素晴らしい学びの場をご提供できるよう、事務局一同努力して参りますので、今後の「HRクラブ」にどうぞご期待ください。
【参加者の声】
≪講演の感想≫
- 基本的な質問にも本音でお答えいただき、ありがとうございました。(株式会社SBI証券/金井 昌樹様)
- あるべき姿と自社の現状の差について、大変よく理解できました。(医薬品/人事担当)
≪ディスカッションの感想≫
- グローバル人材育成について議論でき、大変参考になりました。(花王株式会社/小林 功様)
- 「グローバル」と一言ではくくれないほど多様な意見が聴けたので、大変満足しています(医薬品/人材育成担当)