部下の育成に心理学を応用する Part1
『挫けそうになった時、誰かの応援の声で頑張れた』そんな経験をされた方は案外多いのではと思います。
2021年に終了したオリンピック、パラリンピックでも、無観客開催になったことで、「モチベーションに影響がある」という選手の声も聴きました。応援される、期待されることは、モチベーションには欠かせません。
誰かの応援で後押しされて頑張れる。いつも以上の成果が出せる。気持ちが鼓舞されたり、切り替えられたりする。こうした心理的効果の1つに「ピグマリオン効果」があります。
ピグマリオン効果とは教育心理学の用語で、他者の期待でパフォーマンスが向上する現象を指します。
1964年に米国の教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって提唱されました。
さらにローゼンタールは、ピグマリオン効果とは真反対の作用として「ゴーレム効果」も実験により明らかにしました。
ゴーレム効果とは、人が他者から期待されていないと感じることによってパフォーマンスが低下する現象のことを指します。
また、ピグマリオン効果に類似性の高い概念に「ホーソン効果」があります。ホーソン効果とは、米国のウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で行われた実験で、物理的労働条件よりも「注目されているという意識によって生産性が向上する」というものです。この結果から、人はポジティブな注目や関心を受けると、意識決定に影響が起き、注目してくれた人の期待に応えたいと思う心理的行動が起きる。というものです。
「部下のやる気が見られない」とき
はたして上司はやる気を鼓舞する声掛けや労い、承認をしているでしょうか?
自身の忙しさで部下の存在を無視したり、「お疲れ様」の一言を忘れてしまったり、メールの返信を後回しにしたりはしていないでしょうか?
また、部下の過去の失敗をいつまでも忘れず、レッテル張りをしてはいないでしょうか?
上司は、このように意図せずに“ゴーレム効果”を実践してしまっていることがあります。
叱るばかりでは部下のやる気は削がれてしまいますし、部下は叱られることを回避するためにエネルギーを費やすことになりかねません。
上記のような上司の態度は、頑張ろうとする部下のパフォーマンスを低下させたり、チャレンジ精神を奪います。また、部下の上司に対する期待や信頼をも下げることになります。
相談センターに寄せられる部下からのご相談にも、上記のような内容があります。
上司としては、「意識していなかった」「ついつい」「悪気はなかった」ことであっても、部下の気持ちを傷つけ、意欲の低下に繋がってしまうのは、本当にもったいないことです。
そこで、「ピグマリオン効果」「ホーソン効果」の実践をお勧めします。
部下に関心を寄せ、観察し、適切なタイミングでできていることを認めましょう。
承認し、そして褒めること。上司に認めてもらい期待されているという自覚が持てると、部下は自信を深めます。関心をもって対応してくれる上司への信頼感が向上します。部下はより力を発揮しようと意欲が高まるでしょう。
人の良い面を見るスキルは、訓練が必要なため、こうしたピグマリオン効果を意識して実践することで、上司のポジティブ思考も向上します。ネガティブ思考をリフレーミング(言い換え)することで発想の転換の訓練になるのです。
チームの良い雰囲気は、心理的安全性を高めます。
上司の態度は、非常に重要です。上司が変わるとチームの生産性の向上、新奇性の追求、信頼関係の醸成に繋がるでしょう。
著者:産業カウンセラー
2021/10
- モチベーション・組織活性化
- 安全衛生・メンタルヘルス
- マネジメント
- コミュニケーション
企業経験を経て、2000 年に労働省認定「産業カウンセラー」資格取得。
2002年以降、株式会社セーフティネットのカウンセラーとして勤務。
【セーフティネットでの活動】
マネージャーとして相談部カウンセラーの取りまとめ、教育、指導
メールカウンセリング実施責任者、事例検討責任者、面談カウンセリング
人事相談担当、復職支援担当、ポストベンション担当
藤掛 弘美(フジカケ ヒロミ) 営業本部 シニア・アドバイザー
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