現在の環境下で、企業が成長を図ろうとする場合、次の6項目に対する取組みが重要な課題となります。第一に、売上は拡大できても営業利益は拡大できない状況をどのように改革するのか。ニーズ対応的な発想から需要喚起的な発想に転換していかなければなりません。第二に、戦略立案、組織設計、運営システムの構築といった構造中心の決められた枠組みの中での効率性の追求は効果を失いつつあり、事業の真の目的に沿ってプロセスを創っていける人間中心の新たな枠組みを創出するイノベーションの追求で効果を上げていかなければなりません。第三に、階層制のネガティブな面(固定的な役割、固定的な権限の行使、硬直化した意思決定など)を排除し、情熱的な組織をつくることが求められます。
第四に、言い訳や責任回避するような防衛的な組織風土から変化を歓迎する創造的で挑戦的な組織風土へシフトすることが重要な要素となります。第五に、大量生産・大量消費時代の効率追求型のマネジメント1.0から脱却し、不連続・不確実な時代の新たな事業のあり方、組織のあり方を探求するマネジメント2.0へマネジメント・イノベーションを図らなければなりません。第六に、優秀な個人を採用、配置するという人事プログラムだけでなく、人財を育成し、活用できる優れたチームを育成するプログラムを併せ持つことが大切です。
これらの中核にあるものがタレントマネジメントです。タレントマネジメントを効果的に行っていくためには、人財調査・人財分析を戦略や組織の問題と合せて、しっかり人財状況を把握することがキーポイントとなります。
パーソナリティ・モデルに基づいた人財分析を行い、社員等級と関係を見てみると、上位等級の人財特性は、結果を求め、何が効果的かを追求し、印象の良さを重視している人々です。しかし、そういった人々は創造思考にやや欠け、学習よりもリスク回避を重視し、何より失敗を恐れ、人間的な関わりを抑制する傾向が現れています。
また、人事考課はどのような人財特性を持つ人々を登用してきたのかといった点を分析すると、早い段階からコンピテンシーの発現が認められる人々は終始、高い評価となっています。途中から能力開発が進み、コンピテンシーの発現度が低調な人々は低評価のままで、努力してコンピテンシーの発現度をあげても評価の変化は少なく、その後、コンピテンシーの発現度が低下していくことが確認されます。中程度の評価の人々はコンピテンシーの発現度も中程度でしか高まっていかないことが確認されます。
組織の調査データで高活性度の職場チームでは、人財特性の発現度が高まることも確認されています。職場で働く人々の組織や職場に対する認識が良い方向に変化すると、低活性度のチームが高活性度のチームに変貌していくことも確認されています。そこでは、困難な目標への挑戦、何とか市場形成しようという工夫、仲間意識をかきたて、人の力になろうと努力する人々がいて、エネルギッシュに働く姿が確認されます。
そこでは、どのような人たちがリーダーシップを発揮しているのでしょうか。熱情的な気質、好奇心旺盛な気質を持っている人たちが他の人たちに刺激を与えています。そして、コンピテンシーの発現性を高めていくのもこのような人たちです。このような人たちがマネジメント2.0を体得し、組織行動のプロセスをうまくリードすることが組織成長を引き出すことにつながります。
タレントマネジメントは、人財の持てる力をしっかり把握し、その力をどの方向に活用することが可能なのかを見極め、事業成長の促進につながる、先に述べた6つの改革ポイントの要であるといっても過言ではありません。このような観点からタレントマネジメントを考えてみることが明日を切り開くことにつながると思います。
パーソナルスキャン 【人財分析ツール】
・type1 気質診断・type2 性質診断・type3 属性診断(コンピテンシー診断)