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IT企業からDX企業への転換・ジョブ型雇用導入ー富士通社に学ぶ人財育成・活用戦略ー

  • 末松 佳子氏(富士通株式会社 Employee Success本部 組織開発部 マネージャー)
  • 飯田 智紀氏(株式会社ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部 部長 (Udemy事業責任者))
特別講演 [T-6]2021.06.21 掲載
株式会社ベネッセコーポレーション講演写真

多くの企業がDX推進に取り組もうとしているが、それを支える人材の育成が大きく遅れている。従来からの人事施策や研修制度では、想定通りの成果が導けないため、対応に苦慮しているというのが実態だ。このような課題はどうすれば解決できるのか。富士通株式会社で組織開発をリードする末松佳子氏と株式会社ベネッセコーポレーションでオンライン学習ツールUdemyの事業責任者である飯田智紀氏が、富士通での人財育成・活用戦略を紹介しながら、ラーニングカルチャー醸成へのポイントやDX人財育成の未来像について語りあった。

プロフィール
末松 佳子氏( 富士通株式会社 Employee Success本部 組織開発部 マネージャー)
末松 佳子 プロフィール写真

(すえまつ よしこ)2006年富士通株式会社に入社し、金融部門にて人事業務全般を担当。国際人事にて現在のグローバル人事制度企画・導入に携わった後、タレントマネジメントを担当。日本・海外の混成組織にてグローバル経験を積む。2019年より人材開発に異動し、会社からの一律な学び提供からの転換、社員の自律な学び促進を担当。


飯田 智紀氏( 株式会社ベネッセコーポレーション 大学・社会人事業開発部 部長 (Udemy事業責任者))
飯田 智紀 プロフィール写真

(いいだ とものり)ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)とソフトバンクグループ株式会社で経営企画・グループ会社管理、事業再生・国内外投資業務などに従事。2015年9月よりベネッセホールディングスに参画。現在はベネッセコーポレーションでUdemyを中心にリカレント教育事業などの新規事業開発を推進中。


社会人教育を取り囲む環境が大きく変化

ベネッセグループの中核企業として、通信教育をはじめとする教育、育児、生活、語学・グローバル人材教育、シニア・介護の領域で事業を展開するベネッセコーポレーション。2015年より米国Udemy社と日本において共同展開しているのが、Udemyというサービスだ。

Udemyは、世界中の「教えたい人」と「学びたい人」をつなぎ、学び続ける大人を応援する、世界最大級の学習プラットフォーム。2010年に米国でスタートし、現在は世界で7万人の講師が4000万人以上の学習者を支援している。講座内容も、ビジネスの基礎からクラウド化・データ分析・AI活用など、DX時代に必要なスキルまで幅広く網羅している。近年は、コロナ禍により、Udemyの利用が急増しているという。

講演では、まずベネッセコーポレーションの飯田氏が、社会人教育を取り囲む環境変化について説明した。

「新型コロナウイルスの感染拡大が広がるなか、自律型人材の育成の必要性がますます高まってきています。コロナ禍による環境変化として、三点挙げられます。学びに向かうマインドセットの変化、求められる人財要件の変化、そして学習方法の変化です。これらが同時多発的に起きています」

コロナ禍により全世界でリモートワークが拡大し、デジタル化が一気に加速。それによって8500万の仕事が失われる一方で、9700万の新たな仕事が生まれると言われている。また、働く人の半分は2025年までにリスキルが必要になってきているという。リスキルで培う力として注目されているのが、DXを推進していくためのスキルセットだ。

「DX人財の育成は多くの企業で課題とされていますが、社内での育成が難しい。その理由は、理系人財と文系人財の両方で大きな要求変化が起きているからです」

講演写真

また、イノベ―ティブなマインドセットに必要な学習手法もコロナ禍のなかで変わってきている。事実、日本では2020年には対前年比で120万人ものオンライン学習者が増えている。

「このように学びに向かうマインドセット、人財要件、学習手法の領域において大きな変化が起きています。まさに、オンラインを活用して陳腐化しないスキルを常にアップデートし、学び続ける時代になったといえます」

ベネッセコーポレーションでは、2019年6月からUdemy for Businessというサービスも展開している。5500本ものコンテンツを定額・受け放題で学べるというものだ。

「このサービスの特徴は三つあります。一つ目は、最先端の講座が多数ラインアップされていること。二つ目は、いつでも、どこでも気軽に学習できること。スマホやタブレットでも受講が可能なので、自分のペースで学びを深めていけます。三つ目は、学習管理や利用促進の機能。APIを使えば、タレントマネジメントシステムとも連携できます」

現在、Udemy for Businessは日本で300社以上の企業に導入されているが、導入の最大の要因は、DX人材の育成だという。

DX企業への変革を目指し、新たな人事施策を展開する富士通

続いて富士通の末松氏が、同社における人財マネジメントの取り組みについて説明した。富士通のメイン事業は、テクノロジーソリューション。単体で3万6000人、グループ全員で国内8万人、グローバルで13万人を擁する巨大企業だ。

「富士通では、IT企業からDX企業への変革を目指しています。そのなかで昨年度、『イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく』というパーパスが定められました。その実現に向けて全事業活動を集中させており、自らの変革としてDX推進に向けた人事変革のための施策に取り組んでいます」

富士通が掲げる“ありたい姿”は、社内外の多才な人材が俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出していくことだ。それは、人材の流動化を高めていくと宣言することでもあると末松氏はいう。

「“ありたい姿”を実現するために、三つの大きな柱があります。全ての社員が魅力的な仕事に挑戦すること、多様・多才な人材がグローバルに協働すること、全ての社員が常に学び成長し続けることの三つです」

実際、これを踏まえてジョブ型人材マネジメントに向けた人事制度、人事施策が四つのカテゴリーのもとで展開されている。その中で、末松氏がクローズアップしたのが「自律的な学び・成長の支援」だ。

具体的な支援施策としては、人材施策指針が昨年4月に改訂されている。大きな変更点は二点。一つは会社主導の教育ではなく、社員の自律的な学び・成長を支援すること。もう一つは、マスへの一律対応から個にフォーカスし、階層別研修を廃止したことだ。

「DXを目指すと、社員が学ばなくてはいけないことが非常に多くなってきます。求められるスキルも複雑化、高度化していく。社員が常に学び、成長していくためには何がベストであるかを考え、『モチベーションの源泉は社員になければいけない』と位置づけました。また、いわゆる最大公約数的な内容をそろえるのではなく、一人ひとりに本当に響くものを提供していこうと考えました」

会社のパーパスと個人のキャリア目標が重なり合う面積が大きくなると、お互いがハッピーになる。会社が提供するのは、ジョブを選択する機会と学びの機会。それらを生かし、社員自身の意志と行動によってチャンスをつかみ取ってほしいという願いが、施策には込められている。

講演写真

次に育成体系が取り上げられたが、必修に位置づけられたのは、情報管理やリスクマネジメントなどのベーススキルと、DX・変革スキル、共有スキルとしてのキャリアオーナーシッププログラムだ。

「当社には、入社から定年まで富士通で過ごすという人が多く、自分からキャリアをつかみ取ると言う文化がありませんでした。キャリア自律への転換に伴い、定期的にキャリアについて振り返るという機会を設けました」

具体的な育成施策も紹介されたが、最初に取り上げられたのは、いつでもどこでも学べるプラットフォームの提供。それがFujitsu Learning EXperience(FLX)と言う名のポータルサイトだ。

「立ち上げにあたり留意したポイントが三つあります。一つ目は、見た目です。特にビジュアルにはこだわりました。二つ目は、中身でがっかりさせないこと。そのため、いつでもどこでも学べるよう、スマホアプリで学習できるUdemyサービスを活用しています。三つ目は、やる気を刺激する仕掛けを入れたこと。社外コンテンツだけでなく、社内版TEDのようなコンテンツの発信、学習時間の表示、昇格やポスティングなどの人事施策とも連動させています」

最後に末松氏は、今後に向けての方針を語った。課題が二つあるという。一つは、自律的な学びのメリットやきっかけ、シーンの明確化、もう一つは、従業員の声を踏まえた、学びのきっかけとなるコンテンツの提供だという。

「データ分析の結果から、効率良く働き成果を出している人ほど、自律的に学んでいることがわかりました。そうしたデータも活用しながら、社員に学ぶ意義・メリットを訴求していきたいと考えています」

社員を起点に考え、スピード重視でまずはやってみる

最後に、学習意義の社内浸透に向けて飯田氏と末松氏によるQ&Aセッションが行われた。

飯田:学びと成長が会社のパーパスとリンクしているところは本当に強みだと思いました。この変革を進める上で大切にされていることは何ですか。

末松:社員目線です。会社としてではなく、常に社員にとってどのような良さがあるのかを案内しています。

飯田:階層別研修をなくすといいながらも選択と必修があるというのは、少し葛藤があったのではないでしょうか。

末松:本当は必修をゼロにしたかったのですが、情報管理や会社の戦略に伴うところは必修に入れました。キャリア自律といっても、社員に任せきりにするのではなく、会社が責任を持ってキャリアを考えるための機会を設けるようにしています。本人の価値観や周囲の生活環境、家族環境など、いろいろなことを含めて、「自分はこのキャリアだ」と考えられるようにしています。

飯田:視聴者の方から、たくさんの質問をいただいています。どうやって社員のワクワク感を醸成されているのでしょうか。

末松:講座へのアクセス状況について自動的にデータが取れるようになっているので、その結果を見て推測したり、アンケートから生の声を収集したりしています。

飯田:まさに、研修の設計方法自体もDXを活用されているわけですね。フルモデルチェンジからまだ1年ぐらいですが、どのような成果がありましたか。

講演写真

末松:学びに対する前向きさが、企業文化として醸成されてきたように感じます。もちろん、全員が一気にそうなっているわけではありません。キャリアに対する意識が低い人の学びの量がまだ上がっていないので、そういう層に対して、どう学びの楽しさを訴求していくかが今後の課題です。また、社外にどんどん発信していく、認められるということも、企業文化として定着させたいですね。

最後に飯田氏が今回の講演をこう締めくくった。

「働き方や雇用は、多角化・複線化・流動化が加速度的に進んでいます。そういったなかで、リスキルと言う考え方が今まで以上に重要になってきました。富士通の事例で特徴的だと思ったのは、社員を起点にあらゆる変革を同時に実行されていることです。スピード重視でまずはやってみるという事例から、たくさんの刺激をいただきました。学び続ける大人を応援し続け、最終学歴ではなく最新学習歴が評価される、そんな社会を皆さまと一緒に作っていきたいと思います。本日はありがとうございました」

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