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ベテラン管理職のマネジメントを最新化する!
360度フィードバックを活用した仕組みづくり

  • 深井 幹雄氏(株式会社シーベース 代表取締役社長)
特別講演 [M-1]2023.06.22 掲載
株式会社シーベース講演写真

事業推進や組織運営において重要な役割を担っている管理職。しかし、管理職の育成は簡単ではない。特に、ベテランの管理職は、本人が新しい知識を習得する意義を感じていないことが多く、人事も働きかけることに対してハードルを高く感じて手を打ちたがらない。果たしてそれで良いのだろうか。現代の管理職に必要なマネジメントスタイルのアップデート実現に適した手法、仕組みについてシーベースの深井幹雄氏が解説した。

プロフィール
深井 幹雄氏(株式会社シーベース 代表取締役社長)
深井 幹雄 プロフィール写真

(ふかい よしお)1995年株式会社日本ブレーンセンター(現 エン・ジャパン)に新卒入社。執行役員として新卒サイト、派遣サイト、エージェントサイトの事業部長を経験。2017年シーベースの代表取締役に就任。事業再編をおこない、組織開発・人材開発を支援するHRクラウドサービス事業に集中。


正解なき時代に管理職が直面するマネジメントの変化とは

CBASE(シーベース)は、組織開発・人材開発を支援するHRクラウドサービスを提供している。2000年に設立され、今期で23期を迎える。これまでに1000社以上との取引実績があり、業種はメーカー、商社、流通、金融、サービス、IT、官公庁と多岐にわたる。

同社のミッションは「フィードバックと対話で、すべての人と組織、社会をアップデートする」。現代は目まぐるしく変化しているだけでなく、多様な価値観を持ち合わせた人々と協働しながら、新しい環境に適応していかなければならない。フィードバックと対話という技術を生かして、組織や個人に気づきと学びと成長をもたらし、行動をアップデートするサポートをしている。

深井氏は、現代の管理職が直面するマネジメントの変化について解説した。現代は、VUCAと呼ばれる正解なき時代。マネジメントの在り方は「リーダーシップ」から「ミドルアップ」へ、経営目標は「経営数値の達成志向」から「組織のパーパスの実現」へ、人的マネジメントの目的は「オペレーション志向」から「クリエーション志向」へ、さらに上司・部下の関係性も「管理・統制」から「自律・成長支援」へとダイナミックに変わりつつある。こうした変化に伴い、管理職に求められることも変化している。

「もはや、これまでの“勝ちパターン”は通用しなくなっています。だからこそ、管理職のマネジメントスタイルをどうアップデートするのかが問われています。こうした管理職の環境変化に大きな影響を与えたのが、パワハラ防止法の施行です。従業員のハラスメントに対する関心が高まり、管理職はよりコミュニケーションに気を遣うようになりました。また、コロナ禍でリモートワークが普及した後、沈静化に向かって対面やハイブリッドワークへと移行する変化が加わり、部下のマネジメントはかつてないほど難しくなっています」

実際に、アンケートの結果ではコロナ禍で実に6割以上の管理職が「部下のマネジメントに苦戦している」と回答しているという。

手つかずになりがちな管理職育成

次に、深井氏は管理職育成の現実と悩みについて語った。人事は「次世代リーダーの育成」と「マネジメントスキルの向上」を目的に、管理職研修を実施している。

「問題は『研修の効果が出ているとはいえない』と過半数が感じていることです。これまでの経験則や一般論の学習によるマネジメントだけでは、今の厳しい状況に適用しづらくなっています」

管理職は、「候補者」「新任」「既任」の三つの段階に分けられる。このうち、最も多くの企業が新任の管理職に向けた研修を実施している。主に、マネジメントに必要な姿勢や考え方、知識、スキルの習得を図り、プレイヤーからマネジャーへの意識や行動のシフトを促している。

近年は候補者への研修が増えている。管理職になる一歩手前の段階で、マネジメントの視点や心構えを意識させることが目的だ。

「一番手つかずになっているのが、最も業績や組織に影響を与えている既任の管理職です。課題が多く、現実のマネジメント難易度も上がっているのに、あまり手が打てていません。その結果、ベテラン管理職は自らをアップデートする機会がなく、無自覚にゾンビ化してしまうのです」

例えば、変化を拒む「ディフェンシブゾンビ」、自分の経験や考え方に固執する「ガラパゴスゾンビ」、肩書きや権威で相手を説き伏せようとする「マウンティングゾンビ」、優しいだけでリードをしない「ジンチクムガイゾンビ」などだ。

では、なぜ手を打てていないのか。管理職本人からは「業務に追われて研修に時間を割けない」「理論・理屈は現場では使えない」「マネジメントのイロハはわかっている」という声が上がる。研修の意味やメリットを見いだせていないということだ。

講演写真

「ベテラン管理職だけではなく、管理職の上司にあたる本部長や役員も、総論では管理職のアップデートを望んでいるものの、研修には懐疑的です。『管理職が現場から抜けると業務が回らない』『一般論ばかりで役立たない』『個々に自己研さんすれば良い』などの声が多く聞こえます」

こうした状況を人事はどう見ているのだろうか。「もうこれ以上研修に時間を割いてほしいとは言いにくい」「同じような内容なので本人たちから不満が出てくる」「共通した施策やテーマを考えるのが難しい」という声があるように、意味のある打ち手ややり方が見えていないようだ。

「人事は、管理職育成への課題意識を持っています。ただ、進める上で壁にぶつかっているのが実状です。その壁は、三つあります。一つ目は時間。管理職の時間拘束がこれ以上できない。管理職本人も上司も嫌がっています。二つ目は動機付け。いかに必要性を感じ、興味関心を持ってもらうかということです。三つ目は課題設定。毎回同じようなテーマだと学びが少なく、管理職一人ひとりが抱える課題も違います。これらをどう解決するかが重要です」

管理職育成への糸口となる360度フィードバック

その課題解決に向けた糸口として、深井氏は施策の方針転換が必要だと説く。目的は「マネジメントの学習・習得」から「自身のマネジメントを知る・気づく」へ変えること。課題は一人ひとりの状況に応じて設定する。コンテンツは「求められる姿勢や考え方」のインプットから「マネジメントスタイルへのフィードバックと最新ナレッジの付与」にシフトしていくべきだという。

「これを、360度フィードバックを活用した自身のマネジメントチェックと新たなマネジメントナレッジの習得という二つの施策で実現していくことが重要になってきます。それによって、自身のマネジメントに向き合った上でナレッジの習得を行い、『自分事』の学び、気づきを得やすくすることです」

ポイントは二つある。一つ目は、自分のマネジメントの現状を知ること。事業環境が目まぐるしく変化しているので、自社のビジョンや年度方針、組織構成、ミッションと照らし合わせて、自身のマネジメントはどうだったのかを振り返る。また、意図したマネジメントが職場に伝わっているかを確認する。

周囲の評価から意外な気付きを得ることも重要だ。自分が気づいていない貢献ポイントや、意図的に再現した方が良いこと、改善点や周囲からの期待ポイントを確認する。

二つ目のポイントは、新しいナレッジを習得することだ。特に、若手世代の価値観や行動傾向、ハラスメント、コミュニケーション、エンゲージメント、心理的安全性が重要なテーマだ。

「それらのエッセンスを取り入れることで、自身のマネジメントをアップデートするヒントを得られます」

では、施策を効果的に進めるため、360度フィードバックをどのように活用できるのか。深井氏はハーバード大学のD.C.マクレランド教授の「氷山モデル」を紹介した。多くのベテラン管理職も結果を出すために、行動している。その土台となっているのが、知識やスキル、経験であり、意識や意欲、心構えなどのマインドセットだ。

「思うような結果が出ていないときは、他者の認知を借りてマインドセットをアップデートすることが重要です。コミュニケーションを取るときに意識すべきことを理解することで、今までとは違う知識やスキル、経験の生かし方に気づき、行動が変わり、結果も変わっていきます」

ここで問題なのは、マインドセットは変えられるが元に戻りやすい性質があることだ。そのため、気づき、行動化、習慣化の流れが重要だ。

このほか、深井氏は「Badフィードバックループ」と「Goodフィードバックループ」について説明した。前者はひとごと・やらされ感でフィードバックを受け、結局何も得ていない状態を指す。後者は、自分事として施策に参加する「自分事化フェーズ」からスタートし、フィードバックを通じて前向きな気づき、行動化、習慣化を回していくというサイクルだ。このサイクルを継続的に展開する。

さらに、深井氏は各フェーズでのポイントを語った。

「自分事化フェーズでは、目的や進め方を理解し、ありたい姿を設定した上で仮説を持つことが重要です。そのためにも、なぜ実施するのか、何が得られるのかが腹に落ちていること、当事者意識を持つことが大事です」

想定される施策としては、丁寧な周知・解説やトップから期待を込めたメッセージを送ることや、上司の施策参加、管理職向け事前説明会などが挙げられる。

「気づきフェーズでは、フィードバック内容をどう読み解き、受容するかがポイントです。管理職としてありたい姿やマネジメントの意図と照らし合わせながら、周囲がどう認識し、どのような期待が寄せられているかをしっかりと読み解くこと。その上で、自分自身の強みを受け止めてアップデートしていくことが大事です」

このフェーズでの具体的な施策には、読み解きを促すレポートやガイド、360度レポートの読み解きレクチャーや解説などが挙げられる。

「行動化フェーズでは、アクションプランの策定や、自身のマネジメントに生かせる視点やヒント、最新マネジメント事情の獲得などがポイントです」

具体的な施策は、アクションプラン策定セッションや管理職同士の情報共有ディスカッション、マネジメントナレッジの付与などが想定される。

「最後に習慣化フェーズでは、本人の課題やリアクションに対する定期的なリマインドや上司と周囲の関わり、小さな変化に対する注目と承認がポイントです」

具体的な方法としては、フォローアンケートや1on1、グループコーチング、定期的な診断・フォローなどがある。

続いて深井氏は、CBASEのサービスに触れた。

「CBASEが提供している360度フィードバックは、管理職の行動の癖を知るためのフィードバックです。仕事中の自分を知る鏡だと言い換えることもできます。ただ、非常にパワフルなツールである一方、従業員には『社内にあつれきや犯人探しが起こるのでは』『レポートを返却しただけで終わらないか』といった不安が生じやすいため、注意が必要です。だからこそ、CBASEでは準備から回答・フィードバックを『気づき』、フィードバックから改善を『行動化』、そして改善から定着を習慣化と位置づけ、システム導入やコンサルティングサービス、ガイダンスを通じて伴走します」

Q&Aセッション:360度フィードバックの疑問に回答

最後に、視聴者からの質問に深井氏が回答した。

Q:360度フィードバックの目的は何でしょうか。
A:あくまでも、人材開発の視点で使います。人事評価にダイレクトに反映されているケースはわずかです。

Q:どのような質問をしているのですか。
A:カッツモデルをベースにしており、マネジャーに共通して求められる考え方やコンセプチュアルスキル、ヒューマンスキルを見ています。

Q:回答者をどう選定すれば良いですか。
A:一番のポイントは、一緒に仕事をする人から回答を集めることです。回答者は10人前後。人事や上司が選定するケースが多くなっています。

Q:360度フィードバックを進める上で大事なことは何ですか。
A:まずは、自分事化するためにも、事前に動画や説明会を通じて丁寧に説明することです。また、フィードバックレポートにある強みと課題項目へのアドバイスメッセージを受け止めることです。

Q:360度フィードバックにはどのような意義がありますか。
A:事業環境が年々大きく変わっています。そうした中で、この仕組みを活用することでベテラン管理職の方々のアップデートが実現できます。

本日の講演が、皆さんのお役に立てたのであれば幸いです。本日はありがとうございました。

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