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健康経営の偏差値、知ってますか? 300社の分析を基にした健康KPIの立て方

  • 中野 雄介氏(株式会社iCARE 取締役CRO 健康経営アドバイザー)
特別講演 [L-6]2021.06.21 掲載
株式会社iCARE講演写真

近年、健康経営優良法人への注目度が増し、経済産業省がそのトップ企業を認定する「ホワイト500(大規模法人)」「ブライト500(中小規模法人)」獲得に向けた競争も激化している。健康管理システムを提供するiCAREは、健康経営を効率的に進める手法として偏差値の活用を勧めている。どうすれば適正で無理のない健康経営が可能になるのか。具体的な手法について語った。

プロフィール
中野 雄介氏( 株式会社iCARE 取締役CRO 健康経営アドバイザー)
中野 雄介 プロフィール写真

(なかの ゆうすけ)大手人材会社に新卒で入社後、2015年株式会社iCAREに第一号社員としてジョイン。500社以上の衛生委員会立ち上げやストレスチェック、メンタル不調者対応などの健康管理に携わる。2019年1月よりSales&Marketing部長、2019年9月より執行役員を歴任し、2020年7月より現職。


健康経営優良法人への注目が増し、トップ500獲得に向けた競争が激化

iCAREは「働くひとと組織の健康をつくる」をビジョンに、健康管理システムを提供する健康推進企業だ。同社はビジョン実現に向け、二つのケアを推進している。一つ目は、働くひとが自ら健康を創るセルフケアだ。人は日常生活で「自分は健康である」と思い込むクセがあり、健康を損なって初めて自らの心身をケアする行動を起こす。二つ目は、働く組織が従業員の健康を創るカンパニーケアだ。働く人がセルフケアという行動に起こすには、企業のオフィス環境や管理体制を整備する必要がある。日本では従業員の健康に配慮する労務管理(健康管理)が法律で手厚く定められている。

これら二つのケアの実現を図る健康管理システムが、同社が提供する「Carely」(ケアリィ)だ。マンパワー不足に悩む中小企業から、グローバルに事業展開する大規模企業にも選ばれており、国内導入数トップクラスを誇る。いまだに紙管理が主流の健康情報をペーパレス化・一元管理することで、人事労務の業務効率化を実現している。

同社がCarelyを開発し世に広める理由は「カンパニーケアの常識を変えること」にある。カンパニーケアについては多くの企業で誤解がある。それは例えば、「健康管理(従業員の健康に配慮する法定業務)は複雑である」「健康に関することは専門家(医師や保健師)に任せればいい」「企業が健康を守っても、働くひとの健康は改善しない」といったものだ。iCAREでは、カンパニーケアに対する間違った常識を、本来あるべき常識に変えることを目指している。

近年はコロナ禍やSDGsの機運もあり、企業価値や生産性、従業員満足度を向上させる手段として健康経営が注目を集めている。講演では健康経営に関する最新状況と自社の健康課題が特定できる偏差値を用いた取り組みについて、中野氏が解説した。まず中野氏が語ったのは、健康経営優良法人認定に関する最新動向だ。

「健康経営優良法人認定制度とは、経済産業省が行う、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。認定企業は年々増加しており、大規模部門は2020年から320社増加して1801社、中小規模部門は3211社増加して7934社となっています」

健康経営における大規模法人のトップ500である「ホワイト500認定企業」の傾向をみると、全体の約3割の140法人が2021年に新規で認定されている。これは健康経営の上位層も競争度合の激しさが増している証拠といえる。業種別にみると、認定社数が増加した業種は情報通信業、通信業、不動産業。減少した業種は金融業、保険業、製造業。また、製造業では化学・医薬品分野で増加、非鉄金属・機械分野で減少している。

「健康経営に関する調査で、健康経営優良法人など認定取得に向けた取り組みについて聞いたところ、『社内スタッフのみで実施』が38.8%ともっとも多く、現状は社内スタッフで行う傾向が強くなっています。しかし、実は健康経営がうまくいっていない企業ほど、社内スタッフで行っている傾向があります」

中野氏は、ホワイト500、ブライト500(中小規模法人部門)を取りたい企業が増えており、競争率は上がっているが、認定されるには、評価内容を絞り込み、意識的に他社と差別化する必要があると語る。

「評価配点のウェイトですが、『経営理念・方針』=3、『組織体制』=2の部分は、まずどこも差が付きません。この発信はどの企業も行っています。では差がつくのはどこかというと、『制度・施策実行』=2、『評価・改善』=3の部分です。実は『制度・施策実行』『評価・改善』に関し、2020年と2021年で認定要件が変更になった項目があります。2020年に『健康保持・増進を目的とした導入施策への効果検証を実施』、2021年には『健康増進・過重労働防止に向けた具体的目標(計画)の設定』が共に必須に変更されました。

ここから読み取れるのは、経済産業省は企業に対して、具体的な目標を立てて施策を実行し、効果検証をきちんと行うことを望んでいる、ということです。要するに、健康経営のPDCAをきちんと回すことを求めています。つまり、上位に入るにはこのPDCAをしっかり行う必要があります」

講演写真

自社の健康課題を特定する「偏差値」を活かした取り組み

評価の高い健康経営を実現するためのポイントが三つある。「どんな健康課題があるのか?」「どんな目標を立てるのか」「どうやって効果検証をするのか」を明確にすることだ。中野氏は、自社の健康課題が特定できる「偏差値」の活用が重要と語る。Carelyでは独自に定めた19項目で偏差値を算出し、健康要因(先行指標)を可視化し、生産性・ワークエンゲージメント(遅行指標)との関連性をみている。偏差値は、他社を含めた全体における自社の位置づけを把握できるので便利な指標といえる。ここで中野氏は参考になる二つの事例を紹介した。

事例1:生産性の高い、ある企業におけるストレスチェック対応

この企業はストレスに関する「不安感」「疲労感」「仕事の負荷」などは偏差値が低くかったが、サポートに関する「職場の人的資源」「プライベートの状態」の偏差値は高かった。

講演写真

「生産性の高い企業では、『不安感』『疲労感』『仕事の負荷』などは偏差値が低くなりますが、それをフォローする『職場の人的資源』『プライベートの状態』の偏差値が高いと、上司や同僚、家族のサポートがしっかりしていることを示します。生産性の高い企業では同様の傾向がみられます」

詳細な調査項目について偏差値順に並べると、その企業の弱い部分が見えてくる。この企業では「腰痛」「首筋肩こり」の偏差値が低かった。

「これは、いわゆるオフィスワークをされている方々の職業病であるVDT対策が必要と考え、福利厚生の対策を行いました」

生産性の高い企業では、何らかの結果の悪い項目が必ず存在している。そして、その結果の悪い項目も共通している。

「生産性の高い企業は、上司や同僚、家族への相談や頼りやすさ、仕事や家庭の満足度が優れている点が共通しています。この傾向を皆さまも参考にしていただければと思います」

事例2:とある課題を抱えた企業のストレスチェック結果の詳細分析

次に中野氏は、事例企業における部署単位ごとの高ストレス率とその原因について、個別に評価点を出したものを見せた。評価基準点3.0を上回る項目は良好な状態であり、下回る項目は改善が必要な項目となる。ここでは特に良い状態にある(3.6点以上)項目を青字、改善が必要である(2.4点以下)項目を赤字で表示した。

「健康経営優良法人の認定では、健康診断の結果が悪い人が多かったり、高ストレスの人が多かったりすることで、認定が取れないということはありません。自社の従業員の健康状態がたとえ悪くても、それを改善する取り組みをしていれば問題ありません」

この企業ではストレスチェックの結果から、睡眠の問題に着目。ストレスチェック質問項目57問の中で、睡眠に関する回答と生産性に関する回答を抜き出し、部署・性別・年齢・役職でクロス分析を行った。すると、睡眠に関してよく眠れないという人は女性に多く、また、よく眠れないことが生産性にも影響していることがわかった。

講演写真

「そこで女性を中心とした睡眠改善セミナーを実施し、テレワーク環境における生産性改善をサポートしました。その結果、施策の実施後に改善したことが確認されています。睡眠状態の悪い企業・部署は、生産性に関するストレスチェック項目結果も、同じく悪い点で共通しています。また、コロナ禍において、男性よりも女性のほうが生産性に関わるストレスを明確に抱えている点が共通します」

ここで中野氏は、先ほどの評価の高い健康経営に取り組むための三つのポイントについて、詳細を解説した。

「『どんな健康課題があるのか?』は、他社とのデータ比較=偏差値で確認してください。これで自社のどこが悪いのかがわかります。次に『どんな目標を立てるのか』は、健康経営は、ただ健康状態を改善すればいいわけではありません。健康経営は健康課題を解決することで、生産性向上につなげることを目的としています。生産性向上につながる健康課題の改善を行いましょう。『どうやって効果検証をするのか』は、効果検証は実に煩雑な作業です。そこで健康診断、ストレスチェックなど、普段の法令遵守の中で得られる健康データについて収集し、それを分析してください。それを行うだけでも相当なことがわかります」

業務の「効率化・一元化・可視化」を実現する健康管理システムCarely

続いて中野氏は、同社が提供する健康管理システムCarelyについて、特徴を解説した。Carelyは、人事担当者が抱える煩雑で複雑な健康管理を効率化するクラウドサービスであり、評価の高い健康経営が安価に実践できる。特徴は以下の三つ。一つ目は「健康管理の法令遵守を効率化できる」ことだ。

「企業の人事担当者に話をうかがうと、従業員の健康診断の予約にもっとも時間を取られています。Carelyで従業員はクリニックの予約を取ることができ、人事担当者が健康診断の予約に割く時間が大幅に削減できます。受診予約~予約日再調整~受信進捗管理~労基署報告書作成がスムーズに行え、その結果は人事でも見ることができます。ここで効率化できる健康管理の法令遵守としては、『健康診断予約、受診進捗管理』『ストレスチェック実施』『残業時間管理』『産業医の面談記録』『産業医との情報連携』などがあります」

二つ目の特徴は「バラバラな健康データを一元化できる」ことだ。

「システムではバラバラに管理していた紙とエクセルを、すべて一つのシステムに収めることができます。登録できる健康データには『健康診断結果』『ストレスチェック結果』『長時間労働結果』『産業医面談結果』『紹介状や診断書』『衛生委員会、職場巡視記録』などがあります」

三つめの特徴は「自社の健康課題を可視化できる」ことだ。

「Carelyによって、どこに異常があるかを見つけられるようになります。問題点が可視化されるため、人事担当者は安心して業務に当たれます」

Carelyは、対個人では「健康診断の有所見者」「ストレスチェックの高ストレス者」「長時間労働による過重労働者」などの労務リスクのある従業員を自動的に抽出する。また、対部署では、異常のある部署をランキング形式で表示できる。「健康診断検査項目別ランキング」「ストレスチェック項目別スコア」「平均産業時間数トップ10」など、どの部署でリスクが高いのか、どんな打ち手をうつべきかがわかる。

また、Carelyにデータさえ入れておけば、どんな可視化も可能になる。経年変化・偏差値分析もわかりやすく可視化される。

「ストレスチェック結果の経年変化では、経年変化や前回結果との比較で、その間に行った施策の結果計測に活用できます。健康診断結果の偏差値分析では、フィジカル面の健康課題が見つかり、運動や食事などの施策立案に活用できます」

では、Carelyの導入で具体的にどのような効果が生まれるのか。中野氏は実際のデータを紹介した。業務効率化では、紙やエクセルで作業した場合と比較すると、従業員300人・4拠点での企業例で、年間530時間の作業が135時間に削減され、75%削減できた。コスト削減では、健康管理サービスを一元化した効果としては86%削減ができた。

最後に中野氏は、ユーザーの声を紹介した。JFE商事は国内20ヵ所、海外35ヵ所の拠点をもつ企業であり、2021年度までに4年連続「健康経営優良法人」を取得している。

「Carelyを導入後、健康情報では健康診断の結果を始めとして、全世界にいる駐在員の健康情報のデータを一元管理できるようになりました。産業医との情報連携では、産業医が非常勤でも、システム上ですぐに健康情報を確認でき、健康課題に即時に対応できるようなったということです。このようにCarelyは健康経営に関わる多くの作業を支援することができます。皆さんもこの機会に、健康経営への施策について考えてみてください」

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