サッポロHDが経営戦略で取り組む「越境人財の育成」の必要性と人財活用のビジョンとは
- 佐藤 雅志氏(サッポロホールディングス株式会社 取締役)
- 鈴村 賢治氏(株式会社プラスアルファ・コンサルティング 取締役 副社長)
先行きが見通しにくいVUCAの時代。近年はさらにコロナ禍も加わり、永続的な発展に向けてどんな経営戦略、人事戦略を構築していくべきかに悩んでいる企業が多い。こうした中、サッポロホールディングスでは長期経営ビジョンとして“新しい価値と感動を提供する「越境人財」の育成”に着手している。なぜ越境型の育成を目指すのか、その実現に向けて人財の可視化がどんな効果を発揮するのか、サッポロホールディングス 取締役の佐藤氏と、プラスアルファ・コンサルティングの鈴村氏、山本氏が議論した。
(さとう まさし)1989年サッポロビール入社。国内外の工場建設や設備設計の他、生産系の人財管理・育成に携わる。2016年仙台工場長。2020年同取締役を経て2022年3月サッポロホールディングス株式会社取締役(人事・総務・IT/DX担当)グループ人事戦略の基本理念「越境せよ」の下、個性かがやく人財の輩出に向け邁進中
(すずむら けんじ)中央大学卒業後、野村総合研究所に入社。テキスト・データマイニングを専門とし、CRMシステムなどの開発やマーケティングデータ分析のコンサルティングを経験。2007年同社に入社。人事戦略にもマーケティング視点を取込み、科学的な人材活用、タレントマネジメントの啓蒙、普及のため日々全国を駆けめぐっている。
「越境せよ」がサッポログループの成長を実現する源泉
プラスアルファ・コンサルティングは、あらゆるビッグデータを見える化するクラウド型マーケティングツールを自社で開発し、顧客企業のCS向上を支援している。2006年の設立から順調に業績を拡大。2021年に東証マザーズ市場(現・東証グロース市場)への上場を果たしている。
主力となるソリューションが、タレントマネジメントシステム「タレントパレット」だ。HR領域では初となる、人事戦略にマーケティング視点を取り入れた科学的人事を推進。現在までに導入法人数では2000社を突破(契約社数990社 ※22年9月末)するなど、人事・配置クラウド市場ではトップレベルの実績を誇っている。しかも、導入企業の4割超が社員数5000名以上の大企業(エンタープライズ企業)であるのも同社の特長と言える。そうした企業が直面している、人的資本経営や人事DX、ジョブ型シフト、自律的なキャリア形成にも貢献できるとあって、ますます注目度が高まっている。
講演の冒頭、佐藤氏がサッポログループの企業概要について解説した。
サッポログループは1876年に創業され、現在はホールディングス体制のもとで酒類・食品飲料・不動産、大きく三つの事業を展開している。グループの経営理念は、「潤いを創造し豊かさに貢献する」。個性かがやくブランドとお客さまや地域とのつながりという資産を活用し、“時間”と“空間”の二つの側面から独自のブランド体験を創造してきた。また、時代とともに変容する“豊かさ”の本質に向き合い、自然、社会、心の“豊かさ”に貢献している。
「サッポログループの最大の財産は人財です。人財一人ひとりがブランドであり、そのブランドを輝かせながら、元気で明るく前向きなエネルギーを持って新たな領域に挑戦・越境し、サッポログループで働いていてよかったと思える企業を目指しています」
グループ人事戦略の基本理念は、「越境せよ」だ。開拓者精神がアイデンティティとして受け継がれ、数々のイノベーションを創出。サッポログループの成長を実現する源泉となっている。
サッポロビールは、2026年に創業150周年を迎えるが、中期経営計画ではさらにその先を見越して、経済価値と社会価値の両輪を回していきながら、企業として永続的に成長し続けることを目指している。その経営基盤となるのが、人財・DX・R&Dだ。
「人財戦略の骨子としては、創業以来の当社の強みを再確認している半面、ちがいを活かして変化に挑む越境集団となるために、三つの戦略に沿って対応していきたいと考えています。一つ目が人財の多様化・流動化への挑戦。二つ目が人的資本投資による個と組織の強化、三つ目が個の持てる力の最大化です」
サッポロホールディングスでは経営理念、そして新中期計画の達成に向けた経営戦略と基盤となる人財戦略を一体と捉え取り組んでいると佐藤氏は強調した。
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