どの企業にもやってくる、“節目(周年記念)”を活用したエンゲージメント向上への取組み
- 塩谷 久美子氏(株式会社JTBコミュニケーションデザイン 事業共創部 プロデュース局 局長)
働き手と所属組織が信頼関係を築き、自発的な貢献意欲から行動へとつながるエンゲージメント。企業にとってはビジョン実現や事業の推進力となり、採用力強化につながることから、従業員のエンゲージメント向上は重要な経営課題になっている。さまざまなアプローチが考えられる中、どの企業にも訪れる節目の年、すなわち周年の活用は好機と位置づけることができる。周年記念を事業と捉え、活動を通じて従業員との望ましい関係を構築するには、組織の課題抽出と解決や改善につながる施策の実行、効果測定のサイクルを回すことがカギになる。本講演では企業事例を通じ、ビジョンや理念の浸透、従業員の一体感の醸成につながる周年事業の進め方やポイントを考察した。
(しおや くみこ)2016年グループ再編により(株)JTBコミュニケーションデザイン、モチベーションイベント局長等を経て2022年より事業共創部プロデュース局長(現職)。企業コミュニケーション課題へ『コミュニケーションデザイン』を提案、特に周年事業を数多く手掛ける。またMICE研修講師、大学観光関連学科での講義等も行う。
将来ビジョンの策定や企業イメージ刷新にも有効な節目の活用
本講演の協賛企業であるJTBグループは交流創造企業を事業ドメインとし、地球上を舞台にユーザーの感動と共感を呼び起こし続けてきた。中でも企業・団体向け事業では、年々複雑かつ多様化する課題に対して、「エンゲージメント」軸にした提案で解決を目指す。旅行やMICE(ミーティング・コンベンション・各種イベント・展示会運営、試験運営、オンラインイベント)に限らずソリューションの幅広さとコンサルティング力で、複数の商品やサービスを組み合わせたオンリーワンの具体策をワンストップで提供できるのが強みだ。特に本講演のテーマである周年事業は、豊富な支援実績を誇る。
JTBグループのJTBコミュニケーションデザインでは、周年事業の成功を後押しするデジタルサービスも展開している。伴走型HR テクノロジーの「WILL CANVAS」は、サーベイを通じて組織の課題を抽出し、効果的な施策を提案する機能を持つ。サーベイの設定は自由度が高く、エンゲージメントの程度や、パーパスや理念の浸透度合いなども測定。周年事業の推進に際して、企画立案のための現状把握や効果検証に力を発揮する。また「JCD Event Platform」はオンライン上のイベントを通じ、主催者と参加者のつながりを生み、発展的な関係性をもたらすサービスだ。
JTBコミュニケーションデザイン 事業共創部 プロデュース局 局長の塩谷氏は、ホテル・飲食店コンサルティング会社や人材派遣会社のイベント部門を経て、現在のJTBコミュニケーションに参画。企業や団体のインナーコミュニケーション分野でコンサルティングを担う。特に周年事業については、業界、規模を問わず、さまざまな企業をサポートしてきた。
講演の冒頭ではZOOMの投票機能を使い、視聴者の関心を探った。すると視聴者の企業では、周年のタイミングで特別な取り組みを行う、まさに今取り組んでいるという回答が合わせて6割を超えた。また視聴者のうち、周年事業の担当となる人は3割超にとどまったが、多くの人が何かしらの形で周年事業に関わると見ている様子がうかがえた。
前半のテーマは、「企業の“節目”にあたる周年事業とは何かを考える」。後半で取り上げるエンゲージメント向上の前段として、周年事業がもたらす価値や事業の範囲、進め方について解説した。
塩谷氏は日ごろ周年事業をサポートしながら、企業が節目を大切に扱う姿勢を感じるという。日本人は誕生日や長寿のお祝いなど、記念日が好きな傾向にある。企業だけでなく、働き手が「節目だから何かあるかも」という期待感を持っても不思議ではない。
周年は重要なターニングポイントであり、今までを振り返ると同時に今後のビジョンやあり方を考える貴重な機会となる。
「以前は周年行事というと、式典であゆみを振り返り、先輩方の功績を称えたら、記念パーティーを開いて終了というところも少なくありませんでした。しかし今は、従業員が集まって会社の未来を考えるなど、思いをひとつにする機能を期待する傾向にあります。また、当日に向けた準備プロセスに重きを置く企業が増えています」
企業にとっては周年が、自社の存在意義やパーパスを再定義し、変えることと変えないことを見定める機会となっている。経営方針の方向転換や経営者の世代交代、ステークホルダーに感謝を伝える場として活用することも珍しくない。すなわち社内外に向け、これからの自社のあり方を示すチャンスと言える。
JTBグループでも創業100周年を迎えたことを機に、事業ドメインの転換を図った。「感動のそばに、いつも」というタグラインには、過去から未来にかけて変わらない同社の姿勢が込められている。内外を問わずプロモーションに力を入れ、脱・旅行業の姿をイラストでビジュアル化し、ポスターをはじめさまざまな媒体に展開していった。周年というきっかけが、力強いメッセージ発信につながった例である。
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