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採用の見極めは、内定で終わっていません

面接で良かった人が、配属先でつまずいていく。原因は見極めの甘さではなく、観察する場所のズレにあります。

 

「あの方、面接のときは、どうだったんですか」

配属から三か月ほど経った頃、現場の課長から人事にこんな連絡が届くことがあります。
急ぎではないものの、声の奥に困惑があります。
聞けば、指示のあとで手が止まる、進め方が噛み合わない、悪い方ではないのだけれど。
という内容です。

面接の記録を開いてみます。
評価は高い。受け答えは明快で、志望動機は具体的。複数の面接官が、同じ判断を残しています。

それでも、連絡の向こうには困惑があります。
評価の高かった人が、配属先でつまずいている。
採用に関わった人事にとって、これほど落ち着かない照会はないのではないでしょうか。

見極めが、甘かったのでしょうか。

 

「面接では、あんなに良かったのに」

同じ経験は、珍しいものではありません。
パーソル総合研究所×CAMP「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」(2019年)では、入社後に何らかのイメージギャップを感じた新社会人は76.6%にのぼります。

中身の上位は、給料・報酬、昇進・昇格のスピード、仕事で与えられる裁量。
入社後のギャップは長らく、「聞いていた話と現実が違う」という情報の問題として語られてきました。
採用ミスマッチと呼ばれてきたものの大半は、こちらです。

だから対策も、情報の側に打たれてきました。
採用基準を明確にする。質問と評価の基準をそろえた面接に変える。仕事の実像を、厳しい面も先に見せる。
どれも正しい打ち手です。
情報のズレから来る採用ミスマッチは、この方向で確かに減らせます。
ここを疑う必要はありません。

それでも、残る一群があります。
情報は正しく伝わっていた。条件の行き違いもない。スキルも足りている。それなのに、配属先でつまずく。
冒頭の照会は、この一群から生まれます。
貴社の「面接では良かったのに」も、この一群だったのかもしれません。

聞いていた話と違ったのではありません。
聞いていた話のとおりの職場で、つまずいているのです。
離職防止の議論のなかで、この領域は手つかずのまま残っているのではないでしょうか。

 

見ている場所と、決まる場所が、ずれています

では、情報が合っているのに、なぜつまずくのでしょうか。

面接で観察できるものを、思い出してみてください。
語られる経験の中身。志望の言葉。問いへの受け答え。
面接は突き詰めれば、「何を答えるか」を観察する場です。
そして答えは、準備と場数、いまは生成AIの手も借りて、かつてなく磨けます。

一方、配属後の毎日は、別のもので決まります。
任された仕事に、どこから手を付けるか。決まったやり方と自分で選ぶやり方の、どちらで力が出るか。
つまり「どう動くか」。
本稿ではこれを、仕事におけるものの見方・考え方・行動のクセ——以下、思考・行動のクセと呼びます。

たとえば、決まった手順が示されると力を出せる人がいます。
やり方を自分で選べるほうが動ける人もいます。
全体をつかんでから入りたい人がいれば、目の前の一件から広げていく人もいます。
どちらが優れているという話ではありません。
ただ、任せ方との組み合わせが合わないと、能力があっても手が止まりがちです。

本人の「やりたい」と面接官の「向いている」は、どちらも本心の見立てです。
けれど「やりたい」と「そのやり方で力が出る」は別のものです。
意欲と適性の見立てに、クセの欄はまだありません。

人材の選考手法には、85年分の研究を束ねた検証があります(シュミットとハンター、1998年)。
19の手法が入社後の成績をどこまで予測できるかを調べたものです。
ただし、予測の的に据えられてきたのは、一貫して成績の高低でした。
冒頭の照会が伝えていたつまずきは、能力の高低ではなく、進め方の噛み合わなさでした。

入社後のつまずきの多くは、見極めの失敗ではなく、観察する場所のズレから生まれます。
面接が観察しているのは答えの中身で、配属後を左右するのは進め方のクセ。
二つは同じ人の中の、別の場所にあるのです。

▲ 面接の光が当たる場所と、配属後を左右する場所。貴社の面接評価シートに、右側の欄はあるでしょうか——続きは、配属後の観察でしか見えません。

 

面接に嘘はない。映らない場所があるだけです

観察する場所がズレるのは、面接官の腕の問題ではありません。

思考・行動のクセは、場に応じて現れ方が変わります。
準備した答えを、評価する相手に向かって話す。面接とは、そういう場です。
面接に現れているその人は、選考という場でのその人です。
曖昧な指示と並行する仕事に囲まれた、職場でのその人ではありません。
しかも面接は、合否を握る側と握られる側という、対等ではない場です。
場に合わせて最良の姿を示すのは、偽りではなく、自然な振る舞いでしょう。

「面接では申し分なかった」という方のその後に、私は研修の現場で27年、繰り返し立ち会ってきました。
私の現場の印象では珍しくない場面を、一例として描いてみます。

面接で「計画を立てて進めるのが強みです」と語り、その言葉に嘘のなかった新人が、配属先で手を止めてしまう。
あとから、職場の言う「計画」と本人の思う「計画」が別ものだったと分かります。
片方は全体の段取り、片方は目の前の一件の手順を指していた。
言葉は同じでも、動き方は別です。この食い違いは、面接の問答には映りません。

もう一つ。
一度の説明に「分かりました」と即答できた人が、配属先では、実例を二、三回見てからのほうが確実に動ける、ということもあります。
周りには「飲み込みが遅い」と映りますが、本人はただ、納得の作り方が違うだけです。

一つ、範囲をはっきりさせておきます。
スキルの不足や、聞いていた条件との相違から来るつまずきは、この話の外側です。
そこには、定番の対策が効きます。
本稿は、情報も能力も足りているのに配属先でつまずく、その人たちだけを扱います。

 

見極めは、配属の日から始め直せます

では、人事は何を設計すればよいのでしょうか。

一つの方向は、選考をさらに磨くことです。
課題演習や職場見学のように、面接に職場を近づける工夫には意味があります。
ただ、選考が選考である以上、場の性質は変えられません。
面接で全部を見ようとする方向には、どこかで天井が来ます。

もう一つの方向があります。
見極めを、配属の日から始め直すことです。
選考で途切れた観察を、今度は職場という場で、やり直すのです。その役の担い手は、隣で仕事を任せる配属先の管理職です。
新人の思考・行動のクセが早く見えれば、任せ方はその場で調整できます。
つまずきが小さいうちに手を打てる、いちばん手前にある離職防止です。

自力でできる一歩があります。
直近の「面接では良かったのに」を一人思い浮かべて、「何が」できなかったかではなく、「どう」進めてつまずいたかを書き出してみてください。
手順を待っていたのか。全体を探していたのか。確かめずに進んだのか。
書き出せた分だけ、その方への任せ方は今日から変えられます。
ただ、「どう」の欄は、思いのほか埋まらないかもしれません。

そこに、壁があります。
書き出した中身は、書き出す人の目のクセを通ります。
何を、どの物差しで見ればよいのか。見えた結果を、どう任せ方に変換するのか。
ここを管理職の個人技に委ねると、部署ごとにばらつき、育成は運任せに戻りがちです。
離職防止を採用の入り口だけに求めているあいだ、この物差しは配られないままになりかねません。

私たちはこの部分を、「認識designコーチング(R)」という研修で扱っています。
国際的なアセスメントiWAM(R)(アイワム)で、新人がどんな状況で能力を発揮するのかを、職場という場のまま明確にし、その仕事に合わせて、認識と関わり方をデザインしていく研修です。
面接に映らなかったものは、配属後なら測れます。

離職防止は、採用が終わった日から、もう一度始められます。
次の配属で、誰が、誰の下に着くでしょうか。
その組み合わせを、観察の物差しを持って迎えるか、つまずいてから振り返るのか。
差は、そこからの数か月でつきます。
まずはお問い合わせください。

出典:パーソル総合研究所×CAMP「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」(2019年)/Frank L. Schmidt & John E. Hunter “The Validity and Utility of Selection Methods in Personnel Psychology”(Psychological Bulletin, 1998)

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このコラムを書いたプロフェッショナル

高村 幸治

高村 幸治
株式会社エナジーソース 代表取締役/モチベーションコンサルタント(プログラム開発責任者)/iWAM(R)プロフェッショナルズ認定 iWAM(R)マスタートレーナー(国内11名/2026年6月時点)

「動かす」より、「動きたくなる」を。大手企業を中心に育成に携わる。経営コンサルティング会社で10年の研鑽を経て2011年に独立。年間100社超に登壇し、10数社と長期契約、キャンセル待ちが続く―“また呼ばれる”ことが成果の証明です。

「動かす」より、「動きたくなる」を。大手企業を中心に育成に携わる。経営コンサルティング会社で10年の研鑽を経て2011年に独立。年間100社超に登壇し、10数社と長期契約、キャンセル待ちが続く―“また呼ばれる”ことが成果の証明です。

得意分野 モチベーション・組織活性化、リーダーシップ、マネジメント、チームビルディング、コミュニケーション
対応エリア 全国
所在地 港区

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