機能型組織の社員の納得感を高める職種型人事制度とは
機能型組織の社員の納得感を高める職種型人事制度とは
評価が難しい職種を含めた全社一律の処遇から各職種の特性に対応する人事制度を構築する
各部門のミッションや目標を明確にするのとともに、実現させる人材のキャリアステップを描こう
職種別人事制度が求められる背景
企業の成長とともに、組織の骨格も変わっていく。零細・中小規模であれば、経営トップが全従業員を把握し、トップダウン型で従業員の持ち味を活かし、成果へと繋げている。また、評価においては経営トップ自らが属人的に評価を行い、処遇を進めているのが現状である。しかし、従業員数が増えるにつれ、経営トップが一人ひとりの把握を難しくなっていく、またトップ一人でマネジメントをするのが困難であるからこそ、組織を営業や生産、工事、総務等、機能に分けて展開している。これにより、各機能の役割や責任も明確になり、かつ各機能の専門性が高まる。しかし、問題は今まで経営トップが属人的に判断してきた人材に対する処遇にある。具体的に、どのような内容かというと、
1.評価・昇格基準が不明確(何で評価されるのか、どのように昇格するのかわからない)
2.エコヒイキが存在する(学歴、コミュニケーション、営業が稼ぐからえらい)
3.部門間での業務量・レベルによる不平不満(こっちの部門が忙しいのに評価されない、あの部門は暇なのに)
以上のことを踏まえ、属人的な判断で評価する仕組みからの脱却を図り、機能(各部門・職に)の役割や責任に応じた職種別人事制度へとステージアップを図ることにより、より社員の納得感・満足感向上へと繋げていただきたい。
職種別人事制度導入のポイント
職種別人事制度導入は以下の7つのステップを踏んで進めていく。
STEP1.自社の理念・戦略・方針の明確化
STEP2.戦略・方針を実現する人材像(全社・部門)の明確化
STEP3.上記内容に基づく全社共通する等級フレームの設計
STEP4.共通する等級フレームに基づく各職種の要件定義
STEP5.評価項目及び着眼点の設定(成果・業績、能力・態度・情意等)
STEP6.評価基準及びウエイト、評語の設定
STEP7.評価制度に基づく昇降格制度・賃金制度(一時金含む)の設計
導入するにあたり、特に重要なポイントは4つある。より詳細のポイントを解説していく。
1.理念・戦略・方針の明確化
職種別人事制度導入にあたり前提条件となるのが、自社の経営理念・戦略・方針に加え、各部門の目標(定量)や方向性・施策(定性)が記載されている部門方針の明確化である。
各職種に求められる定性・定量の評価は、理念・戦略・方針と連動させることが原則である。
これが不明確なまま進めてしまうと、基準がなく評価・処遇と実務との乖離が生じてしまい、被評価者の納得感・満足感の低下につながってしまう可能性が生じる。従って、繰り返しであるが、自社・自部門の戦略・方針が明確になっているか確認をしていただきたい。
2.各職種の要件定義
等級フレームに基づき、全社共通する目指す姿(各階層の役割・責任・発揮能力等)の明確されたのちに、そのフレームに基づいた職種別の要件定義を設計しなければならない。設計する上で重要なポイントは各部門を熟知しているメンバーを人事制度改定メンバーへと加えると良い。なぜならば、現場のことをあまり熟知していない人事メンバー主導で設計すると、理想の姿と現場との乖離が生じてしまい、社員の不満につながりかねない状況に陥ってしまう可能性が生じるからである。従って、現場メンバーを巻き込むことを前提にプロジェクトメンバーを組成すると良いと言えるであろう。
また、同じ等級フレーム内で各職種の定義を進めていくが、どうしても記載内容の難易度・習熟度に差が生じてしまう。
よって、客観的に全体を俯瞰し全職種の難易度・習熟度の調整が必要であることを念頭に置いていただきたい。
3.評価項目及び着眼点の設定
ここでは、各職種の業績・成果項目の設定が難しい。営業職であれば売上高、粗利益など数値化しやすい特性がある。しかし、ある一定の職種になると定量目標が組みにくい。よって、ここで重要となるのが最初に示した部門方針である。
ここでの定量目標を評価制度の業績・成果項目を紐づけ、個々の行動がしっかり果たすことができれば業績・成果が上がるつながりを持たせなければならない。業績・成果項目は部門方針と連動させ、個々の目標や基準を示すことを推奨する。
4.評価制度に基づく賃金制度の設計
賃金設計で留意すべき点は、全社一律ではなく職種の市場価値を把握した上で設定することを推奨する。
離職要因の一つになるのが、金銭的な報酬であり、残念ながら市場価値と乖離が生じているから、やめてしまう。
また、ある職種のキャリア採用を実施した際、自社の賃金制度とギャップが生じてしまい、社員へ説明できない状況になった経験もあるのではないでしょうか。市場価値への対応はベースアップや各種手当を付与するなど様々な施策を駆使し対応しているのが現状である。
職種別人事制度導入のメリット・デメリット
職種別人事制度導入のメリットは、各職種のあるべき姿とキャリアステップが明確になることにより、自分自身の役割・行動、成果が可視化され、個々の成長意欲の向上やモチベーションアップが期待される。また、実務・実践していることに近しい内容の評価をすることにより、納得感や満足感を高めることも可能である。
一方、デメリットは職種別人事制度の設計段階にあり、人事部主導ではなく、納得感を高めるために各部門のメンバーをプロジェクトメンバーへアサインし、難易度・習熟度の客観性を持ちながら、職種別人事制度へとまとめあげていかなければならない。そのためには、プロジェクトリーダーのリーダーシップが肝になるといえるだろう。
背景からメリットデメリットにいたるまで、職種別人事制度について説明してまいりました。
自社の現状を踏まえ、背景に当てはまる状況でありましたら、ぜひ人事制度の見直しをご検討いただければ幸いです。
※本コラムは盛田が、タナベコンサルティングの経営者・人事部門のためのHR情報サイトにて連載している記事を転載したものです。
【コンサルタント紹介】
株式会社タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部
HR東京本部 副本部長
盛田 恵介
セミナー責任者を経てコンサルティングに携わる。人づくりをデザインする総合プロデューサーとして、中堅・中小企業の人事・教育制度構築から運用に至るまでトータルでサポート。特に、様々な業種・業態の企業内大学(社内アカデミー)設立に実績を有し、多くの社員の成長を促すプログラム開発にクライアントから高い評価を受けている。
主な実績
・上場・中堅ゼネコンのアカデミー構築・運用支援
・中堅スーパーのアカデミー構築・運用支援
・中堅飲食業のアカデミー構築支援
・金属加工・製造業のアカデミー構築支援
・中堅建設業の人事制度構築支援
・中堅製造業の次世代幹部育成・ジュニアボード運営支援
・中堅サービス業、建設業、製造業企業の中期ビジョン策定
・卸売業、サービス業、建設業、製造業の社内アカデミー構築&人材育成支援
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タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部(タナベコンサルティング コンサルティングジギョウブ) コンサルタント
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