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「エンゲージメント」の先にある「エンジョイメント」が、会社を現場から変える 若手社員の価値・夢中・喜びを育む対話とは

注目の記事研修・人材育成[ PR ]

人材の流動化が進み、採用難易度が高まる中、多くの企業が「社員の定着」と「自律的な成長」という課題に直面しています。制度を整え、エンゲージメントサーベイを実施しても、「数値は悪くないのに、なぜか職場に元気がない…」。このような違和感を持たれたことはないでしょうか。なぜ、現場の閉塞感を解消できないのでしょうか。ニコトモ株式会社 代表取締役社長の山下浩史さんは、著書『こうして私たちは現場から会社を変えた』(マネジメント社)で、社員が仕事に意味を見いだし、没頭する状態である「エンジョイメント」を提唱しています。管理型マネジメントの限界を乗り越え、社員が自らの意志で動き出す組織をどうつくるのかをうかがいました。

山下 浩史さん
山下 浩史さん
ニコトモ株式会社 代表取締役社長

リクルート、マツダなどで人材開発や組織変革の最前線に携わり、2021年にニコトモ株式会社を設立。経営と現場をつなぎ、未来と現実をつなぐ「戦略人事」のパートナーとして、のべ3万5000人を超える社員と対話を重ねる。人の内発的動機や感情の動きを重視し、組織が「人の成長」を軸に進化する仕組みづくりを支援している。著書に『こうして私たちは現場から会社を変えた』(マネジメント社)がある。

「エンゲージメント」の誤解と、「エンジョイメント」の必要性

これからの組織に必要な概念として「エンジョイメント」を提唱されていますが、その意味や、「エンゲージメント」との違いについてお聞かせください。

「エンゲージメント」は本来、結びつきや信頼関係を意味する非常に大切な概念です。しかし、多くの企業の現場を見て回る中で、この言葉が誤解されたまま定着してしまっているのではないかと危惧しました。経営や人事部門の方々が、エンゲージメントを「管理すべき指標」や「高めるべき数値目標」として扱ってしまっているケースが散見されるのです。現場の社員からすると、「会社への忠誠心を測られている」「もっと会社に貢献しろと言われている」と感じられ、心理的な負担になっていることもあります。

私がリクルートで人材開発トレーナー、マツダで人事として働き、独立後に多くの企業を支援する中で痛感したのは、制度や仕組みを整え、エンゲージメントサーベイの数値を追うだけでは、社員が前向きにいきいきと働けるようになるわけではない、ということでした。サーベイの数値は高いのに、現場にはいつも「やらされ感」や疲弊感が漂っている。そんな職場を何度も目にしてきました。

人が本当に力を発揮するのは、組織への貢献に対する義務感で動いているときよりも、仕事そのものに意義を感じ、没頭し、「自分はこの仕事に向き合えている」と実感できているときです。

エンジョイメントは、「社員一人ひとりが仕事をおもしろいと感じて働くこと」を意味します。社員と仕事との関係に注目している点ではワーク・エンゲージメントと共通していますが、エンジョイメントは、「おもしろいと感じる」個人の内面を重視します。具体的には、次の3点について満足感を得ている状況です。

  • 【価値】仕事に関わる自分自身に「存在意義」を感じている
  • 【夢中】本気で仕事を楽しみ、没頭している
  • 【喜び】仕事を通じて、深い喜びや満足感が得られている

この三つがそろったとき、仕事は「やらされごと」ではなく、自分の意志で引き受けたものに変わります。会社のために頑張らせるのではなく、社員自身が「この仕事に出会えてよかった」「この仕事をしている自分が好きだ」と本心から思える状態をつくることが、これからの人づくりや組織づくりの本質だと考えています。

若手社員の価値・夢中・喜びを育むために、管理職にはどういった姿勢が求められますか。

「この仕事が、部下や後輩にとってどんな意味を持つのか」に関心を向けることが第一歩です。人は、自分にとって意味があると感じられないと、本気になれません。管理職や上司の役割は、仕事の意味を与えることではなく、部下自身が意味を見いだせるように、背中を押すことです。

具体的には、一方的に指示を出したり、改善点を伝えたりするのではなく、「この仕事をどんな気持ちで受け止めている?」といった問いを投げかけてみてください。対話を通じて、部下が自分の存在意義や仕事とのつながりを言葉にできたとき、「価値」が芽吹きます。また、細かく管理するのではなく、選択肢や裁量を渡すことも重要です。どのように進めるかを自分で考え、工夫できる余地があることで、仕事が次第に「夢中」になれるものに変わります。

そして、「喜び」は結果だけを評価していても育ちません。どのように挑戦したのか、工夫した点はどこか、何を学んだのか――。プロセスに目を向け、言葉にしてフィードバックすることで、部下は仕事を通じた達成感や成長を実感できます。

このように、エンジョイメントを育むために特別な制度は必要ありません。問いかけや対話を積み重ねることが大切です。

成長を阻む「快適空間」と、人を育てる「挑戦空間」

エンジョイメントを持った若手社員のさらなる成長を促すためには、何が必要でしょうか。

人が成長するためには、今できていることを繰り返す「快適空間」から一歩外に出て、少し背伸びが必要な「挑戦空間」に身を置くことが欠かせません。

快適空間とは、慣れた仕事を、慣れたやり方で、失敗する不安なくこなせる状態です。安心感はありますが、そこにとどまり続けている限り、新しい学びや成長は生まれにくい。一方で挑戦空間とは、「できるかどうかは分からないが、やってみたい」「少し不安だが、挑んでみる価値がある」と感じる領域です。新しい役割を任される、これまでとは違う方法を試す、自分なりの判断で進める。こうした場面に身を置くことで、人は試行錯誤を重ね、成長していきます。

ここで重要なのは、挑戦空間が、本人にとって意味が感じられるものでなければならないこと。意味を感じられず、高負荷でしかない挑戦は、成長ではなく「無理」や「我慢」になり、最悪の場合は「混乱空間」に陥ってしまいます。

部下が安心して「挑戦空間」に踏み出すために、上司や組織はどのように支援すべきでしょうか。

写真:山下 浩史さん(ニコトモ株式会社 代表取締役社長)

三つのポイントを挙げます。一つ目は、失敗が学びとして扱われる環境をつくること。結果だけで評価される職場では、人は安全な選択しかしなくなります。「失敗しても大丈夫だ」と口先だけで伝えるのではなく、挑戦のプロセスや工夫、そこから得た学びに光を当てることを通して、失敗を「避けるもの」から「価値ある経験」へと変える文化が必要です。

二つ目は、挑戦の難易度を本人の状態に合わせて調整すること。急に大きな責任を背負わせるのではなく、少しだけ背伸びすれば届く課題を渡せば、挑戦は不安ではなく、前向きな緊張感として受け止められます。

三つ目は、挑戦中に「対話の場」を持ち続けること。挑戦を任されたあとに放置されると、社員は不安や孤立を感じてしまいます。定期的に振り返り、「何がうまくいっているか」「どこで悩んでいるか」を言葉にできる場があることで、社員は安心して挑戦に向き合い続けることができます。

挑戦空間とは、決して厳しい環境や我慢を強いる場ではありません。意味があり、支えがあり、学びとして扱われる環境だからこそ、安心してその中で成長し続けることができます。上司や組織に求められている役割は、快適空間から無理に引きずり出すのではなく、「挑戦したい」と思える土壌を整えることです。

若手の自発性を引き出す「任せ方」の6ステップ

若手社員を育成するために、仕事の任せ方に悩む管理職は少なくありません。若手に仕事を任せるときのポイントをお聞かせください。

若手の成長スピードを左右する最大の要因は、「どれだけ仕事を任せられるか」ではなく、「どう任せるか」にあります。「やってみて」と丸投げするだけでは、若手は不安になり、疲弊してしまう。一方で、細かく管理しすぎると「指示待ち」になり、自発性が育ちません。

私は、若手の自発性を引き出し、早期に戦力化するためには、次の六つのステップで仕事を任せることが有効だと考えています。

  • ステップ1:【課題・目標】を明確にする
  • ステップ2:仕事を進める上での【条件】を整理する
  • ステップ3:【なぜあなたに任せるのか】を伝える
  • ステップ4:【相手の状況】を見て、タイミングを見極める
  • ステップ5:こちらの【伝える姿勢】をはっきりさせる
  • ステップ6:最後に【意味や価値】に重きを込めて伝える

この中で、特に成長スピードに大きな差が出るのが、ステップ3と4、そして6です。

まずはステップ3の「なぜ、あなたに任せるのか」を伝えること。誰に任せるかは考えても、その理由を言葉にして伝えている職場はあまり多くはありません。若手が本気で動くのは、「信頼されている」「見てもらえている」と感じたときです。「あなたのここを見ている、だからこの仕事をお願いしたい」というメッセージを伝えると、仕事は単なる作業から成長の舞台へと変わります。

次に、ステップ4の「相手の状況を見て、タイミングを見極める」。同じ仕事でも、任せるタイミングを間違えると、成長ではなく負荷になってしまいます。業務が立て込んでいないか、心身の余裕はあるか。若手の現状をよく見極め、「少し背伸びすれば届く」ラインの役割を任せることが重要です。

そして、ステップ6の「意味や価値に重きを込めて伝える」こと。任された業務に本気で取り組むかどうかは、最後にどんな言葉をかけられたかにかかっています。「最終的な判断は任せるが、考える過程には伴走する」「君ならできると信じている」。そうした言葉を添えて送り出せば、若手は仕事を「やらされるもの」ではなく、「自分で引き受けたもの」として受け止め、自発的に動くようになります。

任せるという行為の本質は、業務を振ることではありません。若手の自発性を引き出し、成長の舞台を用意することなのです。

「ジョブクラフティング」で仕事を自分事化する

著書では、与えられた仕事を自分事として捉え直す「ジョブクラフティング」の重要性も説いています。上司はジョブクラフティングをどのように支援すればよいでしょうか。

著書:こうして私たちは現場から会社を変えた

若手が仕事を自分事として捉えられるかどうかは、「その仕事をどう意味づけられるか」で大きく変わります。本人の内側にある「強み・価値観」と、会社の業務をつなぎ直すのが、ジョブクラフティングという考え方です。上司の役割は、部下に好きなように仕事を変えさせることではなく、仕事と、本人の強み・価値観との「接点」を一緒に見つけることです。

具体的には、まずその人が日々どんな業務を担っているのかを分解し、どの仕事が得意で、やりがいや手応えを感じているかを言葉にします。次に、業務の先にいる受け手を想像させます。「この仕事は、誰のどんな困りごとを解決しているのか」を問い直すことで、仕事は単なる作業から価値提供へと意味づけが変わります。

そして、「小さな工夫や改善を『やってもいい』と許可すること」が非常に重要です。やり方をすべて決めてしまうと、仕事は上司のものになってしまう。「ここは自分なりに工夫していいよ」と伝えられると、社員は仕事を「引き受けたもの」として捉え始めます。

ここで大切なのは、上司が「もっと考えろ」と言わないことです。考える力は、指示ではなく問いかけによって習慣化されます。

「この仕事は誰の役に立っていると思う?」「他にやり方があるとしたら、どんな選択肢がある?」「今より少し良くするとしたら、何ができそう?」。こうした問いかけを日常の会話や1on1の中で繰り返していくことで、社員は「考えてもいい」「工夫してもいい」と感じられるようになります。

そして、部下が自分なりに考えて行動したことに対しては、成否にかかわらず、まず承認する。ジョブクラフティングとは、社員を自由にすることではなく、仕事と社員との関係性を編み直すこと。その関係性がつながったとき、若手は指示を待つ存在から、自ら考え、動く存在へと変わっていくのです。

「WILL・CAN・VALUE」の軸で成長を見極める

成長のスピードには個人差があると思いますが、成長が速い社員に見られる共通点はありますか。

いわゆる「伸びる社員」には共通点があります。それは、自分の中にWILL・CAN・VALUEという3本の軸を持っていることです。

WILLは意志です。伸びる社員は、自分が何をやりたいのか、なぜその仕事に向き合っているのかを、自分の言葉で語ることができます。CANは能力を意味しますが、単なるスキルではありません。どんなときに力を発揮できるのか、どういう経験を積むと成長するかといったことを自分なりに考え、試しながら身につけていく力だと捉えています。弱みを隠さず、「どう工夫するか、誰と補い合うべきか」を考えられる力も含みます。

VALUEは「何を大切にして働くか」という価値観です。たとえば「お客さんの反応を見る瞬間が一番うれしい」といった言葉の中に表れます。仕事を、自分にとって意味があるかどうかで捉えられている状態を指します。

目に見える数字やスキルだけでなく、行動を生み出している意志や能力、価値観といった目に見えないものが成長の質を左右します。上司はこれらを見抜こうとするのではなく、対話を通じて「引き出す」姿勢が必要です。「今回のやり方を選んだ理由は何だった?」「どんな点を一番大事にして取り組んだ?」といった問いを投げかけることで、若手の行動の背景にある考えや価値観が言葉になり、軸が明確になっていくのです。

読者である人事担当者や経営者の方々へメッセージをお願いします。

制度設計や現場との調整など、多くの役割を背負いながら人材育成に向き合っていると、「制度は整えているのに現場で機能しない」と悩まれることも多いと思います。

お伝えしたいのは、「育成は制度だけでは完結しない」ということ。制度はあくまできっかけであって、成長するかどうかは、日々の経験と現場での対話の中で決まります。

だからこそ人事には、評価や研修を管理する役割だけでなく、現場の“考える対話”を支える視点が求められます。うまくいっていない現場を責めるのではなく、どこで止まっているのか、上司が一人で抱え込んでいないかを問い、現場と一緒に考えていく伴走者であってほしい。

多くの管理職は、若手が「指示待ちに見える」「失敗を怖がって動かない」と感じているかもしれません。ただ、若手が動けないとき、多くの場合は能力の問題ではなく、考える経験が次の行動につながる形で整理されていないだけです。

大切なのは、成功させることでも、失敗させないことでもありません。一つひとつの経験を、「どうだった?」「次に一つ変えるなら?」と一緒に振り返ることです。完璧な答えを返す必要はありません。「一緒に考えよう」という姿勢が伝わるだけで、若手は安心して挑戦できるようになります。

育成とは考える舞台を用意することです。今日の一度の問いかけが、明日の行動を変え、やがてその人自身の成長につながっていきます。どうか一人で抱え込まず、若手と一緒に試行錯誤を続けてください。一人ひとりが仕事に意味を感じ、夢中になり、喜びを実感しながら働く「エンジョイメント」の状態こそが、これからの企業と社会の持続性を支える、最も現実的で強い土台になると信じています。

写真:山下 浩史さん(ニコトモ株式会社 代表取締役社長)
書籍:こうして私たちは現場から会社を変えた

マネジメント社
2026年1月26日発刊
山下浩史 著

書籍:こうして私たちは現場から会社を変えた

部下が動かないと悩む前に、まずこの一冊を
“やらされ感”を“やりたい”に変えた現場の物語

「何があれば、人はこの会社で踏ん張り続けられるのか」

「人が前向きに力を出し続けられる組織の“強さ”とは何か」

前向きな感情や関係性を育み、人が挑戦し、学びや工夫が生まれやすくなるエンジョイメントとは。

GAP・リクルート・マツダ
20年間、企業の最前線で「人づくり」「職場づくり」に尽力し続けた著者の、結論。

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会社概要

「現場から会社を変える」をコンセプトに、人材育成・組織開発・人事制度構築を支援。
制度設計にとどまらず、対話と実践を通じて経営と現場をつなぎ、社員一人ひとりの価値
・夢中・喜び(エンジョイメント)を引き出すことで、自律的に成長する組織づくりを伴走型で支援している。製造業をはじめ、サービス業・IT企業など幅広い業種で導入実績を
有し、制度設計から運用定着まで踏み込んだ支援を強みとするとともに、管理職・次世代
リーダーが現場での対話を通じて人と組織を動かす力を高める育成支援にも注力している。

会社概要

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