社員の多様な想いを叶える自律的なキャリア形成
～EX向上施策として社内異動を活性化した事例を紹介～
- 伊藤 直子氏（株式会社日立ソリューションズ 経営戦略統括本部 チーフエバンジェリスト兼人事総務本部 本部員）
経営者や人事部門が従業員のことを考えた経営や人事戦略を展開することが、現代のビジネス環境ではますます重要になっている。その中心にあるのが、EX（Employee Experience）の向上だ。日立ソリューションズでは、「自律的なキャリア形成」を一つの柱として働き方改革を進め、2022年からは「EX向上」に舵を切っている。同社の伊藤直子氏が、実際に社内異動の施策・異動を果たした社員の事例を紹介しながら、社員一人ひとりの想いを実現するために企業はどうすればよいかをテーマに語った。
（いとう なおこ）1990年津田塾大学卒業。日立中部ソフトウェア(現 日立ソリューションズ)に入社。ソフトウェア製品開発、ネットワーク・セキュリティＳＥを経て、2004年管理職へ。2015年から働き方改革のプロジェクトに入り、自社の改革推進とともに、企業の働き方改革をＩＴで支援する事業に携わっている。
従業員の自律的なキャリア形成のための支援が企業に求められている
日立ソリューションズは、日立グループの成長戦略の要であるデジタル事業の中核を担う企業である。企業や社会の課題解決のために、ITを活用したさまざまな製品やサービスを柔軟に組み合わせ、豊富なソリューションをワンストップでグローバルに提供している。対象領域は製造、流通、通信を中心に社会、交通、教育、医療など多岐にわたる。
日立ソリューションズでは2016年から働き方改革を推進。2022年からは「EX向上」に力を入れており、キャリアのタイミングに応じたさまざまな社内異動制度を用意している。人財を必要とする部署が新規事業や事業拡大などの公募テーマを設定し、異動希望者を募る「社内公募制度」、従業員が自身の希望で経歴・自己PRを公開し、各部署がスカウトする「社内FA制度」、定年を迎えた従業員のジョブ型雇用制度である「プロフェッショナルエルダー制度」に加え、2022年度からは、若年層が自らの職務を選択する「若年層ジョブマッチング制度」をスタートした。
講演の冒頭で伊藤氏は、なぜいまキャリア形成を考えなければならないかに触れた。これまでキャリアは個人のものであり、自分のキャリアを考えることは自分の責任であると思われてきたが、従業員が自律的にキャリアを形成していくためには、個人の取り組みだけではなく、企業によるキャリア支援が必要だという。
「企業がキャリア開発を支援することで、従業員は自分だけでは気づくことのできないキャリアに出会うなど、可能性が広がります。だからこそ、会社として取り組むべきなのです」
キャリアには外的キャリアと内的キャリアがある。外的キャリアとは、職業、地位、資格、年収など他者から見えるキャリアのことを指すが、外的キャリアの成功が本人の満足と一致するとは限らない。内的キャリアとは、働きがいや生きがい、働くこと、生きることに関する価値観を指し、その仕事に満足しているか、やりがいがあるかなど、本人にしかわからない基準で判断される。個人差はあるが、内的キャリアのほうが本人の満足度への影響が大きいと考えられている。
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