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自律的なチームの目標管理とマネジメントとは? 強いチームをつくる「OKR」

  • 奥田 和広氏(株式会社タバネル 代表取締役)
特別講演 [D-6]2021.06.21 掲載
株式会社タバネル講演写真

リモートワークの急速な普及など急激な変化が起こる環境下では、これまで以上に自律的な組織が求められる。チームのパフォーマンスを向上させ、自律的なメンバーの育成を進めるには、チームマネジメントやMBOに代表される従来型の目標管理を見直さなければならない。そこで鍵を握るのが、OKRだ。本講演では、これからの時代に必要とされるマネジメントとOKRについて紹介。奥田氏がこれまでコンサルティングで携わってきた導入事例も踏まえながら、現場で実践できる有効な活用法を解説した。

プロフィール
奥田 和広氏( 株式会社タバネル 代表取締役)
奥田 和広 プロフィール写真

(おくだ かずひろ)一橋大学商学部卒業。ファッション・化粧品メーカー、コンサルティング企業などで勤務。取締役として最大 170 人の組織マネジメントに携わる。OKR、組織マネジメントのコンサルティングを行う株式会社タバネルを設立。 著書に『本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR』がある。


正解のない時代では、自律人材が学習・活躍する組織作りが急務

組織力を高め、企業を成長に導くための解決策として注目を集めているOKR。「Objectives and Key Results」の頭文字を取った略称で、「目的と重要な結果指標」と訳される、目標設定・目標管理の手法だ。

株式会社タバネルでは、OKRの導入から運用までを支援するコンサルティングサービスを提供。OKR導入を検討している企業や組織作りに悩みを抱える企業などを対象に組織の状況や課題に応じたコンサルティングプランを提案している。企業にあった導入や運用を支援し、導入後もオンライン・オフラインで継続的にサポートするなど、組織を“4倍速”で成長させるコンサルティングを行っている。

タバネルではOKR導入、運用のコンサルティングを専業で行っており、現場への導入教育を手厚いことが大きな特徴。OKRの第一人者である奥田氏が、リモートワークの進む企業を含めて、多くの企業へのコンサルティングで培ってきたOKRの知見を伝えることができるのも強みのひとつだ。

まず奥田氏は、リモートワークという環境変化で起こったチームマネジメントの課題について説明。コロナ禍のような「正解のない時代」では、自律人材が学習して活躍する組織作りが急務だと強調する。

対面コミュニケーションができないリモートワーク下では、孤独感や上司や部下に対する不信感を感じてしまい協働意欲が落ちてしまったり、共通の目的に向かっているという進行感や方向性を見失ったりしてしまいがちだ。

「これからの人づくりや組織づくりで重要なことは、リモートワークで離れていたとしても『同じチームの仲間だ!』という意欲を保つことです。また、コロナ禍のような正解がなく予測が難しい時代では、上司から部下への命令によるオペレーションから、自律・双方向の学習志向が重視されます。

ただ、基準が曖昧でそれぞれの部署の従業員が各々で勝手に判断してしまっているようでは意味がありません。組織の目的や目標が明確で、向いているベクトルが同じであることが自律的な判断には不可欠です。そういった状態を作るためには、心理的安全性を高めることも必須。つまり、それぞれが自分の意見や考え、ミスや失敗も会話できるコミュニケーションの基盤を築くことが重要です」

しかし、従来の目標管理のままでは問題点が多いと奥田氏はいう。例えば、「チームや他のメンバーの目標を知らないため、自分の目標達成が一番で協力できない」「上司から押し付けられた目標が唯一の正解で、失敗することは悪、挑戦は損になり挑戦できない」「目的の共有がなく、フィードバックの頻度も少ないため目標が形骸化してしまう」など。このような状況では自律とチーム学習が進まないため、目標管理の改革が急務だ。

Googleでも採用、日本企業でも普及が進む目標管理手法のOKRとは

続いて、奥田氏はOKRについて解説。OKRとは、Intelで開発され、GoogleやFacebook、Twitterなど米国企業で採用されていることで注目を集めている目標管理手法だ。日本でも、メルカリや freee 、Sansan などの IT ・ベンチャー企業を皮切りに採用が進み、近年では花王、静岡銀行など大手企業での導入も広がっている。

奥田氏は、OKRを導入することによる効果を六つ挙げた。1点目は「フォーカス」で、仕事の優先度が明確になり、重要なものに集中できるようになること。2点目は「透明性・整合性」で、組織内での信頼や協力連携が促進すること。3点目は「スピードアップ」で、OKRは3ヵ月に一度更新という高頻度の運用をするため、組織スピードの加速が図れること。4点目は「自律性・意欲向上」で、組織への参画や自分ごと化が向上すること。5点目は「挑戦と学習」で、チャレンジに対してフィードバックが文化になっていくこと。最後の6点目は、奥田氏がコンサルティングをしていて最も感じる効果だという「マネージャー支援」だ。人によってマネジメントの方法にバラツキがあり、悩みを抱えています。OKRはマネジメントの仕組みとして優れておりマネージャーにとって大きな武器になっている。

講演写真

続いて、OKRの構成要素について解説。そもそも、OKRとは一つの「目的・目標(O:Objectives)」に対して、2~5個の「重要な結果指標(KR:Key Results)」という二つの要素で構成されているものだ。

「組織が掲げる経営理念やビジョンは長期的な将来の目的を指すことに対して、Objectivesはそこに向かうための3ヵ月後に達成したい『目的・目標』です。一方、『重要な結果指標』と訳されるKey Resultsは、どのようにその目的を達成するのか、目的に近づいていることをどう把握するのかを示す定量的な指標です」

また奥田氏は、Objectivesのキーワードは「挑戦的」「魅力的」「一貫性」の3点だ。現状の延長線上ではなく、挑戦的な高い目的を目指し(ムーンショット)、メンバーが達成したいと思える魅力やメッセージ性を持つ。さらには組織全体、部門、チーム、個人それぞれの目的に一貫性を持たせることがポイントだ。

一方のKey Resultsでは、目的の達成方法や達成度合いを明確にするために四つのポイントがある。1点目は『目的への結びつき』で、目的を達成するための具体的指針となっていること。2点目は『計測可能』で、実績が計測でき、成功か失敗かの基準とすることができること。3点目は『重要なものに集中』で、不要なものを省き、本当に重要なことのみに集中すること。4点目は『簡単ではないが達成可能』で、達成率が60~70%になるような簡単には達成できない水準に設定することだ。しかし、あくまで『100%を目指して頑張って挑戦した結果、なんとか60~70%達成できた』という状態を指すのであって、最初から60~70%を目指すのでは意味がないと奥田氏はいう。

OKRの高頻度の運用こそがチームを強くするための秘訣

OKRは高い目標を設定し、挑戦することがキーワードとなる。目標を設定するゾーンは、苦労することなく楽々達成できるコンフォートゾーン、手を伸ばしてようやく届くようなストレッチゾーン、目標を見ただけでも恐れおののくパニックゾーンの三つに分けられる。一般的には、ストレッチゾーンに目的・目標を設定すると最も成長できると言われるが、奥田氏は疑問を呈する。

「部下と上司でストレッチゾーンか否かの認識が異なることも多く、先が読めない時代では特に、パニックゾーンかストレッチゾーンかを正確に判断することが難しい。高い理想を抱えて、まずはチャレンジすることにこと意味があるのです。そのためには、モニタリング、フィードバックをより高頻度で進捗管理することが必要です。困難なときや失敗したときのサポート体制を周知して、失敗をしてしまったときでも必要以上の罰や不利益を被らないようにすることで、挑戦を促すことができます」

そこで、奥田氏はOKRの高頻度の運用がチームを強くするための秘訣だと強調する。高頻度でチームに全員を巻き込み、参画する場を設けることで、全員が同じベクトルに向かうことで自律と協力が促される。その場として挙げられるのが、上司と部下で仕事の進捗や今後の不安、要望を確認する1on1がある。さらに、チーム全員で週の始めなどに仕事の予定や互いのサポート体制を確認し合うチェックインや、週の最後に今週できたことや良かったことを互いに承認・賞賛し合うウィンセッションが効果的だ。

「お互いに認め合っているからこそ厳しいフィードバックが行えますし、達成率が低くても『ここまで頑張れたんだからさらに高い壁を目指そう』と、一致団結もできるわけです。単に『達成率が低いな、どうするつもりだ』と叱責や責任追及を行うだけでは、高い目的・目標を立てることができなくなってしまいます。高い目的・目標に向かう中で、壁にぶつかっていてもお互いに認め合える状態を作ることが重要です。また、メンバーの多様な意見を出し合える心理的安全性を確保しながら、個人の責任追及ではなくチームで問題解決に注力する姿勢が成長を生みます」

講演写真

OKRは達成度と人事評価・査定を切り離すことが求められる

続いて、OKRを実際に導入し運用を進めるにあたっての事例をQ&A形式で紹介。よく寄せられる質問のひとつである「これまでの人事評価とどう違うのか」に対して、奥田氏は「OKRは人事評価制度ではない」と回答。OKRとよく対比されるのが、現在日本企業の多くで人事評価や査定ツールとして使われているMBOだ。MBOを使用する主目的は人事評価や査定であることに対し、OKRの主目的は組織の成長と高い目的の達成にある。MBOは、高い目標を立てて達成率が低いと損をしてしまうため、どうしても現実的で保守的な目標を立てがちだ。一方のOKRは、挑戦的で野心的な水準を立てることで、組織や個人の成長を促すことができる。また、高速で運用したり全社で公開したりする点もMBOと異なる点だ。

「OKRが人事評価制度と関連するところはありますが、OKRの達成率そのものを人事評価には使わないほうがいいでしょう。なぜなら、挑戦を阻害してしまうからです」

続いて「OKR導入企業の人事評価は」という質問に対しては、実際にOKRを導入している複数社の人事評価制度を例として挙げながら「各社で異なる」と回答。

「各社それぞれに経営戦略や組織人事戦略があり、求める人物像があります。そのため、会社ごとにOKRで目指すところも人事評価で目指すところも変わってくるはずです。『OKRを導入したらこんな人事評価がいい』という明確なものはありません」

講演の終盤では、視聴者からの質問に奥田氏が回答した。寄せられた質問の一つは「組織の目的からトップダウンでKGI、KPIを設定しているが、OKRとの違いは」というものだ。

「組織の目的をトップがKGIやKPIに落とし込んでいくというやり方もスムーズにいくとは思いますが、どうしても上から押し付けられた目標になってしまいがちです。私がおすすめしているのは、トップが全社のOKRを示しつつ、課レベルのOKRは課長とメンバーで一緒に考え、課のOKRと全社のOKRを擦り合わせる時間をつくることです。さらに、課のOKRと個人のOKRを一緒に作ることで、課のOKRを自分ごと化することもできます。

個人OKRまで作る会社もあれば、個人OKRは作らず課レベルまでという会社もありますが、いずれにしろ、自分が属している最小レベルのチームのOKRを一緒に立てていきましょう。KGI・KPIは達成率100%を目指すのが基本ですが、OKRは挑戦的な水準を目指すという点も大きな違いです」

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