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人的資本の土台を作るカルチャーとは-イノベーションを創出する組織へ-

<協賛:Unipos株式会社>
  • 羽田 幸広氏(株式会社LIFULL 執行役員 Chief People Officer)
  • 田中 弦氏(Unipos株式会社 代表取締役社長 CEO)
パネルセッション [N]2023.06.22 掲載
Unipos株式会社講演写真

個人が持つ知識やスキルを最大限に引き出すことが、中長期的な企業価値向上につながると考え、人的資本に積極的な投資を行う企業が増えている。人的資本の価値を高めるためには、各種制度や施策を取り入れるだけでなく、従業員一人ひとりが自身の価値向上へと意識を向けるための組織風土づくりも欠かせない。では、そのような組織風土はどのようにすれば醸成できるのだろうか。株式会社LIFULLの羽田幸広氏、Unipos株式会社の田中弦氏が議論した。

プロフィール
羽田 幸広氏(株式会社LIFULL 執行役員 Chief People Officer)
羽田 幸広 プロフィール写真

(はだ ゆきひろ)人材関連企業を経て2005年にネクスト(現LIFULL)入社。人事責任者として人事部を立ち上げ、企業文化、採用、人材育成、人事制度の基礎づくりに尽力。「日本一働きたい会社プロジェクト」を推進し、「ベストモチベーションカンパニーアワード」1位を獲得。著書に『日本一働きたい会社のつくりかた』。


田中 弦氏(Unipos株式会社 代表取締役社長 CEO)
田中 弦 プロフィール写真

(たなか ゆづる)2005年Fringe81株式会社を創業。2017年にUniposを提供開始。2021年10月にUnipos株式会社へ社名を変更。『心理的安全性を高める リーダーの声かけベスト100(ダイヤモンド社)』を2022年10月に刊行。人的資本経営や開示手法について研究・発言をしている。


ベースは「健全な組織風土」「心理的安全性」

Uniposは、HR領域のソフトウェア「ピアボーナス®︎Unipos」の開発・提供および組織風土改革のコンサルティングを行っている。「ピアボーナス®︎Unipos」は、同社の社内制度をもとに誕生した、従業員同士が「貢献に対する称賛のメッセージ」と「少額のインセンティブ」を「ピアボーナス」という形にして送り合うというユニークな仕組みである。

従業員の間で相手の良い行動を称賛して「ピアボーナス」を送ると、送った人・もらった人の両方にポイントが届き、タイムライン上でオープンに表示される。良い行動は全員でシェアされ、共感した人はクリック一つで意思表示ができる。一連の動きを通じて、一人ひとりの意欲が向上するだけでなく、心理的安全性が高まる。ひいては、組織全体にポジティブな変化が起こり、組織風土へと浸透する効果を持つ。

同製品の導入社数は、大手メーカー、IT・情報関連企業、金融業、流通業。人材サービス業など370社を超えている。

セッションは、田中氏が人的資本経営について語ることから始まった。

「人的資本経営がこれほど注目されているのはなぜでしょうか。2040年には労働需要と労働供給のギャップが1100万人生じるというデータも出ていますが、日本に訪れる未曾有の人手不足が一因です。つまり、採用を増やして生産力を向上させる手法は今後難しくなる。企業の市場価値は有形資産だけでは測れず、無形資産の重要性が高まっていくわけです。すると、人の価値が大きなポイントになります」

ここで田中氏は、丸井グループの事例を取り上げた。「手挙げの文化」が根付いており、82%の従業員がプロジェクトや移動や派遣プログラムなどの何らかに立候補している。77%の従業員が3年以内にグループ間異動や職種変更などを手挙げにより経験し、86%の従業員がそれによる成長を実感しているとデータが示している。

「手挙げのカルチャーが組織の土台を作り、この土台があるために各種制度が好循環し、従業員も成長し、人的資本の価値が向上していくのです」

次に田中氏は、ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された「従業員価値提案を見直すべき時〜人を惹き付け、離職を防ぐ」という論考を紹介。「人材を引き寄せ、つなぎ留めることが経営上の大きな課題となっているが、報酬などの物理的待遇は根本的な解決策にならず、従業員が潜在能力をフルに発揮できる環境を目指して従業員への価値提案を設計し導入することが、組織の長期的繁栄の秘訣である」と記されている。ここで、価値提案として示されている四つのファクターが、物理的な待遇、能力・成長の機会、つながり・連帯、意義・パーパスである。

「これら四つのファクターを満遍なく考えていくことが人的資本の向上には欠かせません。当社の「ピアボーナス®︎Unipos」は“つながり・連帯”に位置するサービスですが、LIFULLではどのような施策を実施されているのでしょうか」

講演写真

LIFULLが注力する「意義・パーパス」

LIFULLは、日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S(ライフル ホームズ)」の運営など、さまざまな領域において不動産情報サービス事業を展開している。現在、グループ全体の従業員数は約1600人。「ベストモチベーションカンパニーアワード2021」受賞、「働きがいのある会社」ベストカンパニーに6年連続選出されるなど、人事面への対外評価も高い。羽田氏は人事部を立ち上げ、人事責任者として、企業文化、採用、人材育成、人事制度の基礎づくりに取り組んできた。

「田中さんがお話しされた四つのファクターに沿って当社の施策を分類してみたところ、それぞれ網羅的に行っているという気づきが得られました。この中で一番力を入れているのは“意義・パーパス”です。当社は経営理念を非常に重視しており、実現するために組織を作っているとも言えます。組織の人数が多くなると曖昧になりがちなため、特に力を入れているわけです。

例えば、入社式では代表が必ず、正社員、契約社員、派遣社員の全員に対して、経営理念や行動指針を説明しています。まずは意義・パーパスを認知してもらうためです。その後は、有志の社員が各部署の取り組みをセッション形式で話します。さらに、役員が講師になってビジョンについて語るビジョンカレッジを開催し、実践を促します。このように、意義・パーパスを半年ほどかけてじっくり浸透させています」

既存の社員向けにも、多くの仕組みを整えている。「LIFULLテスト」では、グループ各社の戦略についての問題を作って回答してもらう。戦略を知った上での行動促進を意識づけるためだ。年2回実施するビジョンアンケートでは、ビジョンの浸透度を確認。毎月開催する全社総会、部門総会でも必ずビジョンが語られる。昇進や昇格に対しても、ビジョンとカルチャーの体現が重視されるという。

「経営理念と、各部門のビジョンや日々の自分の仕事との結びつきが分かるビジョンツリーを作成し、年2回それを見直して、経営理念について考える機会も設けています。“何のために自分は今の仕事に取り組んでいるのか”という大元のビジョンが理解できていれば、一人ひとりが自由に考えて行動に移しやすくなります」

ビジョンツリーはグループ全員で話し合いながら作りあげるものだが、トップの承認は必要としない。現場にまで広くビジョンが浸透しているから確認は不要なのだ。従業員を信頼している証とも言える。それぞれの現場で自分たちの言葉によってビジョンが作られるため、より自分事化させた思考が進む。つまり、従業員は自発的に活動できるよう成長する。

「カルチャーはトップダウンからも作られるものだと考えています。そのため、まずは経営理念と一貫した社長と役員の言動がぶれてはなりません。それを確かめるため、社長と役員の言動を測定するアンケートを定期的に実施しています。結果を把握するだけには終わりません。数値が低い役員は、次の半年間の改善策を他の役員に対して伝え、実行に移します」

以前は、目標数字に意識が集中してしまい、ビジョンの存在が弱まりがちなところがあったと羽田氏は振り返る。しかし、このアンケート測定を取り始めてからは、目先の数字よりも長期的な目線に立って目的を語り合える雰囲気へと変化したという。カルチャーというベースがトップで強く根付き、しっかりした土台が作られ、社内全体へと連鎖していくのだ。

講演写真

ビジョンを定着させるためのポイントとは

続いて、羽田氏、田中氏によるディスカッションが行われた。

田中:ビジョンフィットについてですが、例えば中途の方が入社してから、どのぐらいの期間で一人前のLIFULL社員にまで到達できると考えていますか。

羽田:半年です。ビジョンを伝えて理解してもらった後も、いろいろな施策を実施しています。例えば、半年後には振り返りを行いますが、行動指針に対して自分が実践したことを思い出してもらい内容をチェックしています。

研修の後にはアンケートも取りますが、それよりも、研修で教えた行動が半年後に定着しているかを重視しています。例えばマネジャー研修の場合、研修を終えた半年ごとにメンバーから「上司はこういう行動ができていますか」といったヒアリングを行ってチェック。結果が芳しくない場合は、サポートをしながらビジョンフィットを促します。

田中:研修を行っている会社はたくさんありますが、職場に戻ったときに研修の内容が本人の行動として定着しているかどうかを丁寧に確認している会社は少ないのではないかと思います。大切にしたいポイントです。

つながり・連帯がもたらす効果と施策

田中:“つながり・連帯”に関する話に移りたいと思います。ウェルビーイングの施策によって業績が良くなるという調査結果があります。社員がウェルビーイングになるために何が重要かという調査によると、帰属意識の高さが挙げられています。つまり、つながりをしっかりと感じられることが、社員の力を発揮させる源泉になるのです。これは、長年この仕事に携わっている私も実感しています。“意義・パーパス”のような機能体的なプロジェクト的な観点と、“つながり・連帯”のような共同体的なコミュニティ的な観点、この両方をしっかり強化していけば、強い組織が作られると思うのですが、いかがでしょうか。

羽田: “意義・パーパス”ももちろん重要ですが、“つながり・連帯”において重要だと挙げられている帰属意識は、従業員の粘りにもつながる効果を持ち合わせています。同じ方向へと社員の行動を促していくには、「この人たちが好き」「この会社に来ることが楽しい」といった感覚が大切です。

田中:“つながり・連帯”に対する施策として、LIFULLではどんなことを実施されていますか。

羽田:キックオフパーティーなどのイベントはちょくちょく行っていますが、従業員の満足度は高いですね。また、有志プロジェクトでは手挙げ式でいろんな活動に社員が参加しています。ダイバーシティ&インクルージョンに関する活動、子育や介護をしている人をサポートする活動、職場環境を向上させる活動など。全社から所属組織に関係なく有志が集まってくるため、部門を超えた交流ができ、いろいろな副次的な効果も表れてきていると感じています。

田中:ジョブ型雇用が今後進んでいくと、有志による活動に取り組みにくくなると考えられますが、こういった活動は評価の対象になっているのですか。

羽田:業務時間内で活動していますが、評価対象にはなっていません。ただし、会社のためにいろいろな活動を考えて動いてくれていることはもちろん大歓迎しています。なぜなら、事業以外の面から会社を作るという自発的な活動は、パーパスへの意識にも通じるものだからです。

田中:社内サークルは、800近くあるそうですね。いろいろな形で、他の部署との人とチームを組んだり人間関係を作ったりする活動をバックアップしているのですね。

羽田:部門を超えたつながりを重視しているからです。部門外にも親しい仲間がいると、帰属意識も強くなると考えています。

最後に田中氏が「ピアボーナス®︎Unipos」について説明し、セッションを締めくくった。

田中:「ピアボーナス®︎Unipos」は、まさにつながりを高めるためのサービスです。人と人のつながりが画面上で可視化され、新たなつながりも生まれやすくなります。例えば、マネジャーが部下の活躍ぶりを他の部署に伝えるのは、非常に意味あることですが、なかなかできずにいる人、苦手な人もいるかもしれません。このシステムを使えば簡単に、部下や仲間の行動を広く紹介できます。

また、例えば、従業員一人あたり社内でどれくらいまでつながっているのかがわかりますから、何かプロジェクトを始める際に、チームのセットアップを考えることができます。イノベーション増加やコラボレーション強化にも結びついていくでしょう。

「ピアボーナス®︎Unipos」を使うと、エンゲージメントサーベイのスコアが伸びるというデータもあります。部署ごとに、どれくらいつながっていて、平均でどれくらい助け合い、どれくらい挑戦しているのか、といった角度から眺めてみても、成果との関連性が見えてきます。人的資本経営においても有効なので、ぜひご活用ください。本日はありがとうございました。

本講演企業

Uniposはピアボーナス®を通じて、組織変革を促すサービスです。 称賛文化を醸成して心理的安全性を高め、生産性の向上 / 離職率の改善を実現します。

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