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これからの時代のロイヤリティ向上施策
組織との一体感を高める「VR活用術」とは

  • 島﨑 さくら氏(株式会社 日本HP サービス・ソリューション事業本部 ビジネス開発部)
特別講演 [X-5]2021.12.15 掲載
株式会社 日本HP講演写真

昨今、ビジネスの現場や企業内において、コミュニケーション、コラボレーションの手段としてVRの有効性が注目を集めている。そのメリットはフェース・トゥ・フェースに近い使い方ができ、組織の一体感を高められる点だ。VRソリューションを提供する日本HPが、その有効性と活用術について解説した。

プロフィール
島﨑 さくら氏(株式会社 日本HP サービス・ソリューション事業本部 ビジネス開発部)
島﨑 さくら プロフィール写真

(しまざき さくら)株式会社 日本HPにて法人向けデスクトップ/ノートパソコンのプロダクトマネージャーを経て、現在は製造・建設・映像制作など特にマシンパワーが求められる専門職種の生産性向上の提案に従事。営業SEや組織人事コンサルティングの経験も有し、ITと人の両面から最適な解を提供することを心がけています。


近年、変化する採用のトレンドの四つの特徴

日本HPは、1963年の横河・ヒューレット・パッカード社の設立から数えて創業58年。その起源であるヒューレット・パッカード社は1939年の設立で、1968年に世界初のデスクトップPCを発表。1977年には腕時計型情報端末を発表するなど、世界に先駆けた製品を提供し続けている。最新テクノロジーによるソリューションを扱う日本HPがいま提供しているのは、VR(Virtual Reality:仮想現実)ソリューションだ。

日本HPのVRソリューションの特徴として、高い没入感とワンストップソリューションが挙げられる。フェース・トゥ・フェースにもっとも近く、継続性が期待できるVRで、企業文化・人を基盤としたコミュニケーション・コラボレーションを活性化し、ロイヤリティの向上を実現する。また、日本HPはPCVRに必要なデバイスとヘッドマウントディスプレイの両方を提供・サポートできる唯一のベンダー。HPのVRソリューションパートナーは51社あり、これらの企業と共にハードウェアの提供に限らず、VR導入および活用の支援を行う体制を築いている。

まず島﨑氏は企業人材に関して、近年変化する採用トレンドの四つの特徴について解説した。

「特徴の一つ目は、応募状況の二極化です。大企業ほど採用に慎重で、中小企業は優秀な人材の獲得機会への期待から採用を拡大しています。

二つ目は、新卒の採用控えです。新卒に対して従来のような手厚い集合研修の実施が困難になり、オンラインのみでは教育に限界を感じるという声が聞かれます。社内育成担当者のリソース確保も困難で、新卒の採用を控えているという情報があります。

三つ目は、中途採用の活性化です。新卒の採用控えを受けて、即戦力の採用に重きをおく企業が増加。オンライン面談による企業・応募者の機会が増えたことも影響しています。

四つ目は、就職・転職観の変化です。コロナ禍であらためて仕事のやりがいについて考えたり、キャリアを見つめ直したりする時間ができました。モビリティスキル(持ち運べるスキル)を高める意識が強くなったという声も聞かれます。人材の減少に頭を悩ませている人事の方も多いのではないでしょうか」

コロナ禍を受けて変化する企業と従業員の関係、その四つの要因

島﨑氏はコロナ禍を受けて、企業と従業員の関係に変化が起きていると語る。その要因は四つある。

「一つ目は、トレーニングのオンライン化です。オンラインにより、企業としての判断基準、つまり文化を伝えることが困難になっています。テレワークでOJTが減り、企業らしさや美学といった企業ならではの判断基準をどのように伝えるかが難しくなっています。

二つ目は、コミュニケーションの減少です。コロナ禍で在宅勤務が増え、従来の管理という観点では仕事ぶりを評価することが困難になっています。通常必要なコミュニケーションもままなりません。

三つ目は、能力開発の機会の減少です。コロナ禍もあり、企業が従業員に能力開発の機会を与えることが困難になりました。急な人員減に対応するため、個人の能力開発にはつながらない場当たり的な異動をせざるを得ないケースも発生したのではないでしょうか。

四つ目は、従業員のモチベーションの変化だ。コロナ禍で自身のキャリアを見つめ直す時間ができ、個としてのモビリティスキルを高める意欲が芽生えてきました。組織の中での限定的な昇進・昇格というものがモチベーションになりづらくなっています。

島﨑氏は、こうして企業と個人の関係性が変化しているからこそ、企業は自社での仕事のやりがいを提供する必要性が高まっているという。
「何事も個が主体的になってきたときに、企業につなぎ留めておくモチベーションとなるものは、その会社での“仕事のやりがい”に他ならないのではないでしょうか」

ここで島﨑氏はHPの創業者の一人であるビル・ヒューレットが創業時から語っていた言葉を紹介した。“人々は男女を問わず、良い仕事、創造的な仕事をやりたいと願っていて、それにふさわしい環境に置かれれば、誰でもそうするものである。人々にとって大切なのはHPでの仕事を楽しむことである”。この考えのもとに組織としてのメンバー、マネジャー、会社のミッションが明確化されている。

「HPには新卒入社、中途入社、M&Aなどで合流した社員が3分の1ずつ存在します。異なる背景を持つ社員たちを束ねる文化となっているのが三つのHP Wayです。『Employee Owns:自分のキャリア形成に責任を持つ』『Manager Supports:社員がチャレンジできる環境を提供する』。『HP Enables:会社は環境を整える』。

部下のキャリアプランについて勉強方法をアドバイスしたり、なりたい姿に近い先輩に話を聞く機会を取り計らったり、チャレンジをサポートすることがマネジャーの仕事と定義されています。また、HPでの仕事を楽しむ環境を整えることが企業のミッションになっています」

ビデオ会議と違い、フェース・トゥ・フェースに近い使い方ができるVR

昨今、ビジネスの現場や企業において、コミュニケーション、コラボレーションの手段として、VRの有効性が指摘されている。

「その理由はVRがフェース・トゥ・フェースにもっとも近い手段であり、今後も継続性が期待できるコミュニケーション・コラボレーション手法だからです。未来に起こるかもしれない事業継続性の危機の場面でも、出社以外の選択肢として効果的なコミュニケーションが提供し続けられることがVRのメリットです」

Facebookリアリティラボのレポートによると、 ビデオ会議では、フェース・トゥ・フェースの会議では起こらない、いくつかの不自然な現象が起こっているという。

一つ目は、ビデオ会議では話者の交換がよりフォーマルに行われる点だ。ビデオ会議で音声がかぶってしまうと、相手の音声が打ち消されることがある。そのため、タイミングをみて話さなければならない。二つ目は、ビデオ会議は相づちの頻度が増え、トータルの会議時間が長くなることだ。三つ目は、ビデオ会議だと相手の顔をみる割合が高くなる傾向があることだ。表情を読む必要があり、資料の中身などがアタマに入ってこないこともある。

「一方VRは、話者を気にせず話すことができます。またVRではアバターの目線を常に相手に向けたり、うなづくことで、『聞いています』というサインを送れます。同調する言葉をわざわざ言う必要はありません。このようにVRでは、よりフェース・トゥ・フェースに近い自然な会話が実現できます。以前のようなコミュニケーション、コラボレーションを取り戻せるツールと認識してください」

次に島﨑氏は、VRで組織の一体感を高めることに成功した企業事例を紹介した。

「アクセンチュアは、新規入社者の研修にVRを導入し、6万台ものヘッドマウントディスプレイを導入。会社のことをより魅力的に学べるだけでなく、新入社員研修では一緒にいることができない人たちとも一緒に体験することができた素晴らしい手法だったという感想が聞かれたそうです。

バンク・オブ・アメリカは北米約4300ヵ所の金融センターへのVRトレーニングを導入。約5万人の従業員に実施。日常業務や顧客とのやり取りをシミュレーションし、スキルアップを図った参加者の97%が、自分の能力に自信を持てるようになったという結果が出ています」

会議や研修、見学会、体験入社などで活用されるVRソリューション

では、実際にどのようにVRを活用できるのか。島﨑氏は同社のVRパートナーのソリューションを七つ紹介した。一つ目はオフィスでのコミュニケーションや顧客との商談などのコラボレーションを実現するSynamonの「NEUTRANS」だ。

「社内会議や商談、プロジェクトミーティングに活用できるバーチャルな会議室です。実際の会議室に近い環境がつくれて、付せんやホワイトボード、プロジェクターなどのツールを画面上で使うことができます。会議室の広さや景観も自由に変えられ、会議の目的に合わせた空間をつくることで会議の質を向上させることができます。すべての作業がVR内で完結できるツールです」

ここで島﨑氏は「従業員は在宅勤務であることが多く、コロナ以降に入社した人とは仲が深まりづらい。そうした前提での有効なVR施策はあるか」という参加者からの質問に回答した。

「学会の研究データによれば、アバターはそれを使う個人の性格に及ぼす影響が非常に大きいことがわかっています。例えば、実際は引っ込み思案な人でもアクティブなアバターを使うと性格も外交的になるといった効果が実証されています。例えば、新規入社者のアバターを工夫することで、組織に早期に馴染んでもらうことが可能です」

二つ目のソリューションは、自習も集合研修も圧倒的なリアリティで定着率を向上させられるCADネットワークサービスの「まなVRクラウド」だ。

「用途は各種トレーニングで、誰がどこを見ているかをリアルタイムに把握することができます。講師の端末から配信のコントロールが可能で、VR HMDへの再生指示や理解が浅い部分は繰り返し説明することもできます。参加者同士のコミュニケーションの活性化、一体感の醸成にもつながります」

三つ目は、自由な視点で見学が可能で、新しい体験を通じて印象に残る企業紹介ができるフォージビジョンの「歩ける全天球」だ。

「用途は企業説明会や施設見学会です。360度動画でありながらユーザーの見たい視点での体験が可能。実写のため、ありのままの環境を体験することができます」

講演写真

四つ目は、参加者の場所・時間・デバイスに捉われない体験を提供するNTTデータNJKの「STYLY.biz XR見学ツアー」だ。

「用途は工場見学や人事説明会などです。360度カメラを使ってリアルな感覚を実現しつつ、現場の業務を止めずに見学などができます。ロビーでの説明、現場のツアー、終了度の意見交換などシーンを自在に切り替えることも可能です」

五つ目は、4Kの高解像度空間を手軽に作成できる野原ホールディングスの「Matterport」だ。

「用途は企業説明会、オンライン体験入社など。360度カメラで撮影するというとハードルが高いと思われますが、手軽な撮影が可能なカメラにより安価でリアルなVR空間の制作ができます。インタラクティブな効果の開発も可能で、実際の物理空間よりも効果的な訴求ができます。撮影データはURLで提供され、自社のウェブページやSNSサイトに掲載できます」

六つ目は、企業のブランディングや会社風土などを伝えることができるメタバーズの「CYZY SPACE」だ。

「用途は企業説明会、社内イベントです。現実には不可能なアクションを通じて 、製品の魅力を徹底訴求できます。体験を通じて深い印象を残すことが可能です」

七つ目は、ブラウザベースで3000人の参加が可能なハシラスの「めちゃバース」だ。

「用途は企業説明会や全社キックオフです。3000人もの表示が可能です。ブラウザからも参加できる手軽さがあり、隣に誰かを感じながらイベントの盛況感を共有することができます」

講演写真

これらのソリューションを見てわかるように、VRを活用し工夫することでさまざまな体験やサービスを提供することができる。

「VRでは、企業文化・行動規範をベースとしたスキル・判断基準を伝えることができます。そして、対面にもっとも近いコミュニケーション手法により、情報交換の活性化と組織の一体感の醸成が可能です。VRでは受け入れ現場の負担を最小化しつつ、よりリアルな職場体験が提供でき、採用でマッチングにも貢献します」

最後に島﨑氏は、三つのVR実現方法におけるメリットとデメリットについて解説した。没入感が低いのは「スマホVR」だ。非常に低価格でスマホで手軽に実現できるが、デメリットにはVR空間での移動が体験できないこと、インタラクティブ性はなく受動的であることが挙げられる。

没入感が中クラスなのは「スタンドアロン」だ。HMDのみで手軽に実現できるが、デメリットはVR空間での移動が体験できないものが多いこと、画像の処理能力に限界があることだ。最後は非常に高い没入感が得られる「PCVR」だ。文字が読めるレベルの高解像度でのVRコンテンツの体験が可能になる。

「HPではPCVRを推奨しています。ただし、HMD以外にVR Readyスペックのデバイスが必要です。HPはPCVRに必要なデバイスとヘッドマウントディスプレイの両方を提供・サポートができる唯一のベンダーですので、不具合が起きたときもワンストップでサポートできる安心感をご提供できます。ぜひ皆さんも、VRを活用しコミュニケーション・コラボレーションを活性化し、自社でこそ得られる仕事のやりがい発見を通じてロイヤリティ向上を実現してください」

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