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応募者の「活躍可能性」をどう見極めるのか
エントリーシート・適性検査・面接――「選抜」を軸に考える新卒採用

<協賛:株式会社ワンキャリア>
  • 鈴木 潤氏(SCSK株式会社 人材開発本部 人材戦略推進部 採用課 課長)
  • 川崎 祐樹氏(株式会社クレディセゾン 戦略人事部 人材育成課)
  • 鈴木 智之氏(名古屋大学 大学院経済学研究科産業経営システム専攻 准教授)
パネルセッション [V]2023.06.27 掲載
株式会社ワンキャリア講演写真

新卒採用の売り手市場が続く中、企業間での採用競争が激化している。本当に必要な人材と出会い、入社まで導くにはどうすればいいのか。この課題を解決するため、新卒採用活動の中でも、本セッションでは、エントリーシート・適性検査・面接という「選抜」の部分に焦点をあてた。SCSK株式会社、株式会社クレディセゾンの事例から、新卒採用の現状や課題を明らかにし、これからの新卒採用のあり方についてディスカッションが展開された。

プロフィール
鈴木 潤氏(SCSK株式会社 人材開発本部 人材戦略推進部 採用課 課長)
鈴木 潤 プロフィール写真

(すずき じゅん)金融業界で営業、人事を経験後、2001年に株式会社CSK(現SCSK株式会社)へ入社し、新卒採用を担当。グループ会社に出向して人材開発課長を務めた後、SCSKへ帰任しグローバル研修、新人研修などを担当。2020年4月より現職で新卒採用、キャリア採用を担当。副業ではキャリアコンサルタント、大学講師などを経験。


川崎 祐樹氏(株式会社クレディセゾン 戦略人事部 人材育成課)
川崎 祐樹 プロフィール写真

(かわさき ゆうき)大学卒業後、2016年にクレディセゾンに新卒入社。個人・法人営業部門を経て、人事部へ異動し、全社の採用業務に携わる。エンジニアなど専門人材の新卒・中途採用に加え、第二新卒の領域にも幅広く奮闘中。


鈴木 智之氏(名古屋大学 大学院経済学研究科産業経営システム専攻 准教授)
鈴木 智之 プロフィール写真

(すずき ともゆき)慶應義塾大学卒業。東京工業大学大学院修了。博士(工学)。主な著書に『就職選抜論-人材を選ぶ・採る科学の最前線』(中央経済社、2022年。日本の人事部「HRアワード2022」書籍部門入賞)、『ワークプレイス・パーソナリ
ティ論-人的資源管理の新視角と実証』(東京大学出版会、2023年)。


トレンドは「就活の早期化」と「情報源の多様化」

セッションのはじめに、株式会社ワンキャリアの本田優氏が、近年の新卒採用の変化について説明した。

ワンキャリアは学生全体の60%以上(※)が登録している新卒採用メディア「ONE CAREER」を運営している企業である。

本田氏は、新卒採用のステップには、「選抜」の前段階として、ターゲットとなる学生を「理解する」、学生に合わせた形で「集める」の2ステップがあるという。「理解する」の点では、就活の早期化を挙げた。現在は、大学3年の春先に大きくエントリーが動き、自身だけでなく第三者の意見も参考にするトレンドがある。「集める」の点では、分散がある。以前であれば一つのメディアを使って就活するスタイルが主だったが、現在は目的によって使うツールが分散しており、1カ所に情報を出せば大丈夫という時代ではな
くなってきている。

ワンキャリアは、人事向け採用DX支援サービス「ONE CAREER CLOUD」の提供を通じて、この「理解する」「集める」の2ステップに強みを持つ。50万件近くの学生のクチコミは、無料アカウントの開設で誰でも見ることができる。また、採用プロセスの改善に生かせる分析機能も、無料アカウントで活用できることが紹介された。

※2022年12月末時点における2023年卒学生の利用率

2度の適性検査で学習面とメンタル面をフォロー

セッションではまず、名古屋大学の鈴木氏が本日のテーマと議論の方向性について説明した。現在、新卒採用は売り手市場が続いており、企業間での人材獲得競争が激化しているが、エントリーシート・適性検査・面接という選抜活動の見極めが、企業だけでなく、研究の面でもまだまだ弱いと鈴木氏は言う。

「事例やデータの蓄積も不足しています。『選抜』は、採用試験時のエントリーシート・適性検査・面接から何年後かの活躍を予測する、いわば未来予測ですが、とても難しい仕事と言えます。本日のセッションではこの難しいテーマについて議論したいと思います」

続いて、SCSK株式会社の鈴木氏が同社の事例を紹介した。SCSKは「夢ある未来を、共に創る」という経営理念を掲げる総合ITサービス企業だ。2013年頃から働き方改革を開始。その後も健康経営、どこでもワーク、自己研鑽(けんさん)支援、副業の解禁、シニア正社員制度など、立て続けに先進的な施策を行ってきた。複数の賞も授賞している。

「採用活動については比較的オーソドックスだと思っていますが、応募要件の特徴として『非喫煙、または入社までに禁煙する意志があること』を明示しています。また、ITに関して特別な経験がある人は自己推薦で応募できる枠(特選)など、独自の基準もあります」

同社の「選抜」の選考フローは5段階。ステップ1は適性検査やエントリーシートなどを複合的に判断し、最初の選抜を行う。ステップ2は、企業側1名に対して、学生側複数名で行う集団面接。ステップ3では、2度目の適性検査を実施し、ストレス耐性や持ち味を判断する。その後、社員との座談会を経て、ステップ4の二次面接へ進む。企業側1名、学生側1名での面接。ステップ5の最終面接は、学生1名に対して企業側は2名で対応する。

「2020年以降、会社説明から選考まですべてをオンラインで行っています。コロナ対応から始まったことですが、地方や海外の学生も応募しやすくなり、採用業務の運用効率も上がりました。また、採用後の特長としては入社4年間を育成期間として、大学院修士課程2年分の授業時間と同程度の学習時間を社員に課しており、学び続けることを求められる会社です。人材流動性の高いIT業界の中でも相対的に離職率は低いため、若手をじっくり育てるという考え方となっています」

講演写真

個性や強みを活かした「夢中力」選考

続いて、株式会社クレディセゾンの川崎氏が事例を紹介した。クレディセゾンは、セゾンカードを発行するクレジットカード会社。日本国内の利用者は3600万人だ。カード事業だけでなく、デジタル事業、グローバル事業などを幅広く展開し、社員数は約4000名。多様な人材を採用しており、特徴的な選抜として、「夢中力」選考がある。

「夢中力とは、なじみのない言葉ですが、クレディセゾンのDNAとして、何事にも夢中になる力を大切にしています。目の前の仕事を大好きになり、いきいきと没頭することを大事にしている社員が多いことから、夢中力にフォーカスした選考を行っています」

選考の流れは、まず応募者が書類を提出。通常のエントリーシートに加え、学生時代に夢中になったことを、同社でどのように活かせるかをまとめてもらう。選考では、その内容を基に発表してもらうという。

「スポーツのユニフォームを着用したり、ボールや楽器を持ってきたりする応募者もいて、個性が伝わる選考でした。応募者が『選考中は楽しく話すことができました』と話していたことも、非常に印象的でした。丁寧に作成した書類や発表を見ることができ、良い選考ができたと思います」

講演写真

続いて名古屋大学の鈴木氏が、研究者の立場から情報提供を行った。

まずは面接の20世紀初頭からの歴史を追いながら解説。構造化と面接官の人数を増やすことで、妥当性係数が飛躍的に上がったと説明した。一方、近年になり、動画面接、オンライン面接の普及とともに妥当性係数の低下が見られるとの問題点も指摘した。

次に、能力検査と性格検査の妥当性について解説。ジョブや組織の特徴を無視した一律判断では、適性検査の妥当性が上がらないとし、状況を意識すると妥当性が上がるとした。さらに、CWB (Counterproductive work behavior)と呼ばれる非生産的行動、つまりトラブルを予測することに性格検査が使えることがわかってきたことを報告した。

エントリーシートの評価については、19世紀の文章評価に始まり、昨今話題のAIを引き合いに出し、採用に関する世界的潮流の全体像を示した。エントリーシートの文章評価には基礎的な問題が多く、AIを用いたとしても本質的な解決にはならないと解説した。

各社独自の視点を、エントリーシート・適性検査・面接に落とし込む

ここからは3名によるディスカッションが行われた。

鈴木(智):SCSKの選抜では、適性検査を2回実施していますね。

鈴木(潤):はい。1回目は行動特性や言語数理能力などを測るテストです。2回目は、ストレス耐性と、それを踏まえた持ち味がわかるようなテストを行っています。IT業界は一般的にストレス負荷が高いと言われる産業ですので、ストレスへの対処力は適性検査を通じて確認しています。

また、入社時の適性検査と入社後のパフォーマンスを分析したところ、言語数理能力に関してパフォーマンスとの相関があることが分かりました。

鈴木(智):言語数理を含む人間の知的能力と呼ばれているものを分析すると、入社後の活躍とあまり関係がない会社のほうが圧倒的に多い。どちらかというと性格検査のほうが関連は高いという会社が多いようです。SCSKで言語数理の能力が高く関連している背景はどこにあると思いますか。

鈴木(潤):当社の場合、約9割がシステムエンジニアとして配属されます。常に新しい技術や知識を学び、論理的思考を駆使して行う業務が中心なので知的能力が成果へと連動しやすいのではないかと考えています。また、入社後は業務上の知識習得だけでなく、資格取得やアカデミックな学習も行っているので、それらをクリアするためにも知的能力が活かされているのだと思います。

鈴木(智):やはり業界や仕事の特性は大きいですね。現在の適性検査だと、面接する人を事前に選別するため、ある能力検査の得点でバッサリと切っている会社が多いと思うのですが、これには良い面もあれば悪い面もあります。エンジニアのように常に勉強して、最新技術をつかんでいくのであれば高い相関が出ると思います。しかし、世の中の仕事はそれだけではありません。本当に必要な部分がどこなのかを見極めずに、ある得点で切っている会社は多いのではないでしょうか。SCSKからのお話からの学びとして、要注意だと思いました。

続いてクレディセゾンですが、夢中力採用というのはとても興味深いですね。もう少し詳しく、背景や狙い、苦労した点などをお聞かせいただけますか。

川崎:実は3、4年ほど前に、試験的にプレゼンテーション型の選考を行ったことがあります。そのとき採用したメンバーが現在、中核メンバーとしてかなり活躍しています。当時はまだ特別選考という形でしたが、思い切って今回から「夢中力」選考一本にしました。

最初は、何名くらいエントリーしてくれるのかわからないし、プレゼンテーションの資料を作るのも結構大変だということで、不安もありました。選考基準を定めるという点でも大変苦労しました。

鈴木(智):ちなみに、採用母集団形成に悪影響が出ませんでしたか。

川崎:エントリー数には多少の影響がありましたが、その分、当社への思いを強くして応募してもらえたのではないかと感じています。

講演写真

鈴木(智):これまでの選抜は、採用母集団をたくさん作り、そこからいかに選び取るかという思考のプロセスだったと思います。しかし、一人ひとりのエントリーシートを丁寧に見ることは難しい。そこで、エントリーの段階で本気の人だけが応募してくるようにし、手間暇かけて夢中力に対応することにしたということですね。

私のような研究者からすると、面接は構造化によって発展してきたという歴史があって、質問項目や評価基準が決まってきたと思うのです。クレディセゾンの面接は、逆行していますね。

鈴木(潤):社内で議論にはならなかったのでしょうか。

川崎:議論しました。2名の社員が面接を担当することで、選考基準を担保できるようにしました。

鈴木(智):「選抜」全体の話に目を移せば、入社後の活躍や問題行動を予測するという面も非常に大事だと思います。その点で気をつけていることはありますか。

鈴木(潤):知的能力と近い話になりますが、学習意欲はよく見るようにしています。すでに獲得した能力も大切ですが、学習習慣や学習意欲の確認を通じて、持って生まれたものを自分なりに磨く姿勢を評価したいと思っています。当社にとっては、学習意欲こそがその人の伸びしろだと判断しています。

川崎:当社は老舗の金融会社ですが、ベンチャー風土があるので、当社とのカルチャーマッチについては注意深く見ています。

鈴木(智):今のお話がまさに象徴的です。SCSKは学び続ける、学ぶ習慣を重視している。もっと簡単に言うと、頭の良さやそれにつながる行動特性を見ている。一方、クレディセゾンは、社風やカルチャーを見ている。SCSKとクレディセゾンの2社だけでも、重点を置くところが異なります。

選抜において危険なことは、一律判断です。今日の大きな学びの一つとして、エントリーシート・適性検査・面接の各フェーズにおいて、各社独自の視点を採用基準・選抜基準に落とし込むことができているのかどうかが重要だとわかったのではないでしょうか。本日はありがとうございました。

本講演企業

株式会社ワンキャリアは、2015年に創業され、学生のための就職活動サイト「ONECAREER」を運営しています。企業の採用活動に関する50万件を超える就職活動の体験情報を集め、1万社を超える企業のキャリアデータを蓄積して、企業の採用DXを推進しております。

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