マイクロアグレッション
マイクロアグレッションとは?
「マイクロアグレッション(Microaggression)」とは、明らかな差別には見えなくても、ジェンダーや人種などのステレオタイプ・偏見に基づく発言や行動で、無自覚に相手を傷つけること。1970年代に、精神科医でハーバード大学医学大学院名誉教授でもあったチェスター・ピアス氏によって提唱された造語です。発言者には悪意がないことが多いため、相手を傷つけている自覚がなく、マイノリティは日常的にマイクロアグレッションに直面している現実があります。
「悪気はない」は言い訳にならない
多様な立場の人が心地よく働けるために
「#BLM(Black Lives Matter)」や「#MeToo」など、世界では徐々にジェンダーや人種などによる差別や被害を根絶しようとする運動が活発に行われています。しかし、明らかに差別なのかがわかりにくいマイクロアグレッションを含めると、違いの中で生きる人々は常に差別的言動に直面しています。
マイクロアグレッションの例としては、以下のようなケースがあげられます。
ケース1. 車を購入しに行った女性
ある女性は、車を購入するために夫と販売店にでかけた。女性は自分のお金で自分の車を購入する予定だったにもかかわらず、販売スタッフは夫に話しかけ続けた。「車を買うのは男性だろう」「女性は経済力がない」といった偏見により発生したマイクロアグレッション。
ケース2. 日本で生まれ育った男性
日本とケニアにルーツを持つ男性は、日本で生まれ育ち、日本人としてのアイデンティティがある。しかし、街を歩けば英語で話しかけられ、日本語を話せば「日本語が上手ですね」と褒められる。「バスケットボールが得意なんでしょう」「ダンスが得意なんでしょう」と勝手なイメージを持たれたり、警察からはかなりの確率で職務質問を受けたりする。「見た目が違えば日本人ではない」「黒人は犯罪者が多い」という偏見に基づいたマイクロアグレッション。
このほかにも、男性の保育士や看護師が受ける「保育士(看護師)は女性が多い」というステレオタイプに基づいたマイクロアグレッションや、「恋愛は男女がするもの」というステレオタイプに基づきマイクロアグレッションを受ける同性カップルなど、マイノリティほど、こういった問題に直面しやすいもの。発言者は「普通は〇〇だろう」という自らの常識に当てはめ、相手を傷つけてしまいます。いわれた側にとって、悪気の有無は関係ありません。
これからの職場は、性別、年齢、国籍、宗教など、従業員の多様性が増えていくことでしょう。発言者に悪意がなかったとしても、いわれた人のパーソナリティや状況によっては、離職につながったり、メンタル不調に陥ったりすることもあります。ダイバーシティ&インクルージョンの一環として、アンコンシャス・バイアスなどの研修を実施する企業も徐々に増えてきましたが、企業にはさまざまな立場の人が心地よく働ける環境をつくるための取り組みが求められています。
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