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戦略的人事マネジメントを実現する 人事システム・ERP特集

特集記事 いま人事部に求められる経営上の「戦略」とは何か
~コア業務への集中を可能にする「人事システム」の活用法

長引く不況の影響で、企業を取り巻く環境は、大きく変化している。もはや短期的な人事戦略だけでは、この変化を乗り越えていくことはできないだろう。人事部には、採用・配置・育成などのさまざまな場面において、中・長期的視点による効果的な「人事戦略」の実践が求められている。

そこで検討すべきなのは、定型業務を極力効率化し、人事戦略や人事管理など、人事における「コア業務」に集中すること。そのためには、「業務のアウトソーシング」「シェアードサービスの導入」などが欠かせない。しかし、効率化だけでなく、「中・長期的な人事戦略」までも見据えるのであれば、人事情報の一元管理により、さまざまな動きに柔軟に対応できる、「人事システム」の活用が有効的だ。それでは、いま企業にとって必要な「人事システム」とは、一体どういうものなのか――。以下、具体的に見ていくことにする。

「人事システム」とは?

「人事システム」は、ITによって従業員一人ひとりに関する情報を、一元的に記録・管理する。人材の計画的な配置や異動、育成、能力開発など、人事管理業務全般の最適化および円滑化のために利用する、経営情報システムだ。形態としては、「人事専用パッケージ」「ERPパッケージの1モジュール」「ASP/SaaSでの提供」などがある。

■人事専用パッケージ

人事専用パッケージは、人事の主要業務である、「人事管理」「勤怠管理」「給与管理」をカバーする場合が多い。また、「申請業務」の効率化を目的とした、申請ワークフローも提供されている。一般的に、「給与管理」や「勤怠管理」は別システムとして提供されていたが、近年はこれらのシステムでも、「HRM」や「HCM」といった要素が取り入れられ、それぞれが独自の機能構成を持っている。また、短期間で安価にシステムを構築できるというメリットがあるため、製品化された「パッケージソフト」が広く導入されている。企業を対象に行った調査結果によると、約9割の企業が、パッケージソフトを利用している。(【図表】:人事専用パッケージの利用シェア参照)

【図表:人事専用パッケージの利用シェア】
人事管理パッケージ利用シェア
出典元:株式会社ノークリサーチ「2007年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」

■ERPパッケージ

ERP(Enterprise Resource Planning)とは、ヒト・モノ・カネ・情報など、企業内のあらゆる経営資源を統合的に管理し、最適に配置・配分することで、効率的な事業活動を行う経営手法。このコンセプトを実現するための情報システムを構築するパッケージソフトウェアが、「ERPパッケージ」だ。具体的には財務、会計、人事、生産、調達、在庫、販売といった企業の基幹業務全体を包括する機能が網羅されている。 このERPの1モジュール(機能)として人事管理システムが提供される。定型業務の効率化だけでなく、人事のさまざまな要望に応える情報管理機能を用意。人事以外の領域の、他のモジュールでカバーしている情報と組み合わせることによって、経営判断に直結する戦略的なデータの抽出・活用を可能にするのが強みだ。

■ASP・SaaS

ASP(Application Service Provider)、SaaS(Software as a Service)とは、パッケージやサーバを購入せず、インターネット上で必要なソフトウェアを利用すること。導入コストが安価、あるいは無料であるため、情報システム担当者がいない企業や、初期投資が困難な企業などに適している。

「人事システム」の導入で実現可能なこととは?

人事システムを導入することで、企業にはさまざまなメリットがある。目先だけではなく、将来の自社の人事施策を見据えた上で、導入を検討していくべきだろう。

  • ■業務の標準化により、人事関連の定型業務が効率化され、コア業務(人事戦略・人材マネジメントなど)に集中できる。
  • ■自社の人事情報(評価、スキルなど)が可視化され、中・長期的な戦略に基づいた要員計画・人材マネジメントが遂行できる。
  • ■法改正の際に自社で対応しなくても、アップデートなどで対応できるため、効率的に業務を進めることができる。
  • ■シェアードサービスやBPOを導入することになった場合、業務の標準化に伴う負担が軽減できる。

「人事システム」導入のポイント

自社に必要な人事システムとは、どのようにして選んでいくべきなのか。下記のポイントを参考にして、最適なシステムを見つけて欲しい。

【人事システムを選ぶ際のポイント】
  1. 活用目的と提供される機能の合致
  2. 拡張性、柔軟性
  3. 提供形式(アーキテクチャ)の選択
  4. セキュリティ機能
  5. 導入前後で発生する業務量
  6. サポート体制・パートナーとしての姿勢
1.活用目的と提供される機能の合致
定型業務の効率化、新人事制度への対応など、優先する事項を明確にした上で、今後、必要となる機能を満たしてくれるものを選ぶ。
2.拡張性、柔軟性
周辺システム・オプションの提供状況や、既に導入済みのシステム製品自体の拡張性、既に導入済みのシステムやサブツールなどとの連係が可能か、確認する。
3.提供形式(アーキテクチャ)の選択
PC1台で管理する「スタンドアローン型」のほか、複数のPCで管理・利用する場合には、「クライアント/サーバ型」「ASP・SaaS型」などがある。自社の利用状況に応じた選択が必要。
4.セキュリティ機能
社員の個人情報を扱うので、情報の流出や改ざんを防ぐための機能が必要不可欠。
5.導入前後で発生する業務量
発生する業務量(=社内の人件費)も導入コストとして考えると、導入プロジェクトは、「通常業務にプラスされるものになる」という、概念のコスト管理も必要。
6.サポート体制・パートナーとしての姿勢
導入時のサポート体制、運用開始後の保守契約などの確認が必要。

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