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第102回 2022年10月からの給与計算の注意点

法改正により、2022年10月からさまざまな法改正が始まりますその中でも、給与計算の業務に影響がありそうな項目をピックアップしてみていきます。 

それぞれの法改正の内容についてはすでに紹介したものもありますが、対応をしやすいように加筆修正をしてまとめています。対応に漏れのないように準備を進めていきましょう。 

 

<最低賃金の引き上げについて>  

すでに多くのメディアでも報道があったように、最低賃金の引き上げが今年も行われます。最低賃金の額は、全国加重平均で31円(3.3%)引き上げられ、平均で961円になります。 

 

ご承知の通り、最低賃金は都道府県によって異なります基本的には、事業所の所在地の都道府県の最低賃金が適用されますが、最低賃金が異なる地域をまたいで派遣される派遣社員の場合は、派遣先の事業所の所在地の最低賃金が適用されます。 

 

最低賃金の改定前に現在支払っている給与のままで、引き上げられる最低賃金を上回っているかどうかを事前に確認をしましょう。最低賃金の対象となる賃金は、実際に毎月支払われる賃金から次の6つを除いた金額になります。 

1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など) 

2)1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) 

3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など) 

所定労働日以外の日に対して支払われる賃金(休日割増賃金など) 

5)午後10時から午前5時までの間に対して支払われる割増賃金(深夜割増賃金など) 

精・皆勤手当、通勤手当、家族手当等 

 

特に固定残業制度を導入している会社は要注意です。固定残業制度の場合、給与は基本給部分と固定残業部分に分けられるはずです。このような場合、固定残業部分は、3)の所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金に該当しますので、最低賃金の対象となるのは、「給与から固定残業部分を控除した金額」です。 

同じ金額であれば固定残業部分に含まれる残業時間数が増えれば増えるほど、基本給部分の時給単価は下がるということになります。固定残業部分を除外して計算した金額が最低賃金を上回っているか引き上げられる前に点検が必要となります。 

 

2022年度の雇用保険料率について】 

2022年度は、年度の途中で雇用保険料が引き上げられるイレギュラーな年です。2022年10月1日からの保険料率は以下の通りとなります。 

 

・令和4年10月1日~令和5年3月31日 

 

ーーーーーーーーーーーーーー労働者負担率ーー事業主負担率ーー雇用保険料率 

一般の事業 ーーーーーーーーー5/1000ーーーーー8.5/1000ーーーー13.5/1000 

農林水産・清酒製造の事業ーー 6/1000ーーーーー9.5/1000ーーーー15.5/1000 

建設の事業 ーーーーーーーーー6/1000ーー  ーー10.5/1000ーーーー16.5/1000 

 

新しい雇用保険料率で給与計算をするタイミングは、すべての会社で10月支給給与になるわけではありません。変更のタイミングは、賃金締日によって変わってきます。 

例を使ってみていきたいと思います。 

 

例1 当月締 当月払いの場合 

締日:10月20日 支払日:1031
→ 10/31支給分より新しい雇用保険料率で計算 

 

例2 当月締 翌月払いの場合 

締日:9月30日 支払日:10月25日 
→ 10/25支給分はこれまでの雇用保険料率で計算し、11/25支給分より新しい雇用保険料率で変更 

 

これまでも何度か説明していますが、労働保険料や雇用保険料は、賃金締日を基準にして計算するルールになっています。会社にもよりますが、社会保険料とは考え方が異なります。 

特に雇用保険料の料率は数年に一度しか変更されないので、間違えるケースが多くみられます。賃金支払日ではないことを念頭に、変更のタイミングを間違えないように注意しましょう。 

 

<非正規社員の社会保険加入拡大について> 

厚生年金への加入拡大を目的として、2016年10 月から週20時間以上働く短時間労働者で、厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の法人等の適用事業所で働く方も厚生年金保険等の適用対象となりました。 

短時間労働者の対象になるのは、5)の要件を満たす規模の会社の1)~4)の項目すべてに該当する方です 

1)週の所定労働時間が20 時間以上あること 

2)雇用期間が1年以上見込まれること 

3)賃金の月額が8.8 万円以上であること 

4)学生でないこと 

5)被保険者数が常時501 人以上の企業に勤めていること 

 

これまでは企業規模が501人以上でしたが、2022年10月からは「101人以上」の規模が対象になります。今後はさらに段階的に拡大され、2024年10月からは「51人以上」の規模になります。この人数規模を満たした事業所を「特定適用事業所」と呼びます。 

 

特定適用事業所に該当するかどうかは、同一の法人番号を有するすべての適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者数が12ヶ月のうち6ヶ月以上超えることが見込まれるか否かで判断します 

つまり、事業所単位でみるのではなく、企業全体で被保険者数をカウントします。 

 

特定適用事業所に新たに該当する会社では、加入要件を満たすパート・アルバイト従業員の取得手続きが必要です。もちろん、給与から保険料の徴収をすることも忘れないでください。 

 

 

今回は、2022年10月に行われる改正で給与計算業務に影響がでる項目を紹介してきました。直前にあわてないように、事前に該当する項目とタイミングをしっかりと把握しておきましょう。 

  • 法改正対策・助成金
  • 労務・賃金
  • 福利厚生
  • 人事考課・目標管理

経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。

(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。

川島孝一(カワシマコウイチ) 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問

川島孝一
対応エリア 関東(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県)
所在地 港区

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