中堅社員の意識調査(成長実感編)
中堅社員が成長を実感するとき「仕事の完遂」が1位
累計13,000社420万人以上の組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社(所在地:東京都千代田区 代表取締役社長:眞﨑大輔)および「人と組織の未来創り🄬」に関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所🄬は、2024年12月に社会人5年目以上の役職がついていない中堅社員*1 800人に対し意識調査を行いました。本リリースでは、中堅社員の成長実感に関して調査・分析した結果を公表いたします。
*1 本レポートでは社会人5年目以降35歳未満の役職がついていない社員を指し、「ミドルキャリア」とも記載
〈背景〉
ミドルキャリアはライフステージの変化により、働き方や働く意味を再考する人が多い世代です。実際、厚生労働省の転職者実態調査*2によると、30歳前後の社員は転職者の割合が高くなっています。仕事に対する価値観や向き合い方が多様化する中、企業はミドルキャリアの“定着”と“活躍”に頭を悩ませています。しかし、今まで「中堅社員」としてひとくくりにされることの多かったミドルキャリアの働きがいや実態については、新入社員や管理職に比べて焦点があたりにくい状況にあり、活躍の鍵などは明らかになっていません。そこで本調査では、戦力としての活躍を期待されるミドルキャリアが、より働きがいを持って成長できる鍵はどこにあるのか調査しました。本レポートでは特に「ミドルキャリアの成長実感」にフォーカスしレポートしています。
*2 厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r02-gaikyo.pdf
調査結果の概要
● 約半数のミドルキャリアは、成長実感が「とてもよくある」「たまにある」と回答
● 成長を実感する場面、「仕事を完遂」「目標を達成」をしたときが上位に
● 難しい仕事の経験頻度が高いほど、成長実感が「とてもよくある」と回答した割合が高い
● 社会人8年目に『成長実感』『難しい仕事の経験頻度』のターニングポイントあり
● 自身の成長に役に立ったこと「職場の雰囲気・文化」「上司からのサポート」がトップ
〈考察〉中堅社員の成長実感を高める「ストレッチアサインメント」
調査結果の詳細
1.約半数のミドルキャリアは、成長実感が「とてもよくある」「たまにある」と回答
社会人5年目以上の役職がついていない中堅社員(以下、「ミドルキャリア」と記載)に対して、業務で成長を感じる機会があるかを質問しました。
結果、「とてもよくある」が9.6%、「たまにある」が39.4%、「どちらともいえない」が26.1%、「あまりない」が13.5%、「全くない」が11.4%となりました。約半数のミドルキャリアが、日頃、仕事において成長を実感していることがわかりました。
2.成長を実感する場面、「仕事を完遂」「目標を達成」をしたときが上位に
次に、成長を実感することが「とてもよくある」「たまにある」と回答したミドルキャリアに、どのようなときに成長を感じるか質問をしました。
結果、成長実感が湧く場面は「仕事を完遂したとき」が42.3%と最大の割合となりました。次に、「目標を達成したとき」が31.4%、「仕事のミスが減ってきたとき」が24.2%となりました。仕事をやり切った経験から成長を感じる傾向にあることがわかりました。
3.難しい仕事の経験頻度が高いほど、成長実感が「とてもよくある」と回答した割合が高い
「仕事を完遂」「目標を達成」したときに、成長を実感する傾向にあることがわかりましたが、仕事の難易度は、成長実感に関係しているのでしょうか。次に、難しい仕事の経験頻度別に、成長を感じる機会がどれほどあるかを比較しました。
結果、難しい仕事を経験する頻度が高い方が、成長を感じる機会が「とてもよくある」と回答した割合が高いことがわかりました。
また、難しい仕事の経験頻度が「全くない」と回答したミドルキャリアのうち、44.9%のミドルキャリアが成長を感じる機会が「全くない」と回答した結果も見逃せません。難しい仕事を経験する頻度は、成長実感と関係性があることが推察できます。
4.社会人8年目に『成長実感』『難しい仕事の経験頻度』のターニングポイントあり
ここからは、年次による『成長実感』と『難しい仕事の経験頻度』の実態を紹介します。
まずは、ミドルキャリアの『成長実感』を年次別に比較すると、「とてもよくある」「たまにある」と回答した割合は、社会人5年目では44.8%、社会人6年目は53.4%、社会人7年目は58.7%となり、社会人5年目から7年目までは増加する傾向にありました。
しかし、社会人8年目では「とてもよくある」「たまにある」と回答した割合は41.0%まで下がり、「あまりない」「全くない」と回答した割合が35.2%に増加する結果となりました。この結果から、社会人8年目にターニングポイントが潜んでいることが推察できるでしょう。その後、社会人9年目以降は、成長実感が「あまりない」「全くない」と感じる割合が25%前後を推移する傾向が見られました。
次に、ミドルキャリアの『難しい仕事の経験頻度』を年次別に比較すると、社会人7年目までは仕事が難しいと感じることが「とてもよくある」「たまにある」と回答した割合が4割程度で推移し、社会人8年目で28.6%へ下がりました。その後、社会人8年目を境にそれ以降、「全くない」と回答した割合が1割以上で推移しました。『難しい仕事の経験頻度』においても、社会人8年目にターニングポイントがあることが予想できます。
5.自身の成長に役に立ったこと「職場の雰囲気・文化」「上司からのサポート」がトップ
最後に、ミドルキャリアが自分の成長に役立ったと感じる会社の良いところがあるか、質問しました。
結果、「職場の雰囲気・文化」が29.1%と最も高くなりました。次に、「上司からのサポート」が20.4%、「配属先の仕事内容」が18.5%となりました。
まとめ
本調査より、ミドルキャリアの半数は成長実感があり、特に「仕事を完遂」した時や、「目標を達成」した時に、成長を感じる傾向にあることがわかりました。また、難しい仕事を経験する頻度も、成長実感と相関していることが明らかとなりました。
年次別に「成長実感」と「難しい仕事の経験頻度」を比較すると、社会人4年目から7年目までは「成長実感」する機会が高まり続けましたが、社会人8年目になると「成長実感」と「難しい仕事の経験頻度」が減少する結果となりました。ミドルキャリア時代の中でも、社会人8年目は1つのターニングポイントになっていることが示唆されます。
最後に、成長の役に立った会社の良いところでは、前年の結果*3と同様に、「職場の雰囲気・文化」が突出した結果となりました。「職場の雰囲気・文化」の具体的な内容については、次回のレポートで取り上げます。
*3 2023年 中堅社員の意識調査(効果的な成長支援の取り組み編)
【考察】中堅社員の成長実感を高める「ストレッチアサインメント」
本調査では、中堅社員のうち、成長を実感できている人とできていない人が半々であることがわかりました。また、「難しい仕事を経験する頻度」が「成長実感」と相関していることもわかり、ストレッチアサインメント(現在の本人の力量より難度の高い仕事を割り当てること)により、中堅社員の成長実感を高められることが示唆されました。
ストレッチアサインメントは、新人・若手社員に比べると中堅社員に対しては取り組まれていない実態があります。現場の管理職は、難度の高い仕事を任せた際のサポートにかかる時間や労力などから、中堅社員には、今任せている仕事を安定して遂行してもらいたいと考えてしまいがちです。また、中堅社員の中には、様々な業務経験を積んで一定の知識やスキルを持っているため、新たな挑戦を避ける人もいます。しかしこの状態が続くと、自身の成長を感じられないことでモチベーションが低下する可能性もあります。
企業には、まずストレッチアサインメントを担当する管理職に対して、中堅社員育成に対する重要性を伝え、ストレッチアサインメントの具体的な取り組みを考え、現場で実践してもらうことが求められます。本人の能力向上、成長実感の向上だけでなく、次世代リーダーの養成にもつなげることができますので、会社全体で取り組むとよいでしょう。
【中堅社員に対するストレッチアサインメントの方法】
(1)定期的に、担当業務と難度を洗い出し、ストレッチな仕事の割合を把握する
今、担当している業務と、本人にとっての難度を一覧化し、どの業務がストレッチな仕事にあたるかを確認してください。ストレッチな業務が全業務の2割程度あるとよいでしょう。
(2)本人のキャリア志向や会社として期待する状態を明確にする
中堅社員になると、自身の目指す方向性がより明確になることもあります。本人の目指す方向性や、会社として期待する状態を踏まえた業務アサインができるようにしましょう。
(3)ストレッチな業務を選定する
難しい仕事とはどういうことかを考えて業務を選定しましょう。
例えば
・今までやったことのない新しい業務を任せる
・やったことのある業務を応用してできる業務を任せる
・担当業務の延長にある業務を任せる
例)後輩指導、他部門連携、業務改善、イレギュラー対応など
・現在任せている業務における目標を引き上げる
例)目標数を上げる、工数を削減する、より上位目的を意識した目標に変更する
などがあります。
(4)ストレッチな業務を遂行するために必要なことを明確にする
業務遂行にあたり必要な知識・スキルを獲得する必要があれば明確にしてください。例えば、書籍やeラーニング、研修の受講、資格取得などがあります。
(5)ストレッチな業務を任せる際には、任せた意図を伝える
実際に業務を任せる際には、どのような成長を期待しているか、任せた意図が伝わるようにしてください。
(6)任せた後も業務完了までサポートを続ける
任せて終わりではなく、本人の状況に合わせたコミュニケーションをとり、サポートをしてください。
ALL DIFFERENT株式会社
事業開発推進本部 コンテンツマネジメント部 部長
河合 司真子(かわい・しまこ)
<調査概要>
- 調査対象者
社会人5 年目~11年目以上の管理職未満の就労者 - 調査時期
2024年12月24日~25日 - 調査方法
調査会社によるインターネット調査 - サンプル数
800人(社会人5年目107人、同6年目105人、同7年目104人、同8年目105人、同9年目103人、同10年目105人、同11年目以上171人) - 属性
(1)業種
農業,林業 7人(0.9%)
鉱業,採石業,砂利採取業 2人(0.3%)
建設業 37人(4.6%)
製造業 156人(19.5%)
電気,ガス,熱供給,水道業 9人(1.1%)
情報通信業 63人(7.9%)
運輸業,郵便業 37人(4.6%)
卸売業,小売業 58人(7.3%)
金融業,保険業 38人(4.8%)
不動産業,物品賃貸業 20人(2.5%)
学術研究,専門・技術サービス業 18人(2.3%)
宿泊業,飲食サービス業 8人(1.0%)
生活関連サービス業,娯楽業 17人(2.1%)
教育,学習支援業 32人(4.0%)
医療,福祉 146人(18.3%)
複合サービス事業 9人(1.1%)
サービス業,他に分類されないもの 45人(5.6%)
公務 66人(8.3%)
その他 32人(4.0%)
(2)企業規模
1-50名 129人(16.1%)
51-100名 100人(12.5%)
101-300名 142人(17.8%)
301-1,000名 120人(15.0%)
1,001-5,000名 121人(15.1%)
5,001名以上 131人(16.4%)
わからない 57人(7.1%)
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(ALL DIFFERENT株式会社 /3月11日発表・同社プレスリリースより転載)