カーブアウト
カーブアウトとは?
Carve out。「切り出す」「分割する」という意味の英語。大企業や中堅企業が埋もれた技術や人材を新会社に移して、ファンドなど外部の投資を呼び込み、その事業価値を高めることです。
企業が事業の一部を切り出し
外部資金を投入して成長を加速させる
大企業や中堅企業の中には「選択と集中」を推進した結果、資金を投じて開発した技術が日の目を見ずに眠っているケースが少なくありません。諸般の事情から自社で事業化できないビジネスモデルもあります。これらを技術者や担当者と一緒にいったん社外の独立した組織に移し、親元の企業が一定の出資・支援を続ける一方、ファンドなど第三者の出資も仰ぎ、新たな事業として育成するのがカーブアウトです。
過去の事例を挙げると、流通最大手のセブン−イレブン・シャパンは、そもそも1973年にイトーヨーカ堂がヨークイレブンを設立、当時イトーヨーカ堂の営業部長だった鈴木敏文氏らのグループがカーブアウトしたものです。またエヌ・ティ・ティ・ドコモも1991年にNTTが移動通信業務を分離する政府方針に基づいてカーブアウトさせた企業です。最近では2004年にソニーと韓国のサムソン電子が共同でカーブアウト会社を設立、大型テレビ向けの液晶ディスプレイパネルの生産を行っています。
米国では研究者が企業から飛び出して独立する「スピンアウト」が主流ですが、日本ではそうした起業家を支援する仕組みがほとんど整っておらず、また失敗後の再スタートも厳しいため、数は多くないのが現状です。その点、カーブアウトは資金調達や仕入れの開拓、人材・知財の面で親会社の支援が得やすいメリットがあり、親会社にとっても将来、カーブアウト会社を自社のコア事業に取り込むことも可能になります。
2010年までに上場企業450社、8万人のエンジニアがカーブアウトに関わるとの予測もあり、支援ファンドも相次いで創設されています。たとえば大手商社の三菱商事は今年4月、日本政策投資銀行と総額150億円の「イノベーションカーブアウトファンド」を立ち上げ、ハイテクメーカーなどに5年間で3億〜30億円を投資する予定です。総合電機大手の日立製作所も5月、中小企業基盤整備機構と20億円ずつ出資してファンドを設立しました。専門のコーディネーターの育成、親会社との知的財産権の明確化、転籍する社員の処遇問題などがこれからの課題と言えそうです。
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