無料会員登録

日本の人事部への登録は45秒で完了!
※登録内容はマイページで確認・変更できます。

※「@jinjibu.jp」からのメールが受信できるようにしてください。

既に会員の方はこちら

または各SNSで登録

日本の人事部があなたの許可無く投稿することはありません

既に会員の方は
こちらからログイン

ログイン

無料会員登録

不正な操作が行われました。
お手数ですが再度操作を行ってください。

会員登録完了・ログイン

ありがとうございます。会員登録が完了しました。
メールにてお送りしたパスワードでログインし、
引続きコンテンツをお楽しみください。

無料会員登録

不正な操作が行われました。
お手数ですが再度操作を行ってください。

会員登録完了・自動ログイン

会員登録とログインが完了しました。
引続きコンテンツをご利用ください。

マイページ

会員登録済み


選択したSNSアカウントは既に会員登録済みです。

AI時代、企業は「ホーム」になれるのか 越境学習が育む「教養」の価値と、企業がセーフティーネットになる未来

注目の記事研修・人材育成[ PR ]

上司に相談せずAIに聞き、同僚と深く関わらず摩擦を避ける。そんな職場で、「キャリア自律」の推進が、意図せず社員の孤独を深めつつあります。さらに、効率と即答を求めるAI時代がもたらした「待てない」社会病理が、組織から深い対話を奪っています。離職防止やエンゲージメント向上のための表面的な施策では、もはやこの根深い課題を解決することはできません。組織と個人のつながりが喪失する現代、企業は再び社員にとって安心できる「ホーム」となれるのか――。日本企業に越境学習を広めた株式会社ローンディールの創業者であり、現在は越境の社会実装に取り組む一般社団法人越境イニシアチブの原田未来さんと、3800人以上の生活困窮者支援に携わってきた認定NPO法人抱樸の奥田知志さんが、「越境」を通じた組織と個人の新たなつながり方を提示し、人事担当者が向き合うべき本質的な問いをひも解きます。

奥田 知志氏
奥田 知志氏
認定NPO法人抱樸 理事長

1990年、東八幡キリスト教会牧師として赴任。同時に、学生時代から始めていた「ホームレス支援」に、赴任地の北九州でも参加。事務局長などを経て、北九州ホームレス支援機構(現 抱樸)の理事長に就任。これまでに3800人以上のホームレスの人々の自立を支援。その他、共生地域創造財団代表理事、全国居住支援法人協議会共同代表、国の審議会等の役職も歴任。現在は北九州市において複合型施設「希望のまち」の設立に取り組む。

原田 未来氏
原田 未来氏
一般社団法人越境イニシアチブ 代表理事 /株式会社ローンディール 創業者

2015年に株式会社ローンディールを創業し、越境プラットフォームを構築。経団連スタートアップエコシステム変革タスクフォース、経済産業省の人材流動化促進政策等の委員を務める。2025年にローンディール代表を退任し、より広く「越境を社会に実装する」ために一般社団法人越境イニシアチブを設立。

越境学習の現在地――「外を見ると辞める」という誤解と、失われつつある「ホーム」の感覚

越境学習の導入を検討している企業から「社員が外部の世界を知ると退職してしまうのではないか」という声を耳にします。この懸念について、原田さんはどのようにお考えでしょうか。

原田:前提として、越境学習とは、自身が所属する組織(ホーム)から離れた環境(アウェイ)に出向き、多様な経験を通じて学びを得た後、再び元の組織(ホーム)に持ち帰るプロセスを指します。

ローンディールでは、大企業の社員がベンチャー企業やNPO法人へ一定期間「レンタル移籍」し、成長を促すプログラムを実施していますが、事業内容を人事担当者に説明すると、「外部の環境に魅力を感じて、組織に戻らなくなるのではないか」という心配の声が確かに聞かれます。このような不安は、過去に海外のMBAへ留学した社員が帰国後に退職したケースなどが影響していると考えられます。

ただ、過去10年間の実績を振り返ると、予想に反して退職に至るケースは極めて稀(まれ)です。プログラムを終えて帰任した後、1年以内に退職する社員の割合はおよそ3%に留まります。日本における年間離職率が約12%であることを踏まえると、退職率は全体平均の4分の1程度に抑えられている計算になります。

退職率が低い要因は何だとお考えでしょうか。

原田:外部の環境を経験することで、自身がいかに恵まれた環境で仕事に取り組めているかに気づいたことが大きな要因だと思います。また、社員を育てようと越境学習の機会を提供してくれた企業に対して、感謝の念を抱く傾向が見受けられます。外から客観的に見ることで、自社の存在意義や行っている事業が、社会でいかに必要な役割を担っているかを再認識する機会にもつながっているようです。隣の芝生は青く見えると言いますが、実際に行ってみるとそれほど青くなかったという気づきも含めて、人事担当者が抱く不安とは裏腹に、実際は多くの社員が所属組織に対するつながりや愛着を深めています。

ただ、ここへきて社員の意識に変化が生じているように感じます。具体的には、外の世界を見る前から、すでに自身の所属する企業を「ホーム」だと感じられない人が増えています。以前は社員の中に、企業に対する愛憎こもごものような感情がありました。「うちの会社はダメなんですよ」と不満を口にしていても、組織に対する一種の愛着やつながりが根底に存在していたのです。しかし現在は、本当に関係性がなく、完全に距離が空いてしまっている人が増えている。「ホーム」という心のよりどころとなる力が、企業において弱まっているのではないかと感じます。

原田 未来氏(一般社団法人越境イニシアチブ 代表理事 /株式会社ローンディール 創業者)

関係性が希薄化している要因は何でしょうか。

原田:リモートワークの普及に加え、業務上の疑問を上司や先輩ではなくAIに尋ねる環境が一般化したことが挙げられます。さらに、ハラスメントに対する警戒感から、人と人とが深くぶつかり合うコミュニケーションが避けられる傾向もあります。もめごとを起こさないよう、人間関係において表面的な対応に終始し、摩擦のない状況が生み出されているのです。特に、リアルなコミュニケーションにどっぷりとつかる経験を持たない若手層に、そのような傾向が顕著に表れています。

「キャリア自律」と「自己保存」のパラドックス

奥田さんは生活困窮者支援の現場から見て、企業と個人の距離が広がる現状をどのように感じていらっしゃいますか。

奥田:企業内の詳細な動向は分かりかねますが、社会全体として見ると、特に若い世代で「自己保存的」な傾向が強まっていると感じます。自身を守ることを最優先し、結果として孤立に向かってしまっている。他者との関わりは、自身の感情を乱したり、時間や金銭を奪ったりするリスクだと認識し、他者との関係を断ち切る選択をしてしまう状況にあります。しかし、このような選択は「いざという時に助けを求められる相手がいない」という意味で、極めてハイリスクです。「自分さえ良ければ」という発想は、社会において通用しません。

ここ30年ほどで、「他人に迷惑をかけてはいけない」という価値観が道徳のようになりました。しかし、人は何らかの形で助け合い、支え合って生きています。誰にも迷惑をかけずに生きていくことは不可能です。本来、社会には「分かち合うと豊かになる、増える」という信頼が存在しました。しかし、現代は心に余裕がなくなり、「分ければ自分の分が減るから人とは出会わない」という選択をしてしまう。すると、孤立は加速度的に進行していきます。経済協力開発機構(OECD)のデータによると、家族以外と日常的な関わりを持たない孤立状態にある人の割合は、アメリカが約3%であるのに対し、日本は15%を超えていて、実に5倍もの開きがあります。

企業に置き換えると、近年推進されている「キャリア自律」が、意図せず個人の孤立を深めている可能性も考えられますね。

原田:自律的に思考、行動してキャリアを築くという方針自体は間違っていませんし、推進すべきことです。しかし、そのような方針は、社員に「もう面倒を見ないから、各自で頑張れ」という冷たい宣言として受け取られてしまうかもしれません。社員が企業の自己保存的な雰囲気を敏感に察知し、結果として組織から距離を置く要因になっているとも考えられます。

奥田:生活困窮者の支援としての「自立」には、二つの側面があります。一つは、スキルを身につけて自身の力で生きていく能力。もう一つは、多様な人々と出会い、適切な援助を受け入れる力、すなわち「受援力」です。一人で全てをこなすだけでなく、多くの人に支援してもらい、同時に他者を支援できる関係性を構築してこそ、真の「自立」や「自律」と言えると思います。

自立しようとして、孤立につながってしまった事例はありますか。

奥田:支援活動の初期に、痛ましい経験をしたことがあります。路上生活者の方がアパートへ入居し、仕事に就くことができた段階で「自立を果たした」と判断した時期があったのですが、住居や仕事といった物理的・経済的な課題を解決したにもかかわらず、孤立を深め、最終的に自死を選んでしまうケースが発生したのです。

多くの方々が路上生活の時に「畳の上で死にたい」と願っていました。しかし、実際にアパートへ入居して安心を得たはずの彼らが口にしたのは、「俺の最期は一体誰が看取ってくれるのか」という人間の根源的な問いでした。

どれほどスキルを向上させても、自身の人生に意味を与えてくれる存在である他者との関係性が欠落していたら、人はいきいきと活動できません。企業においても、スキルアップばかりが過度に強調され、企業内競争が激化して誰にも弱みを見せられず、助けを求められない環境が生み出されれば、同様の悪循環に陥る危険性があります。

AI時代における「すぐに分からない」ことの価値

原田:昨今の企業研修では、オンボーディングのプログラムをAIが担当したり、社員の悩みにチャットボットが回答したりする仕組みを導入するケースも増えてきているようです。効率化が進む一方で、新入社員が何につまずき、どんな不安を抱えているのかを人が知る機会が失われているように感じます。

奥田:福祉の分野でも「AIソーシャルワーカー」が登場しています。AIは、複雑な制度や条件に関する情報を瞬時に検索し、正確な答えを提示する能力に長けています。かつて人が分厚い本をめくって調べていたことを、AIはコンマ何秒で処理してしまう。しかし、対人支援において最も困難かつ重要なのは、正しい答えを提供することではなく、対象者の心を動かし、「その制度を使ってみよう」という気持ちを引き出すことです。答えを即座に与えても、人の感情は別次元であり、容易には変化しません。

人の心を動かすためには、何が必要なのでしょうか。

奥田:容易に答えを出さず、相手と一緒になって悩むプロセスが不可欠です。自動販売機のように即座に答えが出てくる環境では、人の心は動きません。「分からない」という状態を共有することが重要です。

人間や人生の意味といった、本来容易には理解できない現実に対して、分かり易すぎるAIは相性が良くないと思います。アインシュタインの言葉に「調べれば分かることは覚える必要がない」というものがあります。私たちが本当に取り組むべきは、調べても答えが出ないことに対して、他者と出会い、共に考え続ける行為そのものです。目の前の仕事という目標を達成しても「自分は何のために生きているのか」という答えは出ません。「分からない」状態で共に悩むことが重要なのです。

奥田 知志氏(認定NPO法人抱樸 理事長)

原田:余談になりますが、私は最近、武家茶道を習い始めました。帛紗(ふくさ)の折り方が複雑なため、先生に「メモを取ってもいいですか」と尋ねたところ、断られました。「体で覚えなければ意味がない。メモやスマホで動画を撮るようなことをすれば、何か大事なものを置いていくことになる」と諭されたのです。現代人はすぐにマニュアルを検索したり動画で記録したりしがちですが、対象との向き合い方が根本的に変わる体験でした。

越境学習でも、異なる価値観を持つ人々と出会い、「なぜこんな取り組みをしているのか」と驚き、疑問を抱くことから学びが始まります。単に不足している知識の材料探しに行くのであれば、「越境」と呼ぶに値しません。自身とは全く異なる存在と出会い、「問い」を発見することに意味があります。

奥田:私たちが運営している子どもの学習支援事業でも、同様のことが言えます。学習支援における第一の目的は、答えを教えることではなく、子どもが「分からない」と表明できるようになることです。そこからしか学びは始まりません。

東京大学で教鞭をとられていた最首悟さんは、学問という言葉を反転させ「問学(もんがく)」という概念を提唱しました。答えを導き出すための学びではなく、「問いを立てるための学びが重要だ」という主張です。AIを活用する際も、「問い」の立て方次第で結果は変わります。重要な問いほど、容易に答えは見つかりません。越境学習は、時間をかけて他者と出会い、問いを見つけに行くプロセスとして、非常に価値が高いと思います。

越境学習で得た「問い」を組織に持ち帰った際も、周囲が理解できず、異端として扱われてしまう難しさが存在するのではないでしょうか。

原田:持ち帰ってきた「問い」を、組織の中でどのように意味づけていくかは難しい課題です。戦国時代に初めて鉄砲が伝来したときのように、分解したり組み直したりする試行錯誤が必要です。「あいつは変なものと出会って変わってしまったから、触れないでおこう」と避けてしまっては、せっかくの「問い」を生かせません。お互いに言語化し合い、「知的コンバット」のようにぶつかり合う中で融合する瞬間を作れるかどうかが重要だと考えています。さらに奥田さんのお話をうかがって、急にかき混ぜるのではなく、じわりと混ざり合うための「時間」が必要なのだと気づかされました。

奥田:日本古来の概念に、異なるものが交わる空間を指す「あわい(間)」という言葉があります。違うものが出会う場所には必然的に矛盾が生じますが、長い時間をかけて矛盾が解け合い、新たな価値へと昇華します。一方で、現代社会は「待てない症候群」に陥っている。矛盾を抱えたまま待つことに耐えられない組織が増えています。

私たちが建設を進めている「希望のまち」という社会施設には、外でも中でもない巨大な軒の空間を作ります。これはすぐに答えを出さず、矛盾したまま出会い、留まることを許容する思想を表しています。

言語化を徹底すれば融合が進むと考えていましたが、時間という要素が不可欠なのですね。

奥田:カレーは作った翌日のほうがおいしくなる現象と同じです。構成要素やスパイスのブレンドは全く同じでも、時間をおくことで成分が調和し、旨みが増します。言語化も重要ですが、最終的には「時」の問題に行き着きます。

新約聖書が書かれたギリシャ語には時の概念を表す言葉が複数存在し、時計で測れる客観的・物理的な時間を「クロノス」、人の心が動く瞬間など主観的な時間を「カイロス」と呼びます。現代の企業活動や社会はもっぱらクロノスによって運営されていますが、人間の感情の変化や本質的な理解はカイロスの領域に属し、予定調和にはなりません。この二つの時の狭間で人間は生きています。カイロスの感覚を共有し、矛盾を抱えながらある程度の形が見えるまで待つ度量が、現在の組織には求められています。

企業が「ホーム」の機能を取り戻すために――教養としての「おせっかい」と気づきの連鎖

個人が所属するコミュニティの変化について、将来的な展望をお聞かせいただけますでしょうか。

奥田:私たちが支援の現場で直面してきた生きづらさは、大きく二つの次元に分類されます。一つは、物理的な住まいや生活資金を持たないという、経済的な困窮を示す「ハウスレス(家がない)」。もう一つは、より深刻で本質的な課題である、関係性の喪失を示す「ホームレス(帰るべき場所や人とのつながりがない)」です。

一般的に「ホームレス」という言葉は路上生活者を指しますが、私たちはその意味を明確に区別しています。たとえば、私たちが保証人となってアパートを用意し、就労支援を行えば、物理的な家を持たない「ハウスレス」の問題は解決へと向かいます。しかし、安心できる住居や仕事を得たとしても、「自分のことを気にかけてくれる人」や「自分を必要としてくれる人」がいなければ、人は真の意味でいきいきと暮らすことはできません。この状態が「ホームレス」です。

かつては路上生活者特有の課題とされていましたが、現在では社会全体に広がり、社会が路上に追いついてしまいました。単身化と孤立が進むことで、家があっても人とのつながりを持たない「ホームレス」状態が社会全体にまん延しています。

国立社会保障・人口問題研究所 のデータは、2050年には全世帯に占める単身世帯の割合が44.3%に達すると予測しています。さらに65歳以上の単身男性のうち、59%以上が生涯未婚となる見込みだそうです。この数字は、従来家族が担ってきたセーフティーネットの機能が完全に失われる未来を示唆しています。

奥田 知志氏、原田未来氏 対談の様子

家族が担ってきた機能とは、具体的にどのようなことでしょうか。

奥田:最も重要な機能は「気づき」と「つなぎ」です。共に生活する中で、顔色の悪さや様子の変化にいち早く「気づき」、必要に応じて医療機関などの専門家へ「つなぐ」役割を果たしてきました。

1980年代は単身世帯の割合が20%未満であり、第一の居場所(ファーストプレイス)である家庭には同居する家族がいました。しかし、単身化が進む現在は、家に帰っても誰もいない状況が増え、家庭に「気づき」と「つなぎ」を期待することが困難になっています。

かつての日本企業は、家族的なつながりを持ち、第二の居場所(セカンドプレイス)として機能していた側面がありました。企業が再びその役割を担うことは可能でしょうか。

奥田:日本では第三の居場所(サードプレイス)である宗教や地域コミュニティのつながりが弱く、かつては企業が大きな役割を担ってきました。しかし、働き方の多様化や非正規雇用の増加により、一つの人間関係に長く身を置くセカンドプレイスとしての機能が弱まっています。だからこそ、企業が従業員の不調に早期に気づき、適切な支援へとつなぐ機能を持つことは、休職や離職といったリスクを防ぐ観点からも極めて合理的です。ただし、単に相談窓口を設置するだけでは不十分です。窓口へ至る手前の日常を通じて「最近元気がないけれど、何かあったの?」と気づける関係性が不可欠だからです。

個人のプライバシーに踏み込まないドライな関係性を徹底するのか、あるいはある種のおせっかいを容認して変化に気づける職場環境を構築するのか。組織としての選択が問われています。

原田:単身世帯が急増し、社会全体で孤立が進む未来を想定すると、企業という共同体が家族的なつながりを取り戻す意義は極めて大きいと思います。単なる就労の場を超えて、社会のセーフティーネットとしての役割を担うポテンシャルを十分に秘めていると言えます。

奥田:企業は今後、より積極的にセーフティーネットとしての役割を引き受ける必要があります。従業員が病気で長期休職を余儀なくされる事態は、企業経営にとって多大なリスクとなります。欠員を誰かが補う必要が生じれば、経済的な損失も免れません。そのため企業が、かつての家族が担っていた「気づき」と「つなぎ」の機能を持つことが不可欠です。

「家族になろう」とまで表現すると過剰かもしれませんが、社員の生きづらさや不調のサインに入り口の段階で気づき、専門機関などの支援へ導く体制を整えることは、企業が果たすべき重要な使命と言えます。社会制度が縦割りとなり、支援の網の目からこぼれ落ちる人が増えている現状において、企業こそが新たなセーフティーネットとして機能しなければならない時代を迎えています。

原田:一方で企業は、採用活動の効率化や離職率の低下、エンゲージメントスコアの向上などを重視するあまり、ハレーションを恐れて摩擦を避ける傾向にあります。たとえば、地方への転勤を廃止する企業も出てきていますが、社員の要望に応えることが多様な他者や異なる価値観と出会う機会を減らしかねません。環境さえ整えて摩擦をなくせばエンゲージメントが上がると考えがちですが、果たして本当にそうでしょうか。社員も、自分が気づいている選択肢だけじゃなく、関係性によって経験を広げていくプロセスが必要です。両者が歩み寄り、適切な「おせっかい」がマッチした時に、本当の意味でのつながりやエンゲージメントが生まれるのだと考えます。

「適切なおせっかい」と「不快に感じられるおせっかい」との境界線はどこにあるのでしょうか。

奥田:他者との関わりにおいて不可欠なのは「教養」です。解剖学者の養老孟司さんが語っているように、真の教養とは知識の量ではなく「人の気持ちが分かるか」という点に尽きます。自身のおせっかいが相手に喜ばれているのか、迷惑がられているのかを読み取る能力を持たない人が関わりを持とうとすれば、当然トラブルに発展します。キリスト教の黄金律である「自分がしてほしいと思うことを、他者にもしなさい」や、論語の「自分がされて嫌なことは、人にもしてはいけない」という言葉が示す通り、相手の立場に立って感情を想像する能力が求められます。

AIに代替できない教養の部分をどう育むかが問われているのです。そのための訓練の場が、まさに越境学習なのかもしれません。他者の気持ちを想像できる教養を持つ人材を組織内に増やしていくことこそが、企業が再び「ホーム」となるために重要だと考えます。

原田:越境学習は、異なる価値観を持つ他者と出会い、摩擦を乗り越える経験を積む場です。その繰り返しの中でこそ、「受援力」が育まれ、他者の気持ちを想像する「教養」が身につく。それは、自律を求められながらも孤立しがちな個人が、もう一度誰かと深くつながれるようになるためのプロセスでもあります。つまり、越境を経験した社員が増えるほど、組織は少しずつ「ホーム」の機能を取り戻していくのではないでしょうか。ですから、人事の方々には、効率化やAI導入だけでは到達し得ない余白と時間をぜひ組織の中につくってほしいですね。

奥田 知志氏(認定NPO法人抱樸 理事長)、原田 未来氏(一般社団法人越境イニシアチブ 代表理事 /株式会社ローンディール 創業者)

書籍:越境人材一個人の葛藤、 組織の揺らぎを変革の力に変える

書籍:越境人材一個人の葛藤、 組織の揺らぎを変革の力に変える

英治出版
2025年9月26日発刊
原田未来 著

“ホーム”をいったん離れると、 見えなかったものが見えてくる――

キャリア自律、 エンゲージメント、 イノベーション………
様々な経営 人事課題を解決し、個人の成長と組織の変容の好循環を生み出す 「越境」 というアプローチ。

新時代の人事のキーワードであり、経済産業省経団連も注目するこのテーマを包括的にまとめた一冊です!

  • 越境はどのように個人と組織を変えるのか
  • 組織はなぜ越境人材をうまく活かせないのか
  • 越境人材を組織で活かすための3つのステップ
  • 越境が生み出す新たな社会のビジョン………

【関連動画】レンタル移籍ドキュメンタリー|大企業エンジニアが宇宙ビジネスに挑戦!

書籍:越境人材一個人の葛藤、 組織の揺らぎを変革の力に変える

※画像をクリックするとYouTubeへ移動し、動画が再生されます(音声あり)

会社概要

「越境」をコンセプトに、人材育成・イノベーション創出・キャリア自律等、企業の人事・組織課題に応じた複数の事業を展開。2015年9月にサービスを開始し、導入企業は日産自動車・経済産業省・野村證券など大企業150社、1000人を超える。
オープンイノベーションの仕掛けとしても注目され、2016年 日本の人事部「HRアワード」人材開発・育成部門 優秀賞、2019年に内閣府主催 日本オープンイノベーション大賞の「選考委員会特別賞」、2020年「グッドデザイン賞 ビジネスモデル部門」、など受賞多数。

会社概要

無料会員登録

会員登録すると、興味のあるコンテンツをお届けしやすくなります。
メールアドレスのみの登録で、15秒で完了します。

未読

無料会員登録

「既読機能」のご利用には『日本の人事部』会員への登録が必要です。
メールアドレスのみの登録で、15秒で完了します。

注目の記事

HRのトレンドと共に、HRソリューション企業が展開するさまざまサービスをご紹介。自社に最適なソリューションを見つけてください。

会員登録をすると、
最新の記事をまとめたメルマガを毎週お届けします!

この記事と同じテーマのお役立ち資料

注目の記事のバックナンバー