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次世代選抜リーダーの修羅場経験による部門変革のすゝめ

  • 石橋 真氏(リ・カレント株式会社 代表取締役社長)
特別講演 [R-3]2022.06.21 掲載
リ・カレント株式会社講演写真

外部環境の変化が激しい現在社会において、変革創造を担う自社の次世代リーダー人材を育成する必要性がこれまで以上に増している。本講演では、個人やチームにとどまらず、組織へ影響を及ぼす人材となるための組織学習サイクルを解説。チームワークを最大化させる社員育成や組織開発に関わる研修を提供するリ・カレント株式会社の石橋真氏が、大手住宅設備機器 メーカーのクリナップ株式会社人事の後藤氏とともに、同社で実施した「選抜 型次世代リーダー育成施策」の事例をもとに語った。

プロフィール
石橋 真氏(リ・カレント株式会社 代表取締役社長)
石橋 真 プロフィール写真

(いしばし まこと)株式会社リクルート時代、そして二度の起業経験の中で様々などん底経験とそこからの這い上がり経験を持つ。「人は一人では弱い。だからこそ組織としての共育と協働が必要」というポリシーのもと、日々人材開発プロデュースに挑む。


VUCA時代に求められる、「会社の10年先」の変革創造を担う次世代リーダー育成

リ・カレント株式会社は、リーダーシップとフォロワーシップの相乗効果により、チームワークを最大化させる社員研修、組織開発を行っている。

時代に合わせて進化し続けていくことが求められる今、「個人の力」を高める動きがますます重要になっている。そのうえで「個人の力」を「組織の力」につなげていくことが、人と組織にさらなる成長をもたらすと、リ・カレントは考える。また、人材育成に関しても、「組織の能力開発」や「組織風土の形成」といった組織戦略に直接的な貢献を果たす施策が求められている。

石橋氏は、株式会社リクルート時代、そして二度の起業経験の中で何度も失敗や挫折を経験し、そこから這い上ってきた経験を持つ。そのときの学びから、リ・カレントを創業後も、自身が講師となり年間2000名もの受講者に対して講演やセミナー、研修などを実施。日々、企業の人材開発プロデュースに挑んでいる。

今回の講演で石橋氏は、リ・カレントが提供する「次世代リーダー選抜研修」を紹介した。社内で30〜40代の「会社の10年先を担う」人材を選抜し、“目の前の課題”から“中長期視点”への視座向上を狙いとしたコースである。

石橋氏は、リーダーとしての視点を養うために大切なことを語った。

「自分の潜在能力を飛び越えるようなチャレンジができているか。ある種の『修羅場』経験を克服するような経験になっているか。それらを乗り越えた先に、部門を巻き込んで事業を創造するといった変革創造に結びつく力が得られるのではないでしょうか。そんな提案のもとに、研修を提供しています」

“The Future of Employment(雇用の未来)”という論文で、2050年までにAIにより47%の仕事が失われると論じたオックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授によると、2030年の雇用に求められるスキルの第1位は「戦略的学習力」。VUCAの時代に変革創造を担う次世代選抜リーダーには、この戦略的学習力が必要だとも語る。

そのうえで、石橋氏が重要だと掲げたのが、事業・部門の変革・創造を導く挑戦課題を推進・完遂することができる「ミッション・ドリブン・リーダーシップ」だ。

「戦略的学習を進めていくためには、会社のミッション、ビジョン、バリューに連結した価値軸が土台にあることが必要です。それらをもとに、具体的な目標、施策、計画といった実行軸に落とし込んでいくのが正しい考え方だと思います。

ところが今、多くの企業では実行軸に属する部分のみを重視し、数字を作り出すための戦略や日常のオペレーションを回すための戦略の策定にとどまってしまっています。この状態では、組織内の変革創造がなかなか起きません。経営者や次世代リーダーは、ミッションドリブンでリーダーシップを発揮する必要があります。

本研修では、ミッション・ドリブン・リーダーシップの開発を通して、次世代選抜リーダーの皆さんが変革創造にチャレンジする『修羅場』経験をしていただく場を設けています」

ある研究によると、社内においてミッションに対する活性度の高さは、35歳から45歳ぐらいの社員の間で下がってしまうという結果が出たそうだ。ミッションにもとづいて目標や施策を計画するのではなく、「自分がいかに評価されるか」を軸に動かざるを得ないといった実態が現れているのではないかと、石橋氏はいう。まさに次世代を担うこの層に向けて、ミッション・ドリブン・リーダーシップのV字回復を図る必要がある。

「修羅場」を乗り越える力を育てる5つの仕掛け

ここまでの話のなかで、何度か登場したキーワードが「修羅場」である。なぜ、修羅場経験が必要なのか。

「次世代選抜リーダーとして研修に参加する方には、ゆくゆくは課長や部長、事業部長へと昇格していく人たちがたくさんいらっしゃると思います。いずれは今よりもさらに大きな変革や創造に挑戦されるでしょう。失敗や挫折を乗り越えて挑戦を完遂するためには、ベースに自分ならクリアできるという『自己効力感』が高まっていることが重要です。

そういった自己効力はどこからもたらされるのかというと、さまざまな経験をしてきた過去の自分をいかに肯定できるかにかかっています。成功体験をしっかりと持っていれば、ハードルの高い新規事業プロジェクトにアサインされても、試練をクリアできるのではないでしょうか」

この主張の背景には、石橋氏の原体験がある。コロナ禍がもたらした不況の際には、研修事業が立ちいかなくなる寸前まで追い詰められた。さらに過去にさかのぼると、リクルートから独立後に起業した会社で代表の座を解任されるという憂き目にもあっている。その状況をなんとか立て直し、今やリ・カレントは60名ほどの社員を抱える企業となった。その経験から、修羅場に直面し、乗り越えることが自己効力感につながると語る。

次世代選抜リーダー研修では、そういった修羅場を疑似体験できる内容となっている。修羅場を乗り越える力を育てるために、研修内では五つの仕掛けが施されている。

1.強烈な反省論
2.使命の明確化
3.巻き込むリーダーシップ
4.課題解決ロジック
5.視野・視座・視点

一つ目の「強烈な反省論」については、研修中に何度も遭遇することになる。

「まず、事前課題としてリーダー経営者の登竜門と言われる書物である『V字回復の経営』を読んでいただき、自部門の変革のためのレポートとスライド資料の作成をお願いしています。そして研修の初回に、プレゼンテーションをしていただきます。

事前にいただいた提出物は私たちがアセスメントを行います。平均が3.0点なのですが、そこに至らない方々は、まず 「自分は選ばれたのに、ロジカルシンキングや志が平均よりも低い」という現状を突きつけられることとなる。反省するところから研修がスタートするのです。

また、研修の場で必ず実施しているのが社内の上司や同僚による『360度の多面評価』です。自分自身ができているつもりでも、上位者や同僚から見ると足りない部分があるかもしれません。率直なフィードバックを受けることで、これも強烈な反省につながります」

さらに、次回の研修までには挑戦課題を自ら設定し、職場での実践活動も行う。このプロセスで「使命の明確化」や「巻き込むリーダーシップ」が育まれていく。

「どのような課題にチャレンジし、職場を巻き込んで何を行ったのかを受講生に毎回プレゼンしてもらいます。受講生同士で点数を付け合って、自分の序列が付くという仕組みです。相互のピアプレッシャーも、ある種の修羅場になっているのではないでしょうか」

現在の自己評価が高くても、社内の関係者や世の中の市場価値レベルからすると、まだまだ至らない点がある。潜在能力を発揮して努力する必要があるのだとしっかり実感させながら研修が進んでいくプロセスとなっている。

クリナップの事例紹介から見る、受講生の変容

ここからは、クリナップ社人事の後藤浩氏をゲストに迎え、同社の事例が紹介された。

クリナップは「システムキッチン」の生みの親で知られる、創業70年を超える老舗のキッチンメーカーである。グローバルの社員数は約1500名。市場は堅調だが、後藤氏は事業の未来について、危機感をあらわにする。

「現在の売り上げの8割が主力商品のシステムキッチン。このまま専業を特化していく選択肢もありますが、事業として偏っているのが正直なところです。10年先を見据え、新たな価値を想像し、世の中に提案していく必要があると考えています」

講演写真

クリナップは、自社内「クリナップビジネスアカデミー」にて、次世代選抜リーダー研修を実施。「修羅場」を作り出す仕掛けをもとに、研修プログラムを組んでいる。研修の合間には上位者層との1on1コーチングを導入するなど、より対話を重視した構成となっている。現在開催するアカデミーでは、役職を問わず、35~45歳の社員に絞り参加者を選抜した。

「他のメーカーでも悩んでいるのではないかと思いますが、年齢別に構成された従業員ピラミッドを見ると、 30代~40代前半の方が少なくなっています。その上にいる50代のボリュームゾーン が5年後・10年後にそっくりいなくなってしまうと考えると、非常に危機感を感じます。

アカデミーの参加対象となる年齢層に社内アンケートをとったところ、教育の機会が不足しているという実態もわかりました。今、ビジネス業界ではリーダー人材の育成が最大の関心事です。具体的にどのように着手していくのかが、中長期視点で見た企業における最大の課題と言えます。そこで、クリナップビジネスアカデミーの設立に至りました」

研修は全編にわたって、20名程度のグループをつくり、課題を考えて発表を行う形式を取った。ひとりで考えるのではなく、複数名が集まれば、その分アイデアも多く出てくる。他者の意見を尊重するような文化を作っていきたいという思いも込めて、このような形式にしたという。

さらに、意識したのは上位層のコミットメントである。

「当社の代表である竹内を塾長に据え、メッセージや石橋さんとの対談の様子をオンデマンドで配信しました。竹内から、次世代リーダー育成に対する熱意などを直接伝えたことで、感銘を受けた社員も多かったようです。トップからのメッセージは、非常に効果があったと思います。

竹内が常に話をしているのが、意識が変われば行動が変わる、ということ。行動が変われば、結果も変わってきます。次世代リーダーに求められるのは、意識の変化だと考えています。最初のうちは、たとえ小さくても構いません。でも変化の積み重ねで、10年後が大きく変わっていくと私は信じています」

上位層を巻き込むリーダーシップこそ、人と組織を変える源泉 となる

ここからは、石橋氏と後藤氏のディスカッション形式で、クリナップの研修の様子を詳しく聞いていった。

石橋:受講者はどんな経験を「修羅場」だと感じていましたか。

後藤:「修羅場」を感じたであろう場面が複数ありました。まずは初回の「意識改革」研修で石橋さんのお話を聞き、受講生全員が自らの視座の低さと視野の狭さに気づいたこと。さぞかし衝撃を受けたのではないでしょうか。研修の様子を見ていて、一人ひとりの目が真剣になったと感じました。

また、受講生には、現場の上司や同僚による360度評価を実施しました。クリナップでは初の試みです。各方面からのフィードバックに落ち込む受講者もいたと思いますが、周りからの評価を知り、受け止めるところからスタートを切れたのは非常に良かったですね。新しい事業を考えるワークショップでも、質の高い提案が求められ、受講者の刺激になったと思います。

石橋:「いかに自分が今まで経験則で業務に取り組んでいたか」という気づきなどが聞かれましたね。続いて、そういった経験を通して受講者の様子はどのように変わりましたか。

後藤:受講者が現場に戻った後、学びを具体的なアクションへと移していく姿を何度も見ました。漠然と仕事をせずに、ビジネスとして「誰に向けて何を提供するのか」とターゲットを意識した結果、周りを巻き込んで物事の提案や実行をする姿勢が醸成されていると感じます。

石橋:すばらしい行動変容ですね。具体的にはどのような提言があったのでしょうか。

後藤:大きく三つのアウトプットがありました。一つ目は、次世代向けのキッチンの商品開発企画です。二つ目は、東南アジアや中国市場を目指した海外展開の提案。三つ目は、SDGsを意識したリサイクル可能なステンレス材料のリプレースサービス といった提案です。いずれも、クリナップの新たな事業を創造できる可能性に満ちた内容でした。すべての提案をすぐに実行には移せませんが、社内でプロジェクトが立ち上がるなど、動きを見せています。

講演写真

石橋:社内の方々からの関心も高かったのだとお見受けしました。後藤さんが研修の企画段階から、役員陣を巻き込んでくださったからこその結果だと思います。

リーダー人材育成にあたって、上位層をあまりうまく巻き込めず悩んでいる人事担当の方も多いと思うのですが、後藤さんはどのような工夫をされているのでしょうか。

後藤:こちらからどんどんアプローチして、思いを伝えました。人事役員、副社長、社長に対するプレゼンも行いました。そうすることで「会社の10年先を担う人材が育っていない」という危機感、人材への投資の重要性をわかってもらえました。

石橋:経営層のコミットメントや受講生の皆さんの劇的な変化の起点には、後藤さんの熱意があったのですね。1期生の20名が無事に卒業し、現在は2期生の受講が始まっています。今後も私たちは「人材組織開発プロデューサー」として、次世代リーダー育成を推進される企業や人事担当の方々を支援していきたいと思っています。本日はありがとうございました。

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